81 / 241
81話 今年は一緒に
しおりを挟む
「いいことを思いついたって……いったい何の話ですか。嫌な予感しかしませんよ」
フレッドはジトーっとした目でこちらを見つめてくる。
そんなに信用がないのかしら……。
ちょっとショックだ。
「まぁ、聞いてちょうだい。エドワード殿下、カイン、オスカー。この三人の中から一人を選ぼうとするから大変なのよ。それなら、いっそのこと全員と行けばいいじゃない?」
「……」
「……え? 何かおかしなこと言った?」
「おかしいですよ!! なんでそうなるんですか!? 姉上はバカですか!?」
フレッドが珍しく声を荒げた。
「そ、そこまで言わなくても……」
私は思わず目を伏せてしまう。
「あ、すみません。つい……」
「別に謝らなくていいけど……。私はただ、みんなで一緒に秋祭りを楽しめたらなって思っただけなのに……」
「はぁ……。もう分かりましたよ。それで、実際のところはどうするんですか? まさかとは思いますが、全員を誘うとか本気で言ってるんじゃないですよね?」
「え? 本気だけど……。というか、去年はその三人と私で回ったし……」
去年の秋祭りではいろいろあったが、結局、最後はみんなで楽しく過ごした。
今年の秋のお祭りもきっと楽しいものになるはずだ。
「はああぁっ!? ぼ、僕は誘われていませんよ! どういうことですか!」
「ふぇっ? そ、そう言われても……。フレッドはまだこの学園に入学していなくて領地にいたし……。誘えるはずがないでしょう?」
「そ、それはそうですけど……。でも、僕だって姉上とお祭りに参加したかったです!!」
「だから、それは無理だったのよ。過ぎたことは諦めなさい」
「うぅ……。ひどいですよぉ……」
フレッドは涙を浮かべて、その場にしゃがみ込んでしまった。
そんな彼を見ていると胸の奥がきゅんとしてしまう。
普段、冷静沈着な彼がこんなにも感情を露わにするとは思わなかった。
「ごめんね。フレッドも王都に来たことだし、今年は一緒に回る?」
「えっ!? よろしいのですか!? や、約束ですよ! 絶対ですからね!」
フレッドはパッと顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。
私は弟の可愛さにやられてしまいそうになる。
フレッドの頭を撫でながら、心を落ち着かせる。
「あれ? でも、お三方からのお誘いはどうなさるのです?」
「うん……。どうしよう? フレッドも入れてみんなで回るのはダメなの?」
「一人の令嬢が多数の男を連れ回すなんて、常識的に考えてあり得ませんよ。しかも、家紋付きの手紙で誘われているのです。受けるか受けないか、そのどちらかです。中途半端は良くないと思います」
「うーん……。やっぱりそうだよね……。どうしようかなぁ……」
私は頭を悩ませるのだった。
フレッドはジトーっとした目でこちらを見つめてくる。
そんなに信用がないのかしら……。
ちょっとショックだ。
「まぁ、聞いてちょうだい。エドワード殿下、カイン、オスカー。この三人の中から一人を選ぼうとするから大変なのよ。それなら、いっそのこと全員と行けばいいじゃない?」
「……」
「……え? 何かおかしなこと言った?」
「おかしいですよ!! なんでそうなるんですか!? 姉上はバカですか!?」
フレッドが珍しく声を荒げた。
「そ、そこまで言わなくても……」
私は思わず目を伏せてしまう。
「あ、すみません。つい……」
「別に謝らなくていいけど……。私はただ、みんなで一緒に秋祭りを楽しめたらなって思っただけなのに……」
「はぁ……。もう分かりましたよ。それで、実際のところはどうするんですか? まさかとは思いますが、全員を誘うとか本気で言ってるんじゃないですよね?」
「え? 本気だけど……。というか、去年はその三人と私で回ったし……」
去年の秋祭りではいろいろあったが、結局、最後はみんなで楽しく過ごした。
今年の秋のお祭りもきっと楽しいものになるはずだ。
「はああぁっ!? ぼ、僕は誘われていませんよ! どういうことですか!」
「ふぇっ? そ、そう言われても……。フレッドはまだこの学園に入学していなくて領地にいたし……。誘えるはずがないでしょう?」
「そ、それはそうですけど……。でも、僕だって姉上とお祭りに参加したかったです!!」
「だから、それは無理だったのよ。過ぎたことは諦めなさい」
「うぅ……。ひどいですよぉ……」
フレッドは涙を浮かべて、その場にしゃがみ込んでしまった。
そんな彼を見ていると胸の奥がきゅんとしてしまう。
普段、冷静沈着な彼がこんなにも感情を露わにするとは思わなかった。
「ごめんね。フレッドも王都に来たことだし、今年は一緒に回る?」
「えっ!? よろしいのですか!? や、約束ですよ! 絶対ですからね!」
フレッドはパッと顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。
私は弟の可愛さにやられてしまいそうになる。
フレッドの頭を撫でながら、心を落ち着かせる。
「あれ? でも、お三方からのお誘いはどうなさるのです?」
「うん……。どうしよう? フレッドも入れてみんなで回るのはダメなの?」
「一人の令嬢が多数の男を連れ回すなんて、常識的に考えてあり得ませんよ。しかも、家紋付きの手紙で誘われているのです。受けるか受けないか、そのどちらかです。中途半端は良くないと思います」
「うーん……。やっぱりそうだよね……。どうしようかなぁ……」
私は頭を悩ませるのだった。
1
お気に入りに追加
2,167
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
訳ありな家庭教師と公爵の執着
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)からHOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。
※断罪回に残酷な描写がある為、苦手な方はご注意下さい。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる