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第3章 武の名地テツザンへ

167話 なあに、すぐに追いつくさ

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 ブラックワイバーンという強力な翼竜が出現した。
 クラウスや兵士たちが倒れ込んでいたが、ローズの治療魔法により一命はとりとめた。

「ふう……よかった」

 俺は胸を撫で下ろす。

「安心している場合じゃないよ?」

 ユヅキが厳しい口調で言う。

「わかってる。こいつも倒さないとならないんだろう」

 俺は剣を抜いて構えた。

「やめろ……。みんなで逃げるんだ……」

 クラウスが力を振り絞るようにしながら、必死に止めようとする。
 だが、逃げるわけにはいかない。
 先ほどまで倒れていた者たちは、まだまだ全快ではないからだ。
 だれかがブラックワイバーンの足止めをしないと、全員は逃げ切れないだろう。

「俺が時間を稼いでやる。ローズやティータたちは、クラウスを連れて先に逃げろ」

「でも……、コウタ殿たちは……」

 ローズが心配そうな顔になる。

「大丈夫。ボクたちなら、なんとかなるのです」

 ミナが力強く答える。

「へへっ。なあに、すぐに追いつくさ」

「全てご主人様にお任せください」

 リンとシルヴィがそう言う。

「……わかりましたわ。決して無理をしないでくださいまし」

 ローズは納得してくれたようだ。
 彼女がクラウスや傷付いた兵士たちを連れて撤退していく。
 しかし……。

「……ん。コウタちゃん、ティータは残る……」

「え!?」

 意外なことに、ティータが一緒に残ると言い出した。

「何を言っているんだ! こいつは危険だ!」

「……ティータだって戦える。それに……あの魔物とは因縁があるの」

「因縁……だと?」

 ティータは、コクっとうなずく。

「……わかった。だけど無茶はするなよ? 危なくなったらすぐ下がるんだ」

「……うん」

 ティータは小さく微笑む。

「よし、行くぞ!」

 俺たちはブラックワイバーンに向かっていった。
 足止めが第一目的だが、ギリギリ倒せなくもない相手だ。
 リーダーである俺がうまく指揮をして戦っていくことにしよう。
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