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112話 危ないっ!

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 義弟フレッドの暴走を止めるため、私も参戦した。
 これで四対一だ。
 さすがに優勢になるだろう。

「【アイスブレード】」

「【ライトニング・ボルト】」

「いくぜっ! うおおおぉっ!!」

 オスカーとエドワード殿下が畳みかけるように魔法を放つ。
 さらに、身体強化魔法を発動したカインも剣で攻撃を加える。
 それらは全て、フレッドの植物の壁によって防がれてしまうのだが……。

「そろそろ、かな?」

 私は小さく呟いた。
 三人の攻撃に気を取られ、フレッドの注意力が散漫になっているのを感じる。
 今ならいけるかもしれない。

「【聖光よ。闇を――」

「【ウッド・クレイドル】」

 だが、呪文を唱え終わる前に、フレッドは魔法を放ってきた。
 それは、植物の壁ごと、私たち全員を飲み込もうとしてくる。

「くっ! こんな魔法もあるのか!?」

「きゃあっ! なにこれ、動けない……っ」

「これは厄介ですね……」

 私達は、植物の蔦に囚われてしまった。
 なんとか脱出を試みるが、上手くいかない。
 それどころか、どんどん魔力を吸われていく。
 このままでは、全員が衰弱死してしまいそうだ。

「へへっ。俺の出番ってわけだな」

 そう言って、不敵に笑うカイン。
 身体強化魔法の恩恵で、一人だけ蔦を回避していたらしい。
 確かに、彼ならばこの状況を打破できるかもしれない。

「カイン。頼むわ」

「おうよ。任せておきなって」

「…………」

 カインとフレッドが睨み合う。
 そして次の瞬間、フレッドはカインに向けて手を突き出した。
 その手のひらから放たれるのは、土の魔法。

「おっと! そんなもの当たるかよ!」

 しかし、それはカインにあっさりと避けられてしまう。
 カインはそのままフレッドに接近していき、その首元に剣を当てた。

「チェックメイトだぜ」

「……ちっ」

 フレッドは悔しそうな表情を浮かべたあと、観念して両手を上げた。
 彼がただの賊なら、カインは容赦なく首をとばしていただろう。
 最低でも、腕や足を切り付けて行動不能にしていたはずだ。
 でも、フレッドは私の義弟だから、穏便に収めてくれたようね。
 いずれにせよ、これで解決――

「危ないっ! カイン!!」

「なにっ!?」

 だが、フレッドはまだ諦めていなかったようだ。
 彼は密かに練り上げていた魔力を開放する。
 それは、一瞬の出来事だった。

「【ダーク・スピア】」

 フレッドの手のひらから黒い槍のようなものが発射され、それがカインのお腹を貫いていたのだ。

「ぐあぁあああっ!!!」

「カ、カイ……ン……」

 腹部を貫かれたカインは、そのまま膝をついた。
 傷口からは、ドクドクと血が流れ出しており、致命傷を負っているのが分かった。
 すぐにでも治療しなければ、間に合わないだろう。
 これは非常にマズい状態だ。
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