男子高校生の休み時間

こへへい

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曖昧な表現

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和樹「国語のテストで『作者が主張したいことを答えよ』みたいなのあるけどさ、直接言えよって話じゃない?」

隆太「え、直接言えよ、とは?」

和樹「例えばさ、ある物語で努力した主人公が、目指していた目標を達成した物語があるとするじゃん? 『努力を重ねればいつか目標に辿り着ける』って言いたいんだろうけど、直接言えよってこと」

隆太「あーそゆことね。ストーリーテリングって言うんだよそれ」

和樹「すとーりーてりんぐ?」

隆太「何かしらを主張したい時に物語形式で伝えることで、より分かりやすくなり、より説得力が増す表現方法だ」

和樹「確かにサクセスストーリーとかで努力してきた人の話を見れば、頑張らないとなぁって思えるよ。けれど、物語での表現が曖昧な時があるんだよね。悔しそうな時は『唇を噛む』とか、面白いなって思った時は『口元が緩む』とか。こういうのが面倒なんだよね、口元緩んでも腹立つ時あるって」

隆太「そっちね。それは、なんだろうな、『うれしい』って感情にも振れ幅があるだろう? ガチャでピックアップされているキャラが出たら『うれしい』。そして宝くじの一等が当たっても『うれしい』。でもそれらを『うれしい』の一言で済ませると、その感情の振れ幅が表現されないんだよ」

和樹「なら『とってもうれしい』って書けばいいのに。それなら『彼はどんな感情?』って問題に対して『うれしい』って答えられるでしょ?」

隆太「その問題を正解したとして果たして『うれしい』って思えるような高校生はいるのだろうか。さておき、それでも『とっても』という言葉にも振れ幅が必要になってくる。つっても、感情を言葉にすることの限界って気がするけどな。うれしい、とってもうれしい、めっちゃうれしい、やべぇほどうれしい。程度はあれど、真に感情が籠ってる感を抱けないから別表現しているんだろうな」

和樹「何それ変なの。そんな変な言い方しないとコミュニケーションができないなら、僕は一生chatGPTと会話するよ。色々倫理観壊れてることも答えてくれるし」

隆太「一生パソコンと対話し続ける将来の何が魅力的なんだよ。……あ、男子だからこそ伝わる良い例えを思いついた。多分これを言えば、和樹も日本語の曖昧が表現を好きになれると思う」

和樹「へえ、じゃあ言ってみてよ」

隆太「お前が言っているのは『見えそうで見えないパンツの絵を見るくらいなら、最初から全裸女子を見る方がマシ』って言っているようなものだ。見えそうで見えないパンツ、お前はそれに魅力がないというのか?」

和樹「……っは! いや、見えそうで見えないのは、正直見えるよりも良い。そういうこと、なんだね」

隆太「そういうことだ」
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