525 / 1,273
第5章
525話 ナディアとのお話
しおりを挟む
俺たち『悠久の風』と女騎士ナディアは、冒険者ギルドの応接室で向かい合っている。
15人対1人。
雰囲気的には完全にこちらが優勢。
実戦力も当然こちらが上だし、身分の面でも男爵位を持つ俺がいるこちら側が上だ。
「さて……、俺は怒っている。理由は分かるな? お前がシルヴィを貶めたからだ」
「わ、我はそんなつもりは……」
「うるさい!! お前がそんなつもりじゃなくても、俺にとってはそうだったんだ!!」
「ひっ!?」
俺が怒鳴ると、ナディアはビクッとして肩を震わせる。
「いいか! 俺にとって、シルヴィは天使みたいな女の子だ! そのシルヴィを辱めるような奴は、例えどんな理由があったとしても絶対に許さない! シルヴィを泣かせる奴も、シルヴィを虐げる奴も、シルヴィに酷いことをする奴らも、俺の敵だ!!」
「ご主人様……」
シルヴィが感動に目を潤ませている。
「わ、我はウルゴ陛下の命を受け、『毒蛇団』の掃討作戦の進捗を確認しに来ただけだ……。貴殿と対立するつもりはない。どうか、矛を収めてはくれないだろうか?」
ナディアが恐る恐るという感じで口を開く。
強気な堅物騎士といった雰囲気の彼女だが、さすがに1対15ではアウェー過ぎるか。
ずいぶんと大人しい態度になったものだ。
少しでも反抗的な態度を見せてくれば、15人で罵詈雑言の嵐を浴びせて心を折り、全裸土下座で謝罪させるつもりだったが……。
良くも悪くも、アテが外れてしまった。
まぁいい。
それならそれで、理知的に話を進めていくだけだ。
「ふん。先ほども言ったが、条件次第だな」
「貴殿が求めるのは何だ? 金、地位、名誉……。此度の任務達成を受け、元よりウルゴ陛下から貴殿には恩賞が与えられるだろう。我の裁量権の範囲内で、出来得る限りそれらを上乗せするよう取り計らうことはできるが……」
「そうだなぁ。その中では、名誉が一番欲しいところだ」
金は大切だ。
これから西部地域を開拓してエウロス男爵領として発展させていく上で、元手は多い方がいい。
だが、高ランク冒険者である俺たちなら他にいくらでも稼ぐ機会はある。
今回の件で元々貰える予定であった金やエルカ迷宮で得た金銀財宝もあるし、女騎士ナディアの裁量権内で上乗せできる程度の金を得たところで大した価値はない。
地位はどうか?
現状の男爵位でも十分だが、さらにその上の子爵や伯爵になることができれば大きい。
社会的身分が上がることにより、一般民衆から俺への憧れや忠誠心なども増すだろう。
そうなれば、そこらの一般民衆たちに対して気軽に『パーティメンバー設定』のスキルを発動することすら可能になる日が来るかもしれない。
とはいえ、『毒蛇団』の掃討に成功した程度でさらなる陞爵は厳しいだろう。
たとえナディアの後押しがあったとしても、誤差の範囲内だ。
そもそも現状の男爵位だって、将来への期待値込みでやや例外的な叙爵だったしな。
というわけで、欲しいのは名誉となる。
「わ、分かった。王都に帰還したら、貴殿の活躍ぶりを必ず陛下に報告しよう」
ナディアはそう答えたのだった。
15人対1人。
雰囲気的には完全にこちらが優勢。
実戦力も当然こちらが上だし、身分の面でも男爵位を持つ俺がいるこちら側が上だ。
「さて……、俺は怒っている。理由は分かるな? お前がシルヴィを貶めたからだ」
「わ、我はそんなつもりは……」
「うるさい!! お前がそんなつもりじゃなくても、俺にとってはそうだったんだ!!」
「ひっ!?」
俺が怒鳴ると、ナディアはビクッとして肩を震わせる。
「いいか! 俺にとって、シルヴィは天使みたいな女の子だ! そのシルヴィを辱めるような奴は、例えどんな理由があったとしても絶対に許さない! シルヴィを泣かせる奴も、シルヴィを虐げる奴も、シルヴィに酷いことをする奴らも、俺の敵だ!!」
「ご主人様……」
シルヴィが感動に目を潤ませている。
「わ、我はウルゴ陛下の命を受け、『毒蛇団』の掃討作戦の進捗を確認しに来ただけだ……。貴殿と対立するつもりはない。どうか、矛を収めてはくれないだろうか?」
ナディアが恐る恐るという感じで口を開く。
強気な堅物騎士といった雰囲気の彼女だが、さすがに1対15ではアウェー過ぎるか。
ずいぶんと大人しい態度になったものだ。
少しでも反抗的な態度を見せてくれば、15人で罵詈雑言の嵐を浴びせて心を折り、全裸土下座で謝罪させるつもりだったが……。
良くも悪くも、アテが外れてしまった。
まぁいい。
それならそれで、理知的に話を進めていくだけだ。
「ふん。先ほども言ったが、条件次第だな」
「貴殿が求めるのは何だ? 金、地位、名誉……。此度の任務達成を受け、元よりウルゴ陛下から貴殿には恩賞が与えられるだろう。我の裁量権の範囲内で、出来得る限りそれらを上乗せするよう取り計らうことはできるが……」
「そうだなぁ。その中では、名誉が一番欲しいところだ」
金は大切だ。
これから西部地域を開拓してエウロス男爵領として発展させていく上で、元手は多い方がいい。
だが、高ランク冒険者である俺たちなら他にいくらでも稼ぐ機会はある。
今回の件で元々貰える予定であった金やエルカ迷宮で得た金銀財宝もあるし、女騎士ナディアの裁量権内で上乗せできる程度の金を得たところで大した価値はない。
地位はどうか?
現状の男爵位でも十分だが、さらにその上の子爵や伯爵になることができれば大きい。
社会的身分が上がることにより、一般民衆から俺への憧れや忠誠心なども増すだろう。
そうなれば、そこらの一般民衆たちに対して気軽に『パーティメンバー設定』のスキルを発動することすら可能になる日が来るかもしれない。
とはいえ、『毒蛇団』の掃討に成功した程度でさらなる陞爵は厳しいだろう。
たとえナディアの後押しがあったとしても、誤差の範囲内だ。
そもそも現状の男爵位だって、将来への期待値込みでやや例外的な叙爵だったしな。
というわけで、欲しいのは名誉となる。
「わ、分かった。王都に帰還したら、貴殿の活躍ぶりを必ず陛下に報告しよう」
ナディアはそう答えたのだった。
16
お気に入りに追加
1,089
あなたにおすすめの小説
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる