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姉は僕のことを天使と言うけれど、姉の方が天使 【スチュアートサイド】
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僕は契約愛人の子だ。
小さい時から母親にそう言われてきた。
母は、元々子爵家の令嬢で、いわゆる政略結婚で伯爵家子息に嫁いだそうだ。しかし伯爵子息は、婚姻後に浮気をすると、その相手に子供が出来たからと、あっさりと母を捨てたらしい。
母に瑕疵はひとつも無いのに、夫を繋ぎとめられない出戻り令嬢と、揶揄された母に新たな縁談が来るはずもなく、実家の子爵家で狭い思いをしていた時に、公爵家の後継の為の愛人契約の話が来たらしい。
母はその時、本妻から公爵様を奪い取ってやろうと思ったらしいよ。自分が夫に浮気された事もあって、愛し合っている夫婦への逆恨みもあったのかな。自分がされて辛い思いをしたのに同じ事をしようとするなんて。今なら母がどんなに浅ましかったのかわかるよ。
無事に僕が産まれた時に「無事に後継が生まれたのだから本妻にきちんと挨拶をしたい」と公爵様にお強請りをしたら、「契約に則った愛人が立場を弁えろ」と公爵様に言われてしまったんだって。これは僕が住んでた別邸の執事が教えてくれたんだ。
公爵様は本妻である奥様と、娘を愛しているのだと。愛人の入る隙はないのだと。
だから僕は、ずっとただの後継という役目だけの子供なんだろうな、と思っていた。母も、自分が愛人に過ぎず、公爵様からの愛がもらえないとわかった瞬間に僕への興味がなくなったしね。
それでも公爵様は定期的に僕の事を見に来てくれたし、何不自由ない暮らしはさせて貰っていたから、愛はなくても律儀で誠実な人なのだろう。母は気づいていないけれど、元婚家の伯爵家が没落したのは、公爵様がなにかしたからだ、とも言われているし、母の実家の子爵家も融資をしてもらったりで公爵様にはみんな感謝している。
母だけがずっと恨み言を言い続けていた。
母は普段僕の事など見向きもしない癖に、時々、本邸の義姉さんのすごい噂が聞こえてくる度にヒステリーを起こして僕に当たり散らしてきた。
なんで母は、与えられた環境を素直に享受出来なかったんだろうね。人を羨んでばかりでも仕方ないのに。
今ならそう思えるよ。だって僕は義姉上に会ったから。
そんな感じで日々が過ぎて、ついに僕が公爵家に引き取られることになった。
僕は自分が、公爵家にとって受け入れづらい存在だと分かっていた。挨拶をした時に、お義母様や義姉上の顔が赤くて震えていたからどれだけ怒りを堪えているのだろうとも思っていた。
義姉上は、噂で聞くよりももっと天使の様だった。髪は僕と同じ銀髪なのに、何故かフワフワで輝いて見えるし、目を見開いて赤く震えていたって、可愛さが損なわれることは無い。
こんなに素敵な母娘なのに、僕の存在はどれだけ嫌な思いをさせているのか、と悲しくなった。
「こんな僕を」
と言ったところで、そんなわけない、と大きい声で言われ、ビクッと体が震える。
そりゃ、受け入れられるわけはないよな、と思ったら次の言葉で唖然としてしまった。
元から家族?新しい母と姉が増えただけ?
