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第5章

601話 エリート受付嬢タニア

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 時は少しだけ遡る。
 コウタがギルマスと面談を始めた頃、シルヴィたちは――。

「うーん……暇ですね」

「そうだねぇ」

「……ん。ティータもすることがない……」

「挨拶をしようにも、ここに貴族の方はおられませんわ」

「退屈にゃぁ~」

 ――退屈そうにギルド内の椅子に座っていた。
 特にやることもないのである。
 ギルド内は酒場が併設されているものの、まだ夕方前ということもあってか営業していなかった。

 そんな彼女たちのもとに、受付嬢がやって来る。
 コウタをギルマスの部屋に案内し終えた女性である。
 彼女はシルヴィたちに会釈すると、口を開いた。

「皆様、お待たせしております。よろしければ、お茶でもいかがでしょうか?」

「ボクはもらうのです」

「へへっ。せっかくだし、あたいもいただくとするかね」

「俺も頼むぜ」

「……えっと。あたしも飲みます」

 ミナ、リン、グレイス、エメラダ。
 それに他の面々も全員がお茶を所望した。
 受付嬢はニコリと微笑み頷くと、一度カウンターの奥に戻っていった。
 それからすぐに戻ってくると、人数分のカップを載せたお盆を持って現れる。

「へぇ。美味いじゃねぇか!」

「ワタシのラビット亭でも出せる味ですぅ」

「良いお茶っ葉を使っているようですわね」

「香りも良いですね」

「あちっ。はわわ……ぼく、ヤケドしちゃったよぉ……」

 ミルキー、ルン、ネリス、チセ、ヒナタも遠慮なくお茶を受け取って飲んでいく。
 ギルド内に併設されているテーブルで、一同は思い思いにくつろいでいた。
 お茶の味に舌鼓を打ちつつ、雑談に花を咲かせていく。
 そして――

「私にもくださいですにゃ」

「はい、どうぞ。――って、あれ? よく見たら、セリアちゃんじゃない!」

「へ? そう言うあなたは……同期のタニアちゃんにゃ!」

 セリアと受付嬢――タニアは面識があったようだ。
 互いに見つめ合い、驚きの表情を見せている。

「えーっと……久しぶりですにゃ?」

「ええ、久しぶりね。……もう仕事上がりだから、ちょっとお話しましょうか」

 タニアがそう言って、セリアの向かいに座る。
 他の『悠久の風』の面々は少し離れたところに座っており、同じテーブルを囲んでいるのはタニアとセリアだけだ。

「ここで働いていたんですにゃぁ」

「うん、そうなの。地方ギルドから栄転したのよ」

 タニアはそう言って胸を張る。
 2人はかつて、冒険者ギルドの受付嬢として採用された。
 それも、キャリア採用だ。
 最初に一律で戦闘や事務を含む諸々の高度な研修を受け、その後に地方配属されるのである。

 セリアが受付嬢ながらも『悠久の風』に加入した時点で高い戦闘能力を持っていたのは、そのあたりの事情も関係している。
 実はエリートなのだ。
 しかしそのエリート組の中でも、地方配属の後に王都ギルドに配属になるのはごく僅かだった。
 冒険者ギルド受付嬢という括りで見た場合、タニアこそまさにエリート中のエリートなのである。
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