悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲

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21.ブライス・ベネット殿

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王太子殿下に呼ばれてから2週間後私達は煌びやかな建物の前に立っていた

そう、王宮である

「本当に来てしまいましたね」
「…アシュリン王女殿下に会わないで済めばいいが彼女こそ当事者だからな」
苦い顔をしつつエスコートをしてくれるヒューゴ様に内心全力で同意した

(私もできる事なら会いたくないです…)

心臓がおかしくなりそうになりながらも呼び出して来たアンドレア王太子殿下の元へ向かう




「突然呼び出してしまってすまないな」
少し会わなかった間に随分と疲れた顔をしている王太子殿下が豪華な部屋の中でソファに体を沈み込ませていた

「大丈夫ですか?顔色が、その」
ヒューゴ様が戸惑いつつそう聞く
「大丈…いや全然大丈夫ではないな色々あり過ぎてすっかり滅入っている

まぁ取り敢えず座ってくれ」
もはや強がる気力すらなかったらしく疲れきった声だった


(これは…相当大変だった様子で)
私とヒューゴ様は恐る恐る指差されたソファに座る

「まずはどこから話せば良いのか」
王太子殿下は体勢を整え私達に向き合い話を始めた
「そうだなまずは父上の謝罪からだ」
「父…国王陛下からの謝罪ですか!?」
いきなり驚かされてしまう

「私の予想通り我らが国王様は可愛い愛娘の言う事を全面的に鵜呑みにして何の罪も犯していないヒューゴを有責として婚約破棄したんだと」
「…でしょうね」
それは分かっていたらしいヒューゴ様は苦笑いをして呟いた
「アシュリンに甘いのは知っていたがまさかここまでとはっ昔はもっと冷静で色んな意味で平等な人だったんだがなぁ」
「…確かに国王陛下も昔とは変わったような気がしますね」

(国王陛下も?)



「それで、だここからが本題なんだが」
「ブライス・ベネット殿の事ですね」
どうしてあの日あんな事になったのか事情を全て知っていそうな人

「回りくどい事は抜きにしようと思ってな…入ってこい」
部屋の奥にあった扉から人が入ってきてその顔を見て言葉を失った

「ヒューゴ・ガンダー公爵令息様、イヴァ・クレマー辺境伯令嬢様


初めましてブライス・ベネットと申します」まさか本人と会う事になるとは思っていなかったから

(てっきり直接会うのは王女殿下だと思っていたわ)

少し固いがちゃんと貴族の礼をしている
ほんの少し前まで平民だったとは思えない姿だ


(凄い…相当努力されたのね)

「こっちに座ってくれ」
ブライス殿は王太子殿下が座っているソファと私達が座っているソファの間に鎮座している1人用のソファに座る

「今回の事、本当に申し訳ありませんでした」ブライス殿はガバッと頭を下げた


「ブライス殿今は謝罪ではなくあの時起こった事を知りたいのです」
ヒューゴ様が諭すように話しかければブライス殿はゆっくりと説明を始める


「前提として俺に対しての嫌がらせは確かにありました…ですがガンダー公爵令息が犯人だなどとアシュ様に言った覚えはないのです」
「…様?」
聞き慣れない呼び方につい話を止めてしまった

「あっ!すみませんアシュリン王女殿下にそう呼ぶように言われまして…直そうとは思っているのですがなかなか直らず失礼しました」
「王女殿下にっ!?」
驚きの声をあげるヒューゴ様
「アシュリン…」
明らかに声が沈んでいる王太子殿下


「あの、やはり愛称で呼ぶのはよろしくないんでしょうか?」
ブライス殿が恐る恐るそう聞いてきたので私は口を開く

「ブライス殿、その通りです基本的に貴族や王族が愛称で呼ぶのはその人物の家族及び親戚か婚約者ぐらいなんですわ」
「えっじゃあ…俺に愛称で呼ぶように言ったのは一体?」
王女殿下の真意は分からないがブライス殿は知るべきだ


「推測でしかありません…が恐らく王女殿下は貴方を恋人のように扱っていたのかもしれません」
私の言葉に彼は目を見開き真っ青になって叫ぶ



「はぁっ!?そんなつもりは一切ありませんでしたけど!?」
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