そして実母を忘れる必要はないんだと言われたことで涙が止まらなくなった。
そんな僕を、お義母様が、抱きしめてくれた。母親にさえ、抱きしめられた事などなかったから、益々涙が止まらなくなる。
そんな僕を、義姉上が狡いといった。
義母を独占したせいなのかと、謝ろうとしたら、そうじゃなくて自分も僕を抱きしめたかった、だって。
僕は、愛人の子だというのに、こんなに幸せでいいのだろうか。
「よろしくね」
そうして両手を握って、にっこり笑ってくれたその義姉上の顔を見て僕は、誓ったのだ。
僕は立派な公爵になって、この義姉を支えようと。絶対に義姉上を幸せにしてみせる、と。
ただあまりにも義姉愛を拗らせすぎて、名前をスチュワートから、アリシアのあの字が付いたスチュアートに改名したいと父上に願い出た時は、流石に呆れられたけどね。
もちろん僕に劣らず娘バカの父上は喜んで直ぐに改名してくれたけど。
小さい時から母親にそう言われてきた。
母は、元々子爵家の令嬢で、いわゆる政略結婚で伯爵家子息に嫁いだそうだ。しかし伯爵子息は、婚姻後に浮気をすると、その相手に子供が出来たからと、あっさりと母を捨てたらしい。
母に瑕疵はひとつも無いのに、夫を繋ぎとめられない出戻り令嬢と、揶揄された母に新たな縁談が来るはずもなく、実家の子爵家で狭い思いをしていた時に、公爵家の後継の為の愛人契約の話が来たらしい。
母はその時、本妻から公爵様を奪い取ってやろうと思ったらしいよ。自分が夫に浮気された事もあって、愛し合っている夫婦への逆恨みもあったのかな。自分がされて辛い思いをしたのに同じ事をしようとするなんて。今なら母がどんなに浅ましかったのかわかるよ。
無事に僕が産まれた時に「無事に後継が生まれたのだから本妻にきちんと挨拶をしたい」と公爵様にお強請りをしたら、「契約に則った愛人が立場を弁えろ」と公爵様に言われてしまったんだって。これは僕が住んでた別邸の執事が教えてくれたんだ。
公爵様は本妻である奥様と、娘を愛しているのだと。愛人の入る隙はないのだと。
だから僕は、ずっとただの後継という役目だけの子供なんだろうな、と思っていた。母も、自分が愛人に過ぎず、公爵様からの愛がもらえないとわかった瞬間に僕への興味がなくなったしね。
それでも公爵様は定期的に僕の事を見に来てくれたし、何不自由ない暮らしはさせて貰っていたから、愛はなくても律儀で誠実な人なのだろう。母は気づいていないけれど、元婚家の伯爵家が没落したのは、公爵様がなにかしたからだ、とも言われているし、母の実家の子爵家も融資をしてもらったりで公爵様にはみんな感謝している。
母だけがずっと恨み言を言い続けていた。
母は普段僕の事など見向きもしない癖に、時々、本邸の義姉さんのすごい噂が聞こえてくる度にヒステリーを起こして僕に当たり散らしてきた。
なんで母は、与えられた環境を素直に享受出来なかったんだろうね。人を羨んでばかりでも仕方ないのに。
今ならそう思えるよ。だって僕は義姉上に会ったから。
そんな感じで日々が過ぎて、ついに僕が公爵家に引き取られることになった。
僕は自分が、公爵家にとって受け入れづらい存在だと分かっていた。挨拶をした時に、お義母様や義姉上の顔が赤くて震えていたからどれだけ怒りを堪えているのだろうとも思っていた。
義姉上は、噂で聞くよりももっと天使の様だった。髪は僕と同じ銀髪なのに、何故かフワフワで輝いて見えるし、目を見開いて赤く震えていたって、可愛さが損なわれることは無い。
こんなに素敵な母娘なのに、僕の存在はどれだけ嫌な思いをさせているのか、と悲しくなった。
「こんな僕を」
と言ったところで、そんなわけない、と大きい声で言われ、ビクッと体が震える。
そりゃ、受け入れられるわけはないよな、と思ったら次の言葉で唖然としてしまった。
元から家族?新しい母と姉が増えただけ?
そして実母を忘れる必要はないんだと言われたことで涙が止まらなくなった。
そんな僕を、お義母様が、抱きしめてくれた。母親にさえ、抱きしめられた事などなかったから、益々涙が止まらなくなる。
そんな僕を、義姉上が狡いといった。
義母を独占したせいなのかと、謝ろうとしたら、そうじゃなくて自分も僕を抱きしめたかった、だって。
僕は、愛人の子だというのに、こんなに幸せでいいのだろうか。
「よろしくね」
そうして両手を握って、にっこり笑ってくれたその義姉上の顔を見て僕は、誓ったのだ。
僕は立派な公爵になって、この義姉を支えようと。絶対に義姉上を幸せにしてみせる、と。
ただあまりにも義姉愛を拗らせすぎて、名前をスチュワートから、アリシアのあの字が付いたスチュアートに改名したいと父上に願い出た時は、流石に呆れられたけどね。
もちろん僕に劣らず娘バカの父上は喜んで直ぐに改名してくれたけど。
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