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第5章

524話 条件次第

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 俺は女騎士ナディアを無礼討ちしようとしたが、シルヴィたちに止められてしまった。
 そして、ナディアが俺に向かって深々と頭を下げてきた。

「……すまなかった。我の認識不足で、貴殿と貴殿の仲間を侮辱するような真似をしてしまった。許してほしい」

「……ふむ」

「どうか、我を許してほしい。我にできることであれば、なんでもする」

「…………」

「頼む。このとおりだ」

 彼女は真摯な態度で謝罪の言葉を口にしている。
 さっきまでとは打って変わって、随分と殊勝になったものだ。
 まぁ、最初からこういう態度で臨んでくれていれば、俺だって怒りに任せて彼女を切り捨てたりはしなかっただろう。
 とはいえ、こちらにも譲れない一線というものはある。
 無条件で許せば舐められる。
 ここは、しっかりと釘を打っておくべき場面かもしれない。

「条件次第では、今回の件を水に流してやってもいいぞ?」

「ほ、本当か!? 我の裁量権内ならば、どのような条件でも飲もう! 金か? 地位か? 名誉か? 望むものがあれば、なんなりと言ってほしい!」

「ふむ」

 ナディアが身を乗り出してくる。
 彼女の顔には、安堵と希望の色が浮かんでいた。
 どうやら、相当に追い詰められていたらしい。

「……ギルマス」

「なんだ?」

「応接室を貸してくれ」

「あ、ああ……。分かった」

 ギルマスは二つ返事で俺の頼みを了承した。
 俺、ギルマス、ナディアの力関係はかなり微妙だ。
 俺はAランク冒険者であり、男爵位を持つ。
 ギルマスはこのエルカの町の冒険者ギルドで最も偉く、現役時にはそれなりに高い冒険者ランクを持っていたらしい。
 そしてナディアはウルゴ陛下より『毒蛇団』の件について途中経過を査察する命を受けた王都の女騎士であり、実力もそれなりにある。

 普段の冒険者活動を行う際には、ギルマスは俺の上司のような存在となる。
 また、『毒蛇団』の件に関しては、ナディアが俺の査察官であり進捗を確認してくる上司のような存在だと言ってもいいだろう。
 しかし総合的に見れば、やはりこの中で唯一の貴族であり現役の高ランク冒険者である俺の発言力が最も強い。

「よし、では俺たち『悠久の風』とナディアで話をする。ギルマスは通常の業務に戻ってくれ」

「……あまり問題を起こしてくれるなよ?」

「もちろんだとも。暴力は振るわないと誓おう」

 俺たちは応接室に入る。
 ソファに腰掛けて、ナディアと向かい合う。
 密室で、俺を含めて『悠久の風』が15人。
 対するナディアは1人。
 これは追い詰めがいがありそうだ。
 シルヴィを侮辱した報いを受けさせてやるぜ。
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