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第5章
320話 犠牲者
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さらに1週間ほどが経過した。
「どりゃああぁっ! 【烈風一閃】!!」
「【ギガントボンバー】! なのです!!」
「【ソニックキック】だぜ!」
「グギャアアァッ!!!」
俺、ミナ、リンの攻撃により、中ボス級の魔物が断末魔の声を上げる。
そして、魔石を残して霧散した。
「ふう……。今回もなんとかなったな」
俺は額の汗を拭う。
「うん。コウタが先頭に立ってくれているおかげで、安心して戦えるよ」
「……えっと。あたしも同じ気持ちです。主様のご指示に従っていれば確実に倒せるという安心感があります」
ユヅキとエメラダがそう言った。
「そう言ってくれるとありがたいよ。さあ、先へ進もう。……むっ!?」
俺は視界の隅に、嫌なものを見つけた。
「どうしたんだ? コウタ親分」
「グレイス、あれを見てくれ」
「んっ?」
俺が指差す先には、物言わぬ骸骨が散乱していた。
骨の量からして、数人がここで死んだようだ。
「あっ……。これは、おそらく前の犠牲者でしょうか?」
「おそらくそうですわね。これほど厄介なトラップですもの。ここで脱落してしまっても不思議ではありませんわ」
シルヴィとローズが言う。
「……この人たちは、この迷宮のトラップには勝てなかったのか」
「残念だけど仕方ないのです。運がなかったと思って諦めるしかなさそうなのです」
ミナも同情するように呟いた。
俺たちやこの犠牲者たちが引っ掛かったトラップについて、冒険者ギルドでの注意喚起はなかった。
そもそも迷宮探索自体がリスクのある行為なので、わざわざ個別のトラップに対する注意などはしていないという事情もあるだろう。
しかし、さすがにこれほど危険で厄介なトラップなら、少しぐらいは周知されていてもおかしくない気もする。
「僕は以前からエルカの街を拠点に活動していたけど……。死者はともかく、パーティ丸ごとの行方不明者はここ最近出ていなかったはずだよ。少なくとも、数年以内は」
「なるほど……。設置頻度があまり高くないトラップだったか」
迷宮は意思を持つと言われている。
魔物がドロップする魔石や各部に設置された宝箱を餌にして人を誘き寄せ、その魔素を吸収するのだ。
あまりにも生還率が低い迷宮になってしまうと、討伐対象となりダンジョンコアを破壊される危険性が高まる。
そのため、今回のような致死級のトラップの設置頻度は低めにされているのだろう。
「……ギルドカードが落ちてたよ。せめて遺品だけでも回収してあげよう……」
ティータが骸骨の側に落ちていたカードを拾い上げる。
俺は散乱している遺品のうち、風化していないものをいくつか回収しストレージに入れた。
「僕たちも油断すればこうなるかもね……」
ユヅキが暗い表情でそう言った。
「ご主人様はご安心ください! わたしが命に替えてもお守りしますから!」
シルヴィがそう言って俺の手を握る。
その言葉は嬉しいが、女に命を落とさせて自分だけ生還するつもりはない。
「みんな、迷宮の攻略があとどれくらい掛かるか分からない。万全に進むため、またとあるジョブの習得に挑戦したいと思う。協力してくれるな?」
俺は全員の顔を見回しながら尋ねた。
「もちろんなのです。コウタくんがやるべきと思うことを指示してほしいのです」
「……えっと。あたしも賛成です。主様が何をしたいのか楽しみです」
「へへっ。あたいはコウタっちに付いていくぜ!」
「俺もだ。コウタ親分に命を預けているからな!」
ミナ、エメラダ、リン、グレイスがそう言ってくれた。
あのジョブの習得に挑戦してみることにするか。
「どりゃああぁっ! 【烈風一閃】!!」
「【ギガントボンバー】! なのです!!」
「【ソニックキック】だぜ!」
「グギャアアァッ!!!」
俺、ミナ、リンの攻撃により、中ボス級の魔物が断末魔の声を上げる。
そして、魔石を残して霧散した。
「ふう……。今回もなんとかなったな」
俺は額の汗を拭う。
「うん。コウタが先頭に立ってくれているおかげで、安心して戦えるよ」
「……えっと。あたしも同じ気持ちです。主様のご指示に従っていれば確実に倒せるという安心感があります」
ユヅキとエメラダがそう言った。
「そう言ってくれるとありがたいよ。さあ、先へ進もう。……むっ!?」
俺は視界の隅に、嫌なものを見つけた。
「どうしたんだ? コウタ親分」
「グレイス、あれを見てくれ」
「んっ?」
俺が指差す先には、物言わぬ骸骨が散乱していた。
骨の量からして、数人がここで死んだようだ。
「あっ……。これは、おそらく前の犠牲者でしょうか?」
「おそらくそうですわね。これほど厄介なトラップですもの。ここで脱落してしまっても不思議ではありませんわ」
シルヴィとローズが言う。
「……この人たちは、この迷宮のトラップには勝てなかったのか」
「残念だけど仕方ないのです。運がなかったと思って諦めるしかなさそうなのです」
ミナも同情するように呟いた。
俺たちやこの犠牲者たちが引っ掛かったトラップについて、冒険者ギルドでの注意喚起はなかった。
そもそも迷宮探索自体がリスクのある行為なので、わざわざ個別のトラップに対する注意などはしていないという事情もあるだろう。
しかし、さすがにこれほど危険で厄介なトラップなら、少しぐらいは周知されていてもおかしくない気もする。
「僕は以前からエルカの街を拠点に活動していたけど……。死者はともかく、パーティ丸ごとの行方不明者はここ最近出ていなかったはずだよ。少なくとも、数年以内は」
「なるほど……。設置頻度があまり高くないトラップだったか」
迷宮は意思を持つと言われている。
魔物がドロップする魔石や各部に設置された宝箱を餌にして人を誘き寄せ、その魔素を吸収するのだ。
あまりにも生還率が低い迷宮になってしまうと、討伐対象となりダンジョンコアを破壊される危険性が高まる。
そのため、今回のような致死級のトラップの設置頻度は低めにされているのだろう。
「……ギルドカードが落ちてたよ。せめて遺品だけでも回収してあげよう……」
ティータが骸骨の側に落ちていたカードを拾い上げる。
俺は散乱している遺品のうち、風化していないものをいくつか回収しストレージに入れた。
「僕たちも油断すればこうなるかもね……」
ユヅキが暗い表情でそう言った。
「ご主人様はご安心ください! わたしが命に替えてもお守りしますから!」
シルヴィがそう言って俺の手を握る。
その言葉は嬉しいが、女に命を落とさせて自分だけ生還するつもりはない。
「みんな、迷宮の攻略があとどれくらい掛かるか分からない。万全に進むため、またとあるジョブの習得に挑戦したいと思う。協力してくれるな?」
俺は全員の顔を見回しながら尋ねた。
「もちろんなのです。コウタくんがやるべきと思うことを指示してほしいのです」
「……えっと。あたしも賛成です。主様が何をしたいのか楽しみです」
「へへっ。あたいはコウタっちに付いていくぜ!」
「俺もだ。コウタ親分に命を預けているからな!」
ミナ、エメラダ、リン、グレイスがそう言ってくれた。
あのジョブの習得に挑戦してみることにするか。
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