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第5章

294話 エルカ迷宮 2階層

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 エルカ迷宮の2階層を探索中だ。
 かつてそれなりに苦戦して狩っていたリトルブラックタイガーだが、今の俺たちの敵ではない。
 順調に奥へと進んでいく。

「うーん……。ちょっと物足りない気もしますわね」

「……そうだね。迷宮はもっと過酷な場所のはずだけど、コウタちゃんがいるから何の苦労もない……」

 ローズとティータが呟く。

「うむ。寄り道せずに、2階層のボスに挑戦するか」

 俺は仲間たちに告げる。

「いいぜ! あたいも退屈に思っていたんだ!」

「わたしはご主人さまに全て従います!」

 リンとシルヴィが答える。

「ボクもそれで構わないのです」

「同じく。油断は禁物だけど、慎重になり過ぎるのも良くないからね」

 ミナとユヅキも同意してくれた。

「決まりだな。では、奥に向かおう」

 そう言って、俺たちは歩みを進める。
 道中の敵を難なく撃破し、ついに2階層の奥まで辿り着いた。

「ここがボス部屋ですの?」

 ローズが尋ねる。

「ああ。そうみたいだ。さすがに少し緊張するな」

「ふふ。コウタ殿がそういうことを言うのは初めて見ましたわ」

「まあ、確かにそうだが……」

 俺は苦笑しつつ答えた。
 MSCに酷似したこの世界で、俺は当初からある程度の自信を持って活動してきた。
 シルヴィを思い切って分割払いで購入したり、当時としてはやや危険なエルカ樹海での狩りに挑戦したりなどだ。
 とはいえ、まだまだ駆け出しという自覚はあったし、時には慎重に行動することもあった。

 その後、ミナとリンを仲間に加え、パーティの戦力は増した。
 テツザン杯では優勝もできたし、ブラックワイバーンも撃破した。
 俺の戦闘能力は周囲と隔絶しつつあった。
 ローズと本格的に交流を持ったのはその頃だ。
 彼女から見た俺は、常に自信満々で余裕のあるリーダーとして映っているだろう。

「ご主人様なら2階層程度、何の問題もありません!」

「へへっ。ガンガン行こうぜ!」

 シルヴィとリンは、イケイケドンドンなタイプだ。
 こういった場面で臆することはほとんどない。

「ああ、そうだな」

 俺たちはボス部屋の扉を開く。
 すると、そこには巨大な魔法陣があった。

「ふむ……。この魔法陣は……」

 1階層で見たものより、ひと回り複雑な紋様になっている。

「これは……。なかなかの魔物が出てきそうですわね」

「えっ!? それって大丈夫なのですか?」

 ローズの言葉に、エメラダが驚く。

「大丈夫だ。この魔法陣には見覚えがある。ブラックタイガーが出るだけだ。リトルブラックタイガーの上位種だな」

 俺はみんなに説明をする。
 多少は強いが、極端な強敵というわけでもない。
 さくっと倒してしまうことにしよう。
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