290 / 1,273
第5章
290話 エルカ迷宮 1階層
しおりを挟む
「ふむ。この場所も懐かしいな」
「そうだね。何だか遠い昔のような、つい先日のような気もするよ」
俺の言葉に、隣にいたユヅキが相槌を打つ。
「さっそく1階層の探索を始めるか」
「はいなのです!」
「……ん」
「うーっし! 行くぞ!」
「ご主人様の前の障害は全てわたしが取り除きます!」
俺の言葉にミナ、ティータ、リン、シルヴィが呼応する。
「これがダンジョン……。興味深いですわね。どこか禍々しさも感じますが……」
「盗賊の俺にとっちゃ、これぐらい屁でもねえぜっ!」
グレイスがそう吠える。
確かに、『盗賊』はダンジョン攻略への適性がある。
それは間違っていないのだが……。
「……えっと。盗賊、ですか?」
エメラダが困惑気味に質問をする。
「誤解するなよ? グレイスのジョブが『盗賊』というだけだ。大昔に一度、スリをしたことがあったらしくてな」
俺は苦笑しながらエメラダに説明する。
盗賊のジョブの取得方法は他のジョブと比べても簡単な方だ。
窃盗や強盗などをすれば取得できる。
ただし、ジョブの取得だけを目的とした行為では条件は達成できない。
それに、身内で事前に打ち合わせしたヤラセ行為でもジョブを取得できない。
捕まれば社会的な罰を受けてしまう、というような状況下での窃盗や強盗でなければダメなのだ。
「そ、そうなんですか……。びっくりしました。私、ジョブにはあまり詳しくなくて。てっきり本物の盗賊さんなのかと」
エメラダがホッと胸をなでおろしている。
犯罪組織『毒蛇団』によって奴隷に堕とされた彼女は、犯罪者に対する警戒心が強い。
グレイスが本物の盗賊だったということは伏せておいた方が無難だろう。
「……ま、まあそういうわけだからよ。迷宮攻略の先陣は俺に任せてもらおうか!」
グレイスがそう言う。
「よし、任せたぞ」
俺たち『悠久の風』は、迷宮内を進んでいく。
そして、行く手を魔物が遮った。
「「ギイイィッ!」」
ゴブリンが2体現れたのだ。
「ひゃっ! で、出たぁ!?」
エメラダが怯えた声を上げる。
「心配ない。この程度の敵は俺たちにとっては雑魚同然だ」
俺はそう言って、腰から剣を抜き放つ。
そして、ゴブリンに向かって斬りかかった。
「せいやあっ!!」
ズバッ!!
俺の斬撃により、ゴブリンはあっさりと両断される。
「す、すごい……」
エメラダは目をまんまるにさせて驚いている。
「相変わらず凄えな。コウタ親分はよ」
「……ん。強い」
「ご主人様の雄姿に惚れ直しちゃいました!」
グレイスとティータ、シルヴィが口々に褒め称える。
ゴブリンくらいなら、みんなも軽く倒せるはずだが……。
まあ、真っ二つにできるほどの鋭い一撃を放てる奴はいないかもしれない。
「ありがとう。みんな」
みんなの称賛は素直に受け取っておく。
引き続き1階層を進んでいくことにしよう。
「そうだね。何だか遠い昔のような、つい先日のような気もするよ」
俺の言葉に、隣にいたユヅキが相槌を打つ。
「さっそく1階層の探索を始めるか」
「はいなのです!」
「……ん」
「うーっし! 行くぞ!」
「ご主人様の前の障害は全てわたしが取り除きます!」
俺の言葉にミナ、ティータ、リン、シルヴィが呼応する。
「これがダンジョン……。興味深いですわね。どこか禍々しさも感じますが……」
「盗賊の俺にとっちゃ、これぐらい屁でもねえぜっ!」
グレイスがそう吠える。
確かに、『盗賊』はダンジョン攻略への適性がある。
それは間違っていないのだが……。
「……えっと。盗賊、ですか?」
エメラダが困惑気味に質問をする。
「誤解するなよ? グレイスのジョブが『盗賊』というだけだ。大昔に一度、スリをしたことがあったらしくてな」
俺は苦笑しながらエメラダに説明する。
盗賊のジョブの取得方法は他のジョブと比べても簡単な方だ。
窃盗や強盗などをすれば取得できる。
ただし、ジョブの取得だけを目的とした行為では条件は達成できない。
それに、身内で事前に打ち合わせしたヤラセ行為でもジョブを取得できない。
捕まれば社会的な罰を受けてしまう、というような状況下での窃盗や強盗でなければダメなのだ。
「そ、そうなんですか……。びっくりしました。私、ジョブにはあまり詳しくなくて。てっきり本物の盗賊さんなのかと」
エメラダがホッと胸をなでおろしている。
犯罪組織『毒蛇団』によって奴隷に堕とされた彼女は、犯罪者に対する警戒心が強い。
グレイスが本物の盗賊だったということは伏せておいた方が無難だろう。
「……ま、まあそういうわけだからよ。迷宮攻略の先陣は俺に任せてもらおうか!」
グレイスがそう言う。
「よし、任せたぞ」
俺たち『悠久の風』は、迷宮内を進んでいく。
そして、行く手を魔物が遮った。
「「ギイイィッ!」」
ゴブリンが2体現れたのだ。
「ひゃっ! で、出たぁ!?」
エメラダが怯えた声を上げる。
「心配ない。この程度の敵は俺たちにとっては雑魚同然だ」
俺はそう言って、腰から剣を抜き放つ。
そして、ゴブリンに向かって斬りかかった。
「せいやあっ!!」
ズバッ!!
俺の斬撃により、ゴブリンはあっさりと両断される。
「す、すごい……」
エメラダは目をまんまるにさせて驚いている。
「相変わらず凄えな。コウタ親分はよ」
「……ん。強い」
「ご主人様の雄姿に惚れ直しちゃいました!」
グレイスとティータ、シルヴィが口々に褒め称える。
ゴブリンくらいなら、みんなも軽く倒せるはずだが……。
まあ、真っ二つにできるほどの鋭い一撃を放てる奴はいないかもしれない。
「ありがとう。みんな」
みんなの称賛は素直に受け取っておく。
引き続き1階層を進んでいくことにしよう。
26
お気に入りに追加
1,089
あなたにおすすめの小説
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる