男子高校生の休み時間

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比喩表現について

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隆太「比喩って、何のためにあると思う?」

和樹「そりゃ分かりやすく説明するためでしょ」

隆太「確かにそうだ。だがよ、比喩表現をすることで、逆に理解しにくくなる時ってないか? この前生物の勝村先生に授業内容について質問したんだ。蟻って何で臭いを嗅いで周りを把握しているのかってな」

和樹「それで、どう返ってきたの?」

隆太「『目が見えるよりも、臭いを嗅げるほうが良いんだよ。根暗な陰キャラはギラギラした場所は嫌だけど、暗いところは落ち着くだろ? そういうことだ』って」

和樹「勝村先生、無駄に若者の流行に造詣ある振りするの絶対言ってあげないと後々取り返しのつかない問題になりそうだね……それはともかく、分からない? その例え」

隆太「分からなかったけど、後から調べて、土の中では光がないから臭いで判断するほうが便利って、ツイッターで書いてあった」

和樹「情報ソースの信憑性ないなぁ、でも比喩表現って難しいと思うよ。相手が知らないもので比喩表現したら、分かりやすく表現しようとしても逆に分からなくなるもんね。だから勝村先生はわざわざ僕ら目線で例えてくれたわけだし。内容はともかくとして」

隆太「あー、そういうことか。比喩って相手を選ぶってことか」

和樹「そうとも言えるね。まぁ言語も言うなれば相手を選ぶわけだけど。もはや暗号みたいなもんだね。山に対する川みたいな」

隆太「勝村の比喩は正直分かる。暗いところでは目よりも鼻を頼りにした方が便利だろう。そういうことを言いたかったんだろうが、本当にその理解が正しいのかが疑問になったんだよな。だからネットサーフィンしたんだ」

和樹「発言者本人の正しい理解と、発言者の正しい比喩、そして聞き手の比喩の正しい解釈と、聞き手の正しい理解。この四つが揃わないと理解されないんだろうね。言葉って難しいや。これらの一つでもずれると理解がずれて誤解を招いちゃうんだから」

隆太「いやまだあるぞ? 聞き手の理解の確認のために、聞き手の比喩返しと、それの正しい解釈が必要になるな。ここまで行って初めて、真に人は意思を疎通することができる」

和樹「うっわ、確かに。なら今までの人生で意思疏通が正しくできたのって、ほんのわずかなんじゃないの? でも、比喩ないと素材そのままの味を理解できるとは思えないし」

隆太「ま、いいんじゃねぇの? 最終的に行動で示して納得すれば、それは意思疏通が正しかったってことなんだろうぜ。オムライスを頼んだとしても、正しく伝わったかはオムライスが来るまで分からないんだから」

和樹「いや、今はタブレットでのオーダーが結構主流になってきてるから、近い未来に伝わらなくなるよその比喩表現」
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