上 下
9 / 19
02 恭弥side .

.

しおりを挟む







「ねぇ、恭弥くん私の話聞いてる?」


俺の隣には先ほど交流したばかりの女の人がべったりとくっついて話しかけてる。
いつもの俺なら、ちゃんと反応するし話もするんだけど今回は、理人の件があってからぼんやりしてて、女の人と会っても会話が頭に入らない。

「ねぇってば、聞いてるの?」

俺の腕をグイグイと引っ張ってくる
俺は聞いてるよ、とだけ言うとカウンターにあるお酒を一口飲んだ。

理人とどうにかにして話し合いがしたい。
だけど、俺は理人を無意識に傷付けてしまったから、理人は俺と会いたくないんだろう。

俺はため息をつき、もう一度理人とのトークを開いたが既読は変わらずついてなかった。
既読のつかないトークを眺めた





「いらっしゃいませ、2名様ですか?今カウンターしか空いてませんが…そちらに座ってくださいね」

店員の声にふと顔を上げると、そこには見覚えのある姿が2人いた
しかも、男性に向かって楽しげに笑っていた

「はっ?理人?」

俺は思わず声に出してしまう
向こうも俺を見てびっくりした顔をしてた。

理人と前回ホテルから一緒に出てきた男性だった。
俺は気がつくとその場の席から離れ、理人の腕を掴んでた。

「何だよ、離せよ。要さんと一緒にいてんの見てて分かんない?つかお前も女の人と来てんじゃん。女の人に申し訳ないと思わないの?」

理人は俺の腕を振り払うと、俺を睨みつける

今まで、俺の前ではニコニコしていて俺が何を言っても笑いながらハイハイって聞き流してたのに何でそんな冷たい目で俺をみるんだ?俺が何かをしたのか?

俺はそんな気持ちが沸々と溢れ、理人の手首をもう一度掴み店外から飛び出した。





.





「っおい!恭弥聞いてんのかよ!離せ!痛いって…!」

理人が何やら後ろで喚いているが俺はそれを無視し
人通りの少ない路地裏まで連れて行くと理人を壁へと強く押し付けた

「い゛ッ…ッ何だよ!」

「俺が何度も連絡してるのに何で無視するんだよ?こないだの言い争いが原因ならそう言えばいいだろ?俺は理人と仲直りしたい」

「…ッそんなの無理だよ、つか手離せよ…!痛いし…」

無理だよ、の言葉に俺は思わずカッとなり理人を更に壁へと押し付けた

「何で無理なんだ?理人と親友だと思ってたのは俺だけだったのか?」

「…親友だと思ってたのはお前だけだよ。俺はお前のことを一度も親友だと思った事ない。」

親友だと思った事ない、の発言に雷が打たれたような感覚がした。
じゃあお前は今まで俺の隣でどういう気持ちで笑ってたんだ?どういう気持ちで一緒にいてたんだ?

「俺のこと、どういう風に見てたんだよ…?俺は今まで何度もお前に色んな気持ちを曝け出して話してきたじゃねぇか。それなのにこの仕打ちはないだろ?」

「…お前はな。俺はお前の前で自分の気持ちや感情を話したこと一度もないと思うけど。」

理人のその発言にハッとした。
そう言えば中学生の時仲良くなってから一度も俺に相談や感情の話をされたことがない。

俺は今まで、理人の何を見てたんだろう?
俺1人だけが理人は親友なんだと思ってたんだ

それなのに、ポッと出てきた男には楽しそうに笑って寄り添ってた。

俺は壁に押し付けてた理人から離れるとその場にへたり込むと髪をグシャと握った

「わかんねぇ…俺、お前が何を考えてるのかわからねぇよ…、俺は今まで通りに…理人と笑い合って過ごしたいだけなのに。俺が何かをしたなら謝るから…理由を教えてくれ。ずっと俺を避けてる理由を知りたいんだ」

「俺がずっと避けてた理由を話したところで…きっと恭弥とは元の関係に戻れないと思う。むしろ…恭弥に幻滅されると思う。」

理人はそれだけを言うと、小さい声でごめん、とだけ呟きその場を去った








.












