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5話 【ユリウスside】苦戦したが、何とか討伐したぞ……
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冒険者パーティ”黒き炎”。パーティメンバーのロイを追放してから、初めての護衛任務の最中である。
彼らはさっそく苦戦してしまっている。以前までの彼らであれば、楽に討伐できていたはずのホブゴブリンが相手だ。リーダーのユリウスが作戦を練り直す。
「……よし、作戦変更だ! リサ! 強めの攻撃魔法を準備してくれ!」
「わかりましたわ」
ユリウスが攻撃魔法使いのリサに指示を出し、リサが詠唱を開始する。
「ガレン! ルフレ! リサの詠唱時間を稼ぐぞ!」
「承知したのである!」
「了解です」
ユリウス、ガレン、ルフレ。3人でホブゴブリンを牽制し、時間を稼いでいく。もちろん、シオンも弓で援護している。メナスは後方で支援魔法の維持に徹している。
普段のユリウスたちであれば、何の問題もなく時間を稼ぐことができたであろう。そもそも、剣だけで討伐できた可能性も高い。
しかし、今日は違った。時間稼ぎすらおぼつかず、徐々に劣勢になっていく。
「はあ、はあ……。リサ! まだ詠唱は終わらないのか!?」
ユリウスが焦った口調でそう言う。徐々に消耗が蓄積してきている。
「も、もう少しですわ!」
いつもの彼女であれば、とっくに詠唱は終わっている頃だ。しかし今日は、まだ詠唱が終わらない。結局、普段の2倍以上の時間をかけて詠唱が終わった。
「凍てつく波動よ、敵を包め! エターナルブリザード!」
ヒュウッ。ホブゴブリンを中心に、辺りを冷気が包む。ホブゴブリンはまだ生きてはいるが、体温の低下により大ダメージを負っている。
「これでとどめだ! はあぁ! 火炎斬!」
ユリウスが剣に炎をまとわせ、ホブゴブリンに攻撃する。これが致命傷となり、ホブゴブリンは絶命した。
「やれやれ。一苦労したのである!」
「その通りですね。厄介な個体を引いてしまったものです」
ガレンとルフレがそう言う。
「ちっ。俺たちはBランクだぞ。ホブゴブリンごときに苦戦したなんて噂が流れたら、俺たちの信用問題につながる。お前たち、たるみ過ぎだぜ」
「本当にそうですわ。みなさんには気を引き締めてもらわないと」
「リサ。お前も他人事じゃないだろう! 詠唱にもたつきやがって」
「うっ……。あ、あれは、調子が悪かっただけでしてよ。前衛のお三方こそ、不甲斐なかったではありませんか」
リサがそう言う。その言葉を皮切りに、パーティ内での責任の押し付け合いが始まった。その口論を少し冷めた目で見ている者が2人いた。シオンとメナスだ。
「(……やっぱり、ロイ先輩がいないとこうなるんだ。これからどうなるんだろう)」
シオンが小声でそう言う。普段から後方で援護に徹している彼女は、パーティメンバーの動きを熟知している。今回のユリウスたちの動きは、普段と比べて明らかに悪かった。本人たちにその自覚はないようだが。これまでどれだけロイに助けられてきたのか、ユリウスたちが気づくのはいつになるのだろうか。
「(やれやれ。新進気鋭のBランクパーティと聞いていたのだが。たかがホブゴブリンに苦戦するとはな。個体差がどうとか言い訳をしているようだが。俺から見れば、今回のは標準的なホブゴブリンだった。これはハズレパーティを引いてしまったかもしれん)」
メナスが小声でそう言う。彼は、縁のあるジョネス商会長の依頼で同行している。よければこの依頼の後も正式にパーティへの加入を考えてみてくれと言われていたが。たった1回の今回の戦闘で、その気はほとんど消え失せていた。
そんなことを考えているシオンとメナスの心中を知らず、ユリウスたち4人は口論を続けている。ようやく、話がひと段落した。
「ちっ。もういい! 次からはしっかり頼むぞ!」
ユリウスが吐き捨てるようにそう言う。ガレン、ルフレ、リサの3人はまだ言いたいことがありそうな顔をしているが、ここは言葉を飲み込んだ。彼らの護衛のもと、ジョネス商会の隊商は目的地へと進んでいく。空には暗雲が立ち込めていた。
彼らはさっそく苦戦してしまっている。以前までの彼らであれば、楽に討伐できていたはずのホブゴブリンが相手だ。リーダーのユリウスが作戦を練り直す。
「……よし、作戦変更だ! リサ! 強めの攻撃魔法を準備してくれ!」
「わかりましたわ」
ユリウスが攻撃魔法使いのリサに指示を出し、リサが詠唱を開始する。
「ガレン! ルフレ! リサの詠唱時間を稼ぐぞ!」
「承知したのである!」
「了解です」
ユリウス、ガレン、ルフレ。3人でホブゴブリンを牽制し、時間を稼いでいく。もちろん、シオンも弓で援護している。メナスは後方で支援魔法の維持に徹している。
普段のユリウスたちであれば、何の問題もなく時間を稼ぐことができたであろう。そもそも、剣だけで討伐できた可能性も高い。
しかし、今日は違った。時間稼ぎすらおぼつかず、徐々に劣勢になっていく。
「はあ、はあ……。リサ! まだ詠唱は終わらないのか!?」
ユリウスが焦った口調でそう言う。徐々に消耗が蓄積してきている。
「も、もう少しですわ!」
いつもの彼女であれば、とっくに詠唱は終わっている頃だ。しかし今日は、まだ詠唱が終わらない。結局、普段の2倍以上の時間をかけて詠唱が終わった。
「凍てつく波動よ、敵を包め! エターナルブリザード!」
ヒュウッ。ホブゴブリンを中心に、辺りを冷気が包む。ホブゴブリンはまだ生きてはいるが、体温の低下により大ダメージを負っている。
「これでとどめだ! はあぁ! 火炎斬!」
ユリウスが剣に炎をまとわせ、ホブゴブリンに攻撃する。これが致命傷となり、ホブゴブリンは絶命した。
「やれやれ。一苦労したのである!」
「その通りですね。厄介な個体を引いてしまったものです」
ガレンとルフレがそう言う。
「ちっ。俺たちはBランクだぞ。ホブゴブリンごときに苦戦したなんて噂が流れたら、俺たちの信用問題につながる。お前たち、たるみ過ぎだぜ」
「本当にそうですわ。みなさんには気を引き締めてもらわないと」
「リサ。お前も他人事じゃないだろう! 詠唱にもたつきやがって」
「うっ……。あ、あれは、調子が悪かっただけでしてよ。前衛のお三方こそ、不甲斐なかったではありませんか」
リサがそう言う。その言葉を皮切りに、パーティ内での責任の押し付け合いが始まった。その口論を少し冷めた目で見ている者が2人いた。シオンとメナスだ。
「(……やっぱり、ロイ先輩がいないとこうなるんだ。これからどうなるんだろう)」
シオンが小声でそう言う。普段から後方で援護に徹している彼女は、パーティメンバーの動きを熟知している。今回のユリウスたちの動きは、普段と比べて明らかに悪かった。本人たちにその自覚はないようだが。これまでどれだけロイに助けられてきたのか、ユリウスたちが気づくのはいつになるのだろうか。
「(やれやれ。新進気鋭のBランクパーティと聞いていたのだが。たかがホブゴブリンに苦戦するとはな。個体差がどうとか言い訳をしているようだが。俺から見れば、今回のは標準的なホブゴブリンだった。これはハズレパーティを引いてしまったかもしれん)」
メナスが小声でそう言う。彼は、縁のあるジョネス商会長の依頼で同行している。よければこの依頼の後も正式にパーティへの加入を考えてみてくれと言われていたが。たった1回の今回の戦闘で、その気はほとんど消え失せていた。
そんなことを考えているシオンとメナスの心中を知らず、ユリウスたち4人は口論を続けている。ようやく、話がひと段落した。
「ちっ。もういい! 次からはしっかり頼むぞ!」
ユリウスが吐き捨てるようにそう言う。ガレン、ルフレ、リサの3人はまだ言いたいことがありそうな顔をしているが、ここは言葉を飲み込んだ。彼らの護衛のもと、ジョネス商会の隊商は目的地へと進んでいく。空には暗雲が立ち込めていた。
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