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第一章 戦友
選択肢
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その日は、神父メティスの執務室に、カロンをはじめとして、ナギ、ケン、そしてシリウスが集まり、北部新進党のテレビ演説を見ていた。神妙な顔をするケンは、ため息をついて神父を見ているナギの服の裾を掴んでいた。シリウスはテレビを横目にいらだちを隠せないでいた。
いまさらになって、なぜ、中央はこのようなことを言いだしたのだろう。これでは、東マリンゴートがアースを囲っていて、放さないでいるようなものではないか。本人は地球に帰ってしまってここにはいないというのに。
シリウスの心境を察したのか、ナギが神父の執務室からケンを連れて出た。そして、しばらく廊下で何かを話し込んでからもう一度部屋に入り、こう言った。
「これは罠だ。ここに王子がいないことなんて、周知の事実だ。あの名医がここにいれば、私は今ほど忙しくはないからね」
「罠って、それなら、どうやってそれを回避するんですか?」
ケンが口を尖らせる。すると、ナギは、そんなことは簡単なことだ、と、付け加えてこう言った。
「本物の王子が、ここにいればいいんだ」
そこで、ナギのその発言に、カロンが反論をした。
「そう簡単にはいかないですよ、ナギ先生。地球にいるアースをどうやって説得するんですか? この星から何万光年も離れているというのに」
「そうだね、まあ、普通に考えれば不可能だ。でも、彼は来るだろうね。来て、責任を果たさなきゃならないことなんて承知の上でシリウスをよこしたんだろう?」
ナギのセリフに、シリウスはドキリとした。確かにそうではあるが、シリウスは皆が知らないもう一つの事情を知っていた。そのためなのか、先程のようないらだちはもう、見せていなかった。
「確かにそうだけど、俺は病院のことまで責任負えないからな」
「そこまであんたが首を突っ込む必要はないさ」
ナギは、そう言って、次にカロンを見た。
「あんたたちは、本当にこのままでいいと思っているのかい」
「このままでって、そりゃあ」
カロンは困った顔をして言い返したが、言葉に詰まってしまった。アースが来てくれれば、それほど助かることはない。彼とは幼馴染の間柄だし、会えるのなら会って話したいことは山ほどあった。しかし、このようなことで彼を頼ってしまってもいいのか、そこが引っかかっていた。
「メティス」
カロンの様子を見て、ナギは困ったように笑った。ここの人間はあと一歩が踏み出せない。苛立ちを覚えることはなかったが、頼りなく感じることはあった。ナギは、テレビの演説に見入っていたメティスを、名指しで呼んだ。神父はハッと気づいて皆の前に向き直った。
「メティス、あんたはここの統治者だ。その自覚はもっと持ったほうがいい。アースをここに呼び戻すのか、このままどうにかしてごまかすのか、選択はできないのかい」
「選択、ですか」
そう言って、メティスは少し、考え込んだ。
「どちらを選択しても、ナギ先生にご迷惑をかけるかもしれません。それでも良いのなら」
「かまわないよ、私はね」
そう言って、ナギは微笑んだ。
その時だった。
神父の執務室の白いドアを、ドンドンと叩く音がして、その場にいた全員がそちらを向いた。普通のノックではない。なにか、急いでいる。
いまさらになって、なぜ、中央はこのようなことを言いだしたのだろう。これでは、東マリンゴートがアースを囲っていて、放さないでいるようなものではないか。本人は地球に帰ってしまってここにはいないというのに。
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「罠って、それなら、どうやってそれを回避するんですか?」
ケンが口を尖らせる。すると、ナギは、そんなことは簡単なことだ、と、付け加えてこう言った。
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「そう簡単にはいかないですよ、ナギ先生。地球にいるアースをどうやって説得するんですか? この星から何万光年も離れているというのに」
「そうだね、まあ、普通に考えれば不可能だ。でも、彼は来るだろうね。来て、責任を果たさなきゃならないことなんて承知の上でシリウスをよこしたんだろう?」
ナギのセリフに、シリウスはドキリとした。確かにそうではあるが、シリウスは皆が知らないもう一つの事情を知っていた。そのためなのか、先程のようないらだちはもう、見せていなかった。
「確かにそうだけど、俺は病院のことまで責任負えないからな」
「そこまであんたが首を突っ込む必要はないさ」
ナギは、そう言って、次にカロンを見た。
「あんたたちは、本当にこのままでいいと思っているのかい」
「このままでって、そりゃあ」
カロンは困った顔をして言い返したが、言葉に詰まってしまった。アースが来てくれれば、それほど助かることはない。彼とは幼馴染の間柄だし、会えるのなら会って話したいことは山ほどあった。しかし、このようなことで彼を頼ってしまってもいいのか、そこが引っかかっていた。
「メティス」
カロンの様子を見て、ナギは困ったように笑った。ここの人間はあと一歩が踏み出せない。苛立ちを覚えることはなかったが、頼りなく感じることはあった。ナギは、テレビの演説に見入っていたメティスを、名指しで呼んだ。神父はハッと気づいて皆の前に向き直った。
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そう言って、メティスは少し、考え込んだ。
「どちらを選択しても、ナギ先生にご迷惑をかけるかもしれません。それでも良いのなら」
「かまわないよ、私はね」
そう言って、ナギは微笑んだ。
その時だった。
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