88 / 241
88話 好きよ
しおりを挟む
私はアリシアさんと秋祭りを回っている。
屋台では食べ物を売っている店が多いようだ。
「イザベラ様、何か食べますか?」
「そうね……。せっかくお祭りに来たのだし、少しだけ買っていきましょう」
私たちは食べ物を買っていくことにした。
「あの、これください」
アリシアさんが焼き鳥のようなものを買う。
串に刺さった肉を炭火で焼いてタレをかけたものだ。
「はいよ。お嬢ちゃんたち可愛いねえ。サービスしておくよ」
おじさんは私達に二本おまけしてくれた。
「わあっ、ありがとうございます!」
アリシアさんは嬉しそうだ。
彼女は入学式の時点で、純朴系の可愛さを持っていた。
だが、貴族ばかりが通う王立学園においては、華やかさにやや欠けていた。
そこで私は彼女に化粧やオシャレを教えてあげた。
今の彼女は、立派なレディだ。
可愛らしさに加えて美しさも兼ね揃えている。
噂では、彼女に陰ながら懸想している男子生徒も多いとか。
「イザベラ様もどうぞ!」
「あら、悪いわね。それじゃあ、一ついただくわ」
私は焼き鳥のような串を受け取る。
うん、なかなか美味しい。
「んふふ~」
アリシアさんは幸せそうにモグモグしている。
可愛いな。
「あれ? 私とアリシアさんのお肉、少し種類が違うみたいね?」
「はい! イザベラ様の方が高いものですね! それに、量も多いです」
アリシアさんが無邪気に言う。
「…………」
いや、別にいいんだけど。
なんかこう、釈然としないものがあるというか。
「どうかされましたか? イザベラ様」
「いえ、昨年のことを思い出してね……」
「昨年ですか?」
アリシアさんの顔が少し曇った気がした。
「昨年も、エドワード殿下、カイン、オスカー様から大食い扱いされたのよ。まったく、私のような淑女に向かって失礼だと思わないかしら」
「あはは、確かにそれは酷いですね」
「笑い事じゃないわよ、もう。そう言うアリシアさんだって、たくさん食べる方でしょ?」
「うぅ、それは否定できません……」
アリシアさんは困り顔だ。
私と彼女はたまに昼食を共にする。
彼女はとてもよく食べるのだ。
「でも、アリシアさんの食べっぷりは見てて気持ちが良いわよ」
「えぇっ、そんなことないですよー」
アリシアさんは顔を赤くしながら、恥ずかしげに笑う。
「そんなことあるわよ。……ほら、言っている間にもう全部食べちゃっているじゃない」
「そ、それは……」
「いいじゃない。たくさん食べる子の方が、私は好きよ」
「えっ。そ、それって……」
アリシアさんは顔を赤らめて俯く。
私は首を傾げる。
なんだろう、この反応は。
まさか、変なこと言っちゃったかな?
「ほら、また次の屋台があるわよ。今度はフルーツね」
「わぁ、本当です! 行ってみましょう!」
私達は再び歩き始めたのだった。
屋台では食べ物を売っている店が多いようだ。
「イザベラ様、何か食べますか?」
「そうね……。せっかくお祭りに来たのだし、少しだけ買っていきましょう」
私たちは食べ物を買っていくことにした。
「あの、これください」
アリシアさんが焼き鳥のようなものを買う。
串に刺さった肉を炭火で焼いてタレをかけたものだ。
「はいよ。お嬢ちゃんたち可愛いねえ。サービスしておくよ」
おじさんは私達に二本おまけしてくれた。
「わあっ、ありがとうございます!」
アリシアさんは嬉しそうだ。
彼女は入学式の時点で、純朴系の可愛さを持っていた。
だが、貴族ばかりが通う王立学園においては、華やかさにやや欠けていた。
そこで私は彼女に化粧やオシャレを教えてあげた。
今の彼女は、立派なレディだ。
可愛らしさに加えて美しさも兼ね揃えている。
噂では、彼女に陰ながら懸想している男子生徒も多いとか。
「イザベラ様もどうぞ!」
「あら、悪いわね。それじゃあ、一ついただくわ」
私は焼き鳥のような串を受け取る。
うん、なかなか美味しい。
「んふふ~」
アリシアさんは幸せそうにモグモグしている。
可愛いな。
「あれ? 私とアリシアさんのお肉、少し種類が違うみたいね?」
「はい! イザベラ様の方が高いものですね! それに、量も多いです」
アリシアさんが無邪気に言う。
「…………」
いや、別にいいんだけど。
なんかこう、釈然としないものがあるというか。
「どうかされましたか? イザベラ様」
「いえ、昨年のことを思い出してね……」
「昨年ですか?」
アリシアさんの顔が少し曇った気がした。
「昨年も、エドワード殿下、カイン、オスカー様から大食い扱いされたのよ。まったく、私のような淑女に向かって失礼だと思わないかしら」
「あはは、確かにそれは酷いですね」
「笑い事じゃないわよ、もう。そう言うアリシアさんだって、たくさん食べる方でしょ?」
「うぅ、それは否定できません……」
アリシアさんは困り顔だ。
私と彼女はたまに昼食を共にする。
彼女はとてもよく食べるのだ。
「でも、アリシアさんの食べっぷりは見てて気持ちが良いわよ」
「えぇっ、そんなことないですよー」
アリシアさんは顔を赤くしながら、恥ずかしげに笑う。
「そんなことあるわよ。……ほら、言っている間にもう全部食べちゃっているじゃない」
「そ、それは……」
「いいじゃない。たくさん食べる子の方が、私は好きよ」
「えっ。そ、それって……」
アリシアさんは顔を赤らめて俯く。
私は首を傾げる。
なんだろう、この反応は。
まさか、変なこと言っちゃったかな?
「ほら、また次の屋台があるわよ。今度はフルーツね」
「わぁ、本当です! 行ってみましょう!」
私達は再び歩き始めたのだった。
0
お気に入りに追加
2,167
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

【完結】ヒロインであれば何をしても許される……わけがないでしょう
凛 伊緒
恋愛
シルディンス王国・王太子の婚約者である侯爵令嬢のセスアは、伯爵令嬢であるルーシアにとある名で呼ばれていた。
『悪役令嬢』……と。
セスアの婚約者である王太子に擦り寄り、次々と無礼を働くルーシア。
セスアはついに我慢出来なくなり、反撃に出る。
しかし予想外の事態が…?
ざまぁ&ハッピーエンドです。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる