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突然の婚約破棄_ヒューゴ視点_

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パーティーでいきなり叩き付けられた婚約破棄、理由はアシュリン様の友人であるブライス殿への悪質な嫌がらせ

全く身に覚えがない

そもそも俺はブライス殿と個人的に会った事などない上何故そんな事をしなくてはならないのか
彼はこの国でたまに存在する神からの祝福を受けた人間だ


だからこそ王族が保護し祝福を受けた者に与えられる"ベネット"という家名をもらい貴族として扱われている

平民であったが故に貴族の礼儀や勉強に付いていけていない所はあるが努力を重ねている事は俺の耳にも入っていた

慣れない環境に適応しようと努力する彼
尊敬するべき存在である


そんな彼に嫌がらせをするなんて事俺がする訳がないのにアシュリン様は聞いてくれない
(あぁ…またこれか)

俺と彼女は幼い頃から婚約者だったがどうも昔から人の話を聞かず一度思い込んだらもう止まらなくなるのだ

「私とブライスが親しげにしていたから嫉妬したのでしょ!」
「いえ、ですから」
「お黙りなさい!!いくら婚約者でもやっていい事と悪い事があるわ!」

俺の言葉を一刀両断しひたすら罵倒してくる
その隣でオロオロと狼狽えているブライス殿、あぁやはり
(この婚約破棄はアシュリン様の完全な独断か国王陛下と父上になんと言えば)

頭を抱えたい
これが個室で行われているのならまだしもここは王家主催のパーティー会場のど真ん中
彼女の発言を国中の貴族が聞いている状況だった


(どうしようもない…これでは本当に俺が嫌がらせをした事にされるのでは?)
その考えに至り必死に否定したがやはり聞いてくれるはずもなく

「お父様に全て報告させてもらうわ!今日は家に帰って大人しく処罰を待っていなさい!」「あ、あの…」
「アシュリン様!そんな!」

彼女はスタスタと奥へ行ってしまい何か言いたげなブライス殿はそれを追い掛けていく

俺は呆然とするしかなかった



そんな俺に1人の女性が近付いてくる
クレマー辺境伯の1人娘だと名乗った
(じゃあこの令嬢が噂の【守銭奴令嬢】?)


美しい黒髪、少し吊り目な紫眼
凛とした表情、よく似合っている紫色のスレンダーラインドレス

そこにいたのは金にがめつく性根が腐った女という噂とは違い気が強く見えるが誠実そうな令嬢で彼女は俺にさっきの話は事実かと聞いてくる

俺は咄嗟に大声で否定した
そうすると彼女は
「ええそうでしょう、ならば!胸を張って堂々と立ってくださいませ

貴方は公爵家の人間なのでしょう?」
と言ってくれて混乱していた頭を冷やしてくれる

(あぁ何もしていないのだから堂々としていればいいなんてすぐ思い付かないとはな…)

気付かせてくれた彼女に「…ありがとう」と礼を言うと
「いえお礼を言われる程の事はしておりませんこれからが大変でしょう…どうか頑張ってくださいませ私などに言われたくはありませんでしょうが


汚名に負けないでください」

そう言って彼女は離れていった


(私などに言われたくはない…汚名に負けないで…まさか守銭奴令嬢というのは)

彼女の家は商会をやっている
考えてみれば彼女が金を第一に考えるのは当たり前だ


(そうか君も…君のような気高い令嬢に言われては頑張らなくてはな)


どんな事になっても頑張ろうと決めていたのに



俺はそのまま自宅に帰り父上からの呼び出しを待つ

3時間程経ち帰ってきた父上に呼び出され書斎に入った

「ただでさえ臆病者でこの家に相応しくなかったというのに王女との婚約を破棄されるとは…そんな人間がこの家の嫡男のままでいていい訳がないっ!この家は有能なオーウェンに継がせる!


この家の2度とこの家に帰ってくるな!せいぜい守銭奴令嬢に媚びを売るんだな」



身に覚えのない罪で俺が有責となり婚約は正式に破棄されイヴァ・クレマー辺境伯令嬢の元へ婿入りする事となる


(頑張ってくれと汚名に負けないでと言ってくれた君に迷惑をかける事になるとは…心底申し訳ないな)




数日後俺は申し訳なさに押し潰されそうになりながらクレマー辺境伯の元へ向かう馬車に乗る
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