あっという間に読める物語集

写真立ての裏

　一枚の写真。そこには一匹の猫が写っていた。私が昔飼っていた猫、シュウだった。
　シュウは私が一人暮らしを始めたときに家に来た猫だった。私は、シュウのことが好きだった。家に帰ればずっと甘えてきて、猫だから気まぐれで甘えに来ないこともあった。どんなときでもシュウは私の隣にいた。
けど、猫と人間とは時間の流れが違った。
気付いたら、シュウは私の隣にいなくなっていた。
私はそれからずっと泣いて、部屋に閉じこもっていた。時間がたち、私は前を向いて生きていけるようになった。
　ある日、私はシュウの写真を見た。裏が気になり見るとそこには、足跡があった。猫の足跡が。私はシュウ以外に猫を飼っていない。なら、この足跡はいったい。ふと、写真の中を見るとシュウが微笑んでいるように見えた。ニャーと猫の鳴き声が聞こえた。鳴き声が聞こえたところを見ても猫はいなかった。気がつくと猫の足跡もなくなっていた。
「ありがとう、シュウ。」
私は、きっとシュウが会いに来てくれたのだと思った。猫は気まぐれだから。