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

朔の生きる道

ほたる
BL
ヤンキーくんは排泄障害より 主人公は瀬咲 朔。 おなじみの排泄障害や腸疾患にプラスして、四肢障害やてんかん等の疾病を患っている。 特別支援学校 中等部で共に学ぶユニークな仲間たちとの青春と医療ケアのお話。

【R-18】トラウマ持ちのSubは縛られたい 〜Dom/Subユニバース

np03999
BL
 朋志は、サブドロップがきっかけで、顕とパートナーを解消することになったが、顕への執着から、次のパートナーを作れずに、抑制剤と副作用を抑える薬でやり過ごす日々を送っていた。  偶然顕と再会し、パートナー候補の棗と引き合わされるが、あまり乗り気ではなくて…。  棗とのお試しプレイからはじまり、本当のパートナーになっていくお話です。  よろしくおねがいします。  なお、この作品は、いろんなDom&Subが出てきます。あしからず。 登場人物: 丸目 朋志(まるめ ともゆき)…Sub 主人公。Sub性が強く、許斐とマッチングするが、段々とプレイが噛み合わなくなり、サブドロップがきっかけで、2年前にパートナーを解消した。 Sub性は強いが、嗜好については自覚なし。 棗 理人(なつめ りと)…Dom 顕とは、ダイナミクスバーで知り合い、意気投合。Dom同士情報交換をすることも。 サブスペース厨で、甘やかしたがりの褒めたがり。 許斐 顕(このみ あきら)…Dom 朋志の過去のパートナー。 加虐性の強いDomで、精神縛りが好き。プレイのみの嗜好。真っ当な社会人。 棗とは、ダイナミクスバーで知り合い、意気投合。 別名、トラウマ持ちのSubがサブスペース厨のDomに可愛がられるに至るまでの軌跡です。 R-18のダグが含まれる内容の章には”※R-18"と書いていますので、お気をつけください。

【BL】切なさの涙の数だけ、共に夜を越えていこう~契約結婚のススメ~

圭琴子
BL
 僕は小学校まで、遊園地の好きな、何処にでも居る明るい子供だった。  だけど両親を亡くし、あしなが基金に借金して成人した僕は、いつしか長い前髪の陰に隠れて、自信を失い、恋愛もままならないようになっていた。  ある日、心配した姉ちゃんに無理やり申し込まれた婚活パーティで、優しくしてくれた男性(ひと)に連絡先を書いたら、何とそれは、結婚契約書だった!  最初は誰でも良かった契約結婚。  いつしか「好き」と「好き」が重なり、「愛してる」になる。  幾つもの障害をを越えて結ばれた時、こぼれ落ちた切ない涙は、「愛」そのものなのだと知る。  切なさの涙の数だけ、共に夜を越えていこう。

色んなBL詰め込み ( R18有です )

きなこ
BL
. 色んなBL小説になります 短編 で R18もかなり入ってます ♡ / あへおほ有 / 潮吹き / 玩具 / 露出 / スパンキング .. 結構ハード多めなので苦手な方は気を付けてくださいませ R18の場合、語尾に※ついてます よろしくお願いしますm(_ _)m . 聴覚障害有なので文章おかしかったりするかもしれませんが心広く読んでくださると嬉しいです( ; ; ) コメントでここおかしいよ〜!って教えてくださるともっと嬉しいです ※家庭持ちなので更新遅めだったりするかもです。時間できた時に一気に更新します。 .

ヘリオトロープの花言葉~献身的な愛・もうあなたに愛される資格はありません~

花房ジュリー
BL
 美貌の囲碁棋士・白秋と恋に落ちる中也。障害だらけでも、中也は彼との愛を貫く自信を持っていた。二人には、子供の頃からの強い絆があったのだ。だが中也は、その決意を揺るがす恐ろしい因縁を知ることになる……?

愛の証明

月岡夜宵
BL
ルンガはある日魔女に遭遇し、その外見に嫉妬され、呪いを掛けられてしまう。自慢だった美貌は枯れ果て、見る影もない老人に。失意の彼。しかしそんな彼に世界は冷たい。家族にすら遠巻きにされるルンガ。 世界に置き去りのまま月日は流れて、諦めきったルンガに思わぬ出会いが。家族がルンガの世話係に選んだ青年、彼は、彼だけはルンガを突き放すことも、冷たく当たることもなかった。青年、エルメスに気づいたら恋をしてしまうルンガだったが――。 ※かつて別名で公開していた作品になります。旧題「 の前には障害なんて関係ない」

不安障害の僕と、無神経な彼

ほわいと
BL
仕事で上手くいかず不安障害を患った主人公と、とある無神経な男との出会いです。 気が付くと大きくなっていた気持ち。お互いじゃないとダメになっていく過程。

処理中です...