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51話 的あて試験

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 Cランク昇格試験の続きだ。
 筆記テストは終わった。
 次は、演習場に出てきている。

「さて、皆さん揃いましたね。それでは今から、Cランク昇格試験の実技試験を始めましょう」

 俺たちが集合したのを確認すると、女性職員がそう言った。

「試験内容は至極単純です。攻撃魔法で、あちらの的を破壊すればいいのです」

 そう言って職員が指差したのは、少し離れたところにある的だった。
 全部で5つある。

「では早速始めましょう! まずはそちらの方、前に出てきて下さい」

 女性職員はそう言うと、1人の少女を指差した。
 彼女は……。

「わたしくが一番手ですか。腕が鳴りますね」

 1番最初に呼ばれたのは、エリスだった。
 彼女が前に出る。

「では、始めてください!」

 女性職員がそう告げた。
 そして、エリスが詠唱を始める。

「【ライトニング・バースト】!」

 バチッという音とともに、青白い光が放たれて的に直撃する。
 的の1つがバラバラに砕け散っていた。
 おお、やるな。
 彼女はその後も同様の魔法を発動していき、5つ全ての的を粉砕した。

「素晴らしい威力です。おめでとうございます」

 女性職員が拍手しながらそう言い、他の受験者たちから歓声が上がる。

「ありがとうございます。でも、わたくしは本職の魔法使いですし、この程度の魔法はできて当然ですよ」

 エリスはクールにそう答えていた。

「次は、そこの方ですね」

 そう言って次に呼ばれたのは、桜だった。

「むっ! 拙者でござるか……」

 桜が前に出た。

「では、始めてください!」

 女性職員がそう合図をする。
 そして、桜が詠唱を始めた。

「【火遁・微炎球の術】」

 彼女がそう叫ぶと同時に、掌から小さな火の玉が出現する。
 そして、的に向かってふらふらと飛んでいった。
 速度は遅い。
 そして、的に当たった瞬間、ボフンと音をたてながら消えてしまった。

 あまり威力は高くないな。
 桜は魔法が苦手のようだ。
 その後も数回発動し、ようやく1個目の的を粉砕したところで試験は終了となった。

「はい、そこまでです!」

「ふう……。最低限はできたでござろうか……」

 桜が額の汗を拭いながらそう呟いていた。

「それでは次の方は……。そちらの可愛らしい猫の服を着た方、お願いします」

「おう」

 俺は返事をして前に進む。

「あの子も可愛いよなー」

「ああ。しかし妙な格好だよな。舐めてるのか?」

「本当にな。あんなのが俺たちと同じくCランク冒険者を目指しているとは、世も末だぜ」

 そんな声が聞こえてきた。
 う、うるせえな。
 変な格好なのは自覚しているよ。
 俺は心の中で文句を言う。

「……よし」

 5つの的を破壊するだけの簡単なお仕事だ。
 猫耳装備があれば楽勝だろう。

「【ネコファイア】」

 俺は猫耳装備の能力を解放し、魔法を放つ。
 赤黒い閃光が一直線に伸びていき、的へ到達すると爆発した。
 ドガアアン!!
 けたたましい音が響き渡る。

「すげえ! なんだ今の!?」

「見たこともない魔法だぞ!」

 他の受験者たちがざわめいている。
 猫耳装備により俺は強力な攻撃魔法を使えるが、その中でもネコの名前を冠した魔法は段違いだ。

「さあて。次の的を撃つか」

 先ほどのネコファイアは、端の的1つに当てただけだ。
 残りの的を全部壊していかないと。
 俺はそう思ったが……。

「……ん?」

 残りの的は全て壊れていた。
 どうやら、最初の魔法の威力が高すぎたようだ。
 余波だけで他の的も粉砕してしまっている。

「あちゃ~。やりすぎちまったか」

 高威力はいいことなのだろうが、制御がイマイチだと思われると評価が低くなるかもしれない。
 俺は筆記テストの手応えも微妙だったし、少しマズいかもなあ……。
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