あっという間に読める物語集

人生は一本の道

　お母さんが亡くなってから、僕は前に進めなかった。そんなある日、久しぶりに夢を見た。そこは暗闇で何も見えなかった。周りをどれだけ見渡しても暗闇で僕は泣きそうになった。
　泣きそうになった僕は、ふと足下を見た。そこには、今さっきはなかった足跡があった。その足跡は、僕に近づいていくほど大きくなっていた。
僕はその足跡を見て、なんだろうと思った。僕はしゃがんで足跡に触れた。すると、自分の記憶が流れ込んできて慌てて手を離した。僕が呆然としていると、どこからか声がした。周りを見ても、声の主は見つからなかった。
「その足跡が何か気になるの。」
と声が聞こえる。僕は「はい。」とだけ答えた。
「その足跡は君がこれまで進んで来た道。人生そのものだよ。ある人が言った。人生は一本の道だと。だから君はその道を、これから長く続く道を歩けば良い。さあ、行きなさい。」
と言われた。
僕は足跡を見ると、足跡の続きがなかった。僕はどの方向に進んでいいか分からない。今一人でどうしたらいいのか分からない。僕は泣きそうになった。すると、
「何を泣きそうにしているの。」
と声が聞こえる。僕は
「一人でいるのが怖い。どの方向に進んでいいのかも分からない。」
と答えた。すると、
「道は、人生は、自分が決めることです。どの方向に進むかも一人でずっといるのかも、すべて自分で決めることです。ここで泣きそうになってる暇はない。道がないのなら作れば良い。人生は一本の道。君は君らしく、道を堂々と歩けば良い。」
その言葉を聞いて僕は、泣きそうになった顔を叩いて、前を向いた。そして、僕は大きく1歩を踏み出した。後ろから
「行きなさい。我が息子よ。母は、いつまでも見守っています。」
と亡くなった母の声が聞こえた。
そこで夢から覚めた。僕は小さな声で「お母さんありがとう。」と言った。僕は、前に進めるような気がした。