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第4章 エルフの里アルフヘイム

205話 挙動不審な少年

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 エルフの里アルフヘイムの周辺の森を探索していたところ、行き倒れらしき少年を発見した。
 ローズの治療魔法により、彼が回復していく。

 やはり治療魔法は便利だな。
 別にポーションで回復させてもいいのだが、ポーションは消耗品だからな。
 治療魔法使いがパーティにいると、出費を抑えられるし、ちょっとしたケガでも気軽に治療して万全な状態を維持しやすい。

「……はっ!? ここは……?」

 少年は目を覚ましたようだ。

「気がついたか」

 俺が声をかけると、彼はこちらを見つめる。

「お前たちはだれだ?」

「俺たちは冒険者パーティ『悠久の風』というものだ。俺はリーダーをしているコウタだ」

 俺はそう名乗る。
 続いて、シルヴィやユヅキたちも挨拶を済ませていく。

「……ティータの名前はティータだよ。それで、あなたはこんなところで何をしていたの……?」

 ティータがそう問う。

「ええと、俺は……って、エルフ!?」

 少年が突然慌て出す。

「落ち着け。別に取って食おうとしているわけじゃない。むしろ、お前を助けたんだ」

 俺はそう説明する。

「そ、そうだったか。ありがとう」

 少年がそう言う。
 だが、彼の額には玉のような汗が浮いていた。

「まだ体調は万全ではないみたいだな。もう少し休むといい」

 俺はそう声をかけたのだが……。

「いや! もう大丈夫だから!」

 彼はそう言って起き上がる。

「無理をするな。また倒れたらどうする?」

 俺の言葉に、彼は首を横に振る。

「本当に平気なんだ」

 うーむ。
 確かに、体調は問題なさそうか?
 あの汗は気になるが……。
 体調不良ではないと本人が言っている以上、これ以上止める理由もない。

「わかった。それじゃあ、とりあえずアルフヘイムに戻るか」

 俺たちは立ち上がる。

「ア、アルフヘイムだって? 幻の里と言われる……」

 彼が驚いたようにつぶやく。

「ああ。知っているのか?」

「噂だけは聞いたことがある」

 エルフは他種族とあまり交流を持たない。
 ましてや、集落に招き入れるなど滅多にないことだろう。
 エルフにゆかりのない者であれば、存在自体が幻だと感じても不思議ではない。

 だが、この俺は別だ。
 エルフの宿敵であるブラックワイバーンを討伐し、ティータというエルフの知己も得た。
 排他的なエルフが俺を受け入れたことも納得のいく話である。

「俺まで付いて行っていいのか?」

 少年がそう尋ねる。

「ああ。まさか森の中に一人置いていくわけにもいかないしな。それで、お前は森で何をしていたんだ?」

 先ほどもティータが聞いたが、話の流れで結局答えてもらっていない。

「え、ええっと……」

 少年が目を泳がせる。
 何だか挙動不審だな。
 しっかりと詰問しておくことにするか。
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