327 / 1,255
第5章
327話 水魔法使いの試運転
しおりを挟む
みんなで水魔法の取得に挑戦した翌日。
「いくぞっ! 【ウォータボール】!」
「【ウォータボール】!」
「……えっと。【ウォータボール】です!」
俺、ユヅキ、エメラダが初級の水魔法を発動する。
俺たち3人の手から、水の塊がそれぞれ飛び出した。
水魔法使いのジョブは何人かが取得に成功しているが、今ジョブに設定しているのはこの3人だ。
「ギャオオオォッ!」
レッドゴブリンが悲鳴を上げる。
3つの魔法の直撃を受けて、絶命していた。
「ふむ。これで討伐完了か」
俺は呟く。
この程度の魔物ならば、今の俺たちにとっては敵ではない。
だが、問題もある。
「うーん……。やっぱり威力が低いよね……」
ユヅキが言うように、威力不足を感じる場面が多かった。
ウォーターボールは、言ってみればただの水の塊だからな。
質量はそれなりにあるので悪くはない。
だが、各属性の初級魔法である【ウインドカッター】【アイスショット】【クリエイトブロック】【スパーク】【ファイアーボール】あたりと比べ、明らかに殺傷能力が低い。
「まあ仕方ないか。これはこれで、当初の予定通り飲料水として利用できるからな」
「……えっと。そうですね。それに、良質な水があればあたしの調合も捗りますし」
エメラダが俺の言葉に同意する。
ウォータボールで生み出された水は、きれいな水だ。
そのまま飲めるし、ポーションの材料にも適している。
『氷魔法使い』が扱う各種の氷魔法でも、氷は生み出せる。
それを溶かせばもちろん水は確保できるのだが、飲料水やポーションの材料にするには少しだけ不適切だ。
不純物が混じっているからである。
ジョブレベルが高いシルヴィであれば、その気になれば不純物の少ない氷を作ることはできる。
だが余計なMPを消耗するので、できるだけそれは避けたい。
飲料水を生成するなら、やはり水魔法使いが最適だ。
「攻撃力が低いとは言っても、火属性の魔物と戦うときには便利だよな」
「そうだね。レッドゴブリンぐらいなら十分に倒せる」
レッドゴブリンとは、ゴブリンの亜種だ。
その名の通り、全身が赤い。
体温が高く、火魔法に対する耐性がある。
その一方、水魔法は弱点としているため、初級のウォータボールでも大きなダメージを受けるのだ。
「アクティブスキルを使えば使うほど、ジョブが早く育つ。今後も無理のない範囲で使っていこう」
ストレージに確保している飲料水は、昨日も言った通り残りが少なくなってきている。
今後は、水魔法使いのスキルで生み出した水を利用していくことになるだろう。
清潔な水を十分量用意するためにも、水魔法使いのジョブレベルはそれなりに上げておきたい。
だが、強敵相手に低威力のウォータボールで無理して戦って負傷すれば、元も子もない。
そのあたりのバランスは大切だ。
「了解だよ」
「……えっと。承知しました、主様」
ユヅキとエメラダが答える。
その後も俺たちは迷宮を歩いていく。
「それにしても、ずいぶんと長い迷宮ですわね」
「……アルフヘイムにある迷宮も、ここまでではなかったと思う……」
ローズとティータが言う。
2人が言うように、この迷宮はかなり深い。
MSCの基準で言っても、中級クラスの長さだ。
「だが、もう少しだと思うぞ。だんだん魔物が弱くなっていっているからな」
強制転移のトラップで深層に転移させられた俺たちは、迷宮を逆走する形で地上へ向かっている。
進めば進むほど、魔物が弱いものに変わっていくのだ。
「よし! 気合いを入れ直して進もうぜ、コウタ親分」
「ここが踏ん張りところなのです」
グレイスとミナがそう意気込む。
「へへっ。それによ、そろそろ誰かとすれ違ったりもするんじゃねえか?」
「ああ。リンの言う通りだな。今は、おそらく7階層から10階層あたりだろう。これぐらいなら、エルカの町の冒険者で俺たち以外に潜れる奴がいてもおかしくない」
俺はそう答える。
「もうひと頑張り致しましょう! ご主人様の安全はわたしが守ります!」
「そうだな。俺も頑張ってみんなを守るよ。あと少しだ」
シルヴィの言葉に、俺は大きくうなずくのだった。
「いくぞっ! 【ウォータボール】!」
「【ウォータボール】!」
「……えっと。【ウォータボール】です!」
俺、ユヅキ、エメラダが初級の水魔法を発動する。
俺たち3人の手から、水の塊がそれぞれ飛び出した。
水魔法使いのジョブは何人かが取得に成功しているが、今ジョブに設定しているのはこの3人だ。
「ギャオオオォッ!」
レッドゴブリンが悲鳴を上げる。
3つの魔法の直撃を受けて、絶命していた。
「ふむ。これで討伐完了か」
俺は呟く。
この程度の魔物ならば、今の俺たちにとっては敵ではない。
だが、問題もある。
「うーん……。やっぱり威力が低いよね……」
ユヅキが言うように、威力不足を感じる場面が多かった。
ウォーターボールは、言ってみればただの水の塊だからな。
質量はそれなりにあるので悪くはない。
だが、各属性の初級魔法である【ウインドカッター】【アイスショット】【クリエイトブロック】【スパーク】【ファイアーボール】あたりと比べ、明らかに殺傷能力が低い。
「まあ仕方ないか。これはこれで、当初の予定通り飲料水として利用できるからな」
「……えっと。そうですね。それに、良質な水があればあたしの調合も捗りますし」
エメラダが俺の言葉に同意する。
ウォータボールで生み出された水は、きれいな水だ。
そのまま飲めるし、ポーションの材料にも適している。
『氷魔法使い』が扱う各種の氷魔法でも、氷は生み出せる。
それを溶かせばもちろん水は確保できるのだが、飲料水やポーションの材料にするには少しだけ不適切だ。
不純物が混じっているからである。
ジョブレベルが高いシルヴィであれば、その気になれば不純物の少ない氷を作ることはできる。
だが余計なMPを消耗するので、できるだけそれは避けたい。
飲料水を生成するなら、やはり水魔法使いが最適だ。
「攻撃力が低いとは言っても、火属性の魔物と戦うときには便利だよな」
「そうだね。レッドゴブリンぐらいなら十分に倒せる」
レッドゴブリンとは、ゴブリンの亜種だ。
その名の通り、全身が赤い。
体温が高く、火魔法に対する耐性がある。
その一方、水魔法は弱点としているため、初級のウォータボールでも大きなダメージを受けるのだ。
「アクティブスキルを使えば使うほど、ジョブが早く育つ。今後も無理のない範囲で使っていこう」
ストレージに確保している飲料水は、昨日も言った通り残りが少なくなってきている。
今後は、水魔法使いのスキルで生み出した水を利用していくことになるだろう。
清潔な水を十分量用意するためにも、水魔法使いのジョブレベルはそれなりに上げておきたい。
だが、強敵相手に低威力のウォータボールで無理して戦って負傷すれば、元も子もない。
そのあたりのバランスは大切だ。
「了解だよ」
「……えっと。承知しました、主様」
ユヅキとエメラダが答える。
その後も俺たちは迷宮を歩いていく。
「それにしても、ずいぶんと長い迷宮ですわね」
「……アルフヘイムにある迷宮も、ここまでではなかったと思う……」
ローズとティータが言う。
2人が言うように、この迷宮はかなり深い。
MSCの基準で言っても、中級クラスの長さだ。
「だが、もう少しだと思うぞ。だんだん魔物が弱くなっていっているからな」
強制転移のトラップで深層に転移させられた俺たちは、迷宮を逆走する形で地上へ向かっている。
進めば進むほど、魔物が弱いものに変わっていくのだ。
「よし! 気合いを入れ直して進もうぜ、コウタ親分」
「ここが踏ん張りところなのです」
グレイスとミナがそう意気込む。
「へへっ。それによ、そろそろ誰かとすれ違ったりもするんじゃねえか?」
「ああ。リンの言う通りだな。今は、おそらく7階層から10階層あたりだろう。これぐらいなら、エルカの町の冒険者で俺たち以外に潜れる奴がいてもおかしくない」
俺はそう答える。
「もうひと頑張り致しましょう! ご主人様の安全はわたしが守ります!」
「そうだな。俺も頑張ってみんなを守るよ。あと少しだ」
シルヴィの言葉に、俺は大きくうなずくのだった。
17
お気に入りに追加
1,089
あなたにおすすめの小説
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる