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69話 ウインク

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 集合場所に、他の生徒達が集まってきた。

「順調に終わって良かったなー」

「ああ、それにしても疲れたぜ……」

「あれ? 先客がいるみたいよ?」

「本当だね。私達は早めに終えられたと思ったのに」

 四人グループの男女がこちらに向かってくる。
 その後ろにも、チラホラと他の生徒の姿が見える。

「イザベラさんとオスカーさんのグループか。……え?」

「……は?」

 私達の隣に横たわっている魔獣の死体を見て、彼らが固まる。

「「「「な、何じゃこりゃあぁ!!」」」

 そして、彼らの絶叫が森に響き渡った。
 後続の生徒達も、何事かと足を早めて集まってくる。

「こ、これはいったいどういうことなんだ?」

「最初から死んでいたのか? 魔獣同士の縄張り争いか何かで……」

「いや、人為的な魔法の痕跡があるぞ」

 男子生徒達が魔獣の分析を始める。
 女子生徒は、遠巻きにそれを眺めている。
 露骨に顔を背けて魔獣を見ないようにしている子もいる。
 やっぱり、淑女の反応はこうだよねぇ。

「人為的? いったい誰が……」

「決まってるだろ、そんなこと。魔物の死体が氷漬けになっているんだぞ」

「こんなことができる人なんて一人しかいない」

 生徒達がオスカーに視線を向ける。
 うんうん。
 シルフォード伯爵家は氷魔法の名門だし、普通はそう考えるよね。
 皆からの視線を受けたオスカーは、眼鏡をクイっと上げると落ち着いた口調で言った。

「はい。確かに、この氷魔法は私のものですね」

「おおおぉっ! やはりそうか!!」

「流石だなぁ……」

「凄いですわ! オスカー様!!」

「素敵ですー!!」

 生徒達から歓声が上がる。
 男女問わずかなりの人気だ。
 それもそのはず。
 オスカーは昨年度の次席合格者。
 それから今の二年生に至るまで、ずっと好成績をキープしている。
 特に魔法と座学の成績はかなりのものだ。
 そして、知的でクールな容姿で、人当たりもいい。
 彼のファンは多いのだ。

「皆さん、落ち着いてください。氷魔法は私のものですが、魔獣へ致命傷を与えたのは私ではありませんよ」

 オスカーがそんなことを言い出す。
 確かに、トドメはオスカーではなく私が刺した。
 でも、そんなこと言わなくてもいいじゃないか。
 淑女が魔獣退治をしたなんて広まったら、評判が悪くなる可能性がある。

(オスカー様! はぐらかしてください!!)

 私はアイコンタクトを送る。
 すると、オスカーはこちらにウインクを返してきた。
 どうやら意図を汲み取ってくれたようだ。

「ふむ。では誰だというのです?」

 一人の男子生徒が質問する。

「それはもちろん……」

 オスカーは勿体ぶって間を置くと、堂々と宣言する。

「イザベラ殿です!!!」

「「ええっ!?」」

「「おおおおぉっ!!」」

 森の中に、困惑と驚きの声と感嘆の声が湧き上がる。
 ……オスカーめ、意図を汲み取ってくれてないじゃないか!
 さっきの自信満々のウインクは何だったんだ!
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