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第5章
610話 セリアの勝利
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「――ねぇ、セリアちゃん。確かに、今は幸せかもしれないわ。それは認めてあげる」
「はいですにゃ」
「でもね? 数年後にも同じことが言えるかしら? 結婚もしていない9番目の愛人なんて、向こうからすればいつでも切れる存在よ。セリアちゃんは受付嬢を辞めちゃっているわけだし、そうなったら居場所なんてないんじゃない?」
「それは大丈夫ですにゃ」
自信満々で応えるセリア。
そんな姿を見て、タニアは呆れたようにため息を吐いた。
「はぁ……。それなら、捨てられたときに思い知ればいいわ。自分には何も残っていないってことをね……!」
タニアが吐き捨てるように言う。
実際のところ、タニアの指摘に一定の合理性はある。
若い内は金持ちの愛人として生計を立てることが可能でも、歳を取ってくると難しくなってくるだろう。
女性の美貌というのは、いつかは必ず衰えてしまうのだ。
その時に果たしてどうするのか?
それが重要だった。
結婚して子どもが生まれていれば、法的にも道義的にも一定の安心感が生じるのだが……。
子なしで9番目の愛人ともなれば、簡単に切られてしまう存在であることは確かだ。
「心配ないですにゃ。私はコウタさんを信じていますが、もし捨てられても何とかなりますにゃ」
「再就職は、そう甘くないわよ? 一度辞めているんだから、冒険者ギルド受付嬢の出世コースからは外れているわ。一般採用枠なんかには、若い子が優先的に採用されることが多いしね」
「でも、私には冒険者としての道もありますにゃ」
「ああ、そう言えばそうだったわね。キャリア採用組は知識や心構えがあると見なされて、Cランク相当の扱いを受けることが多いわ。でも、実際の戦闘能力はせいぜいDランク上位くらい。いざというときにソロでやって行くのは厳し――」
「これを見るにゃ」
セリアはそう言って自分のギルドカードを見せつけた。
Cランクの表記と共に、しっかりと【悠久の風】の紋章が描かれている。
それだけじゃない。
華々しいほどの討伐実績の情報が載っていたのだ。
それを見て、タニアは目を見開いた。
「なっ!? 中上位の魔物の名前がびっしり……。セリアちゃんが、本当にこれだけの魔物を!?」
驚愕するタニアに対して、セリアはにっこりと微笑んだ。
「えっへんにゃ! コウタさんは教えるのも上手なんですにゃ! もう昔の私とは比べ物にならないほど強くなっているのですにゃ! きっとBランク昇格も近いですにゃ!!」
セリアはとても嬉しそうだ。
実際のところ、彼女の認識は正しい。
別室でギルマスと面会しているコウタには、すでにセリアのBランク昇格が伝えられている。
「な、なんてこと……! ぐぬぅ……」
マウント取りに失敗したタニアは悔しげに唸るしかない。
旧友との現況報告会は、セリアの勝利に終わったのだった。
「はいですにゃ」
「でもね? 数年後にも同じことが言えるかしら? 結婚もしていない9番目の愛人なんて、向こうからすればいつでも切れる存在よ。セリアちゃんは受付嬢を辞めちゃっているわけだし、そうなったら居場所なんてないんじゃない?」
「それは大丈夫ですにゃ」
自信満々で応えるセリア。
そんな姿を見て、タニアは呆れたようにため息を吐いた。
「はぁ……。それなら、捨てられたときに思い知ればいいわ。自分には何も残っていないってことをね……!」
タニアが吐き捨てるように言う。
実際のところ、タニアの指摘に一定の合理性はある。
若い内は金持ちの愛人として生計を立てることが可能でも、歳を取ってくると難しくなってくるだろう。
女性の美貌というのは、いつかは必ず衰えてしまうのだ。
その時に果たしてどうするのか?
それが重要だった。
結婚して子どもが生まれていれば、法的にも道義的にも一定の安心感が生じるのだが……。
子なしで9番目の愛人ともなれば、簡単に切られてしまう存在であることは確かだ。
「心配ないですにゃ。私はコウタさんを信じていますが、もし捨てられても何とかなりますにゃ」
「再就職は、そう甘くないわよ? 一度辞めているんだから、冒険者ギルド受付嬢の出世コースからは外れているわ。一般採用枠なんかには、若い子が優先的に採用されることが多いしね」
「でも、私には冒険者としての道もありますにゃ」
「ああ、そう言えばそうだったわね。キャリア採用組は知識や心構えがあると見なされて、Cランク相当の扱いを受けることが多いわ。でも、実際の戦闘能力はせいぜいDランク上位くらい。いざというときにソロでやって行くのは厳し――」
「これを見るにゃ」
セリアはそう言って自分のギルドカードを見せつけた。
Cランクの表記と共に、しっかりと【悠久の風】の紋章が描かれている。
それだけじゃない。
華々しいほどの討伐実績の情報が載っていたのだ。
それを見て、タニアは目を見開いた。
「なっ!? 中上位の魔物の名前がびっしり……。セリアちゃんが、本当にこれだけの魔物を!?」
驚愕するタニアに対して、セリアはにっこりと微笑んだ。
「えっへんにゃ! コウタさんは教えるのも上手なんですにゃ! もう昔の私とは比べ物にならないほど強くなっているのですにゃ! きっとBランク昇格も近いですにゃ!!」
セリアはとても嬉しそうだ。
実際のところ、彼女の認識は正しい。
別室でギルマスと面会しているコウタには、すでにセリアのBランク昇格が伝えられている。
「な、なんてこと……! ぐぬぅ……」
マウント取りに失敗したタニアは悔しげに唸るしかない。
旧友との現況報告会は、セリアの勝利に終わったのだった。
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