26 / 35
だからロランダを乞う
しおりを挟む
その後、クプスは素直にロランダとオフィキス公爵に謝った。
まだまだ、見所はある。
クラウディア嬢がロランダに妃教育をねだったのには驚いた。
嬢にしてみれば、クプス付きの侍女とかに成れればよいと思っていたのではなかろうか。
ロランダの眉がピクリと一瞬動いたが、誰も気づかなかっただろう。微笑みを浮かべて、ロランダは、クラウディア嬢を説得にかかった。
クラウディア嬢の教育は、婚約破棄が正式に成立するまでという約束だったから、我も少しからかってみる。
「もう少し面倒を見てやってくれぬか、まだ正式な婚約破棄には至っておらぬ」と。
ロランダが上目遣いに我をチラリと見つめ、背筋を伸ばした。
諦めぬか。夢がかかっているからな。
ロランダはクラウディア嬢に自分と同じでなくてよいと再び告げ、彼女の長所を上げた。
孤児院や町で誰とでもすぐ話せる。それは自分にはない才能だと。
そして、
「外交など難しいことは、いずれ皇太子殿下と縁を結ばれる方にお任せなさいませ」
と、勝手に決めつけた。
おいおい……と思いながら、内心でニヤリとする。
「ロランダ、勝手に決めるな」
少し苦々しい声を出すと、ロランダが我を見て微笑む。
「恐れながら皇太子殿下。殿下の婚約者がまだお決まりでないのは、周りの国情を睨んでいらっしゃるからでございましょう?
皇太子殿下のご結婚そのものが外交なのですから、皇太子妃となる方は外交に長けた方にというのは、皇帝陛下のみならず臣下一同の願いでは?」
「まぁ、そうだが」
「ならば、外交は皇太子妃にお任せし、クラウディア様は才能をいかして慈善事業の先頭に立っていただければよいではありませんか。慈善事業も皇家の大切な仕事」
「解っている」
そうだ。だからロランダ、我はそなたを離さぬ。
皇太子としても、男としても。
我は顔がニヤつきそうなのを堪えるため、大きな溜め息をついた。
ロランダがしまったと思ったのか、目を伏せたな。
「ロランダ」
「はい」
「そなたのその才が我は惜しい」
皆の前で宣言をしておく。
これは、我の嘘偽りない思いだ。
「もったいないお言葉でございます」
「そなたが男であれば、一も二もなく我の側近にするのだがな」
ロランダは、ただ頭を下げた。
「えぇい、我の敗けだ! そなたの希望通り、ヤアの地の経営に精を出せ。良い品ができれば、約束だ。買い取ってやる」
「ありがたきお言葉。ロランダ=オフィキス、全身全霊を持ってヤアの地を豊かにし、国のお役に立てるようにいたします」
「頼んだぞ」
「はい」
ロランダが心からの笑顔で返事をする。
そうだ。その笑顔を我は見ていたいのだ。
まだまだ、見所はある。
クラウディア嬢がロランダに妃教育をねだったのには驚いた。
嬢にしてみれば、クプス付きの侍女とかに成れればよいと思っていたのではなかろうか。
ロランダの眉がピクリと一瞬動いたが、誰も気づかなかっただろう。微笑みを浮かべて、ロランダは、クラウディア嬢を説得にかかった。
クラウディア嬢の教育は、婚約破棄が正式に成立するまでという約束だったから、我も少しからかってみる。
「もう少し面倒を見てやってくれぬか、まだ正式な婚約破棄には至っておらぬ」と。
ロランダが上目遣いに我をチラリと見つめ、背筋を伸ばした。
諦めぬか。夢がかかっているからな。
ロランダはクラウディア嬢に自分と同じでなくてよいと再び告げ、彼女の長所を上げた。
孤児院や町で誰とでもすぐ話せる。それは自分にはない才能だと。
そして、
「外交など難しいことは、いずれ皇太子殿下と縁を結ばれる方にお任せなさいませ」
と、勝手に決めつけた。
おいおい……と思いながら、内心でニヤリとする。
「ロランダ、勝手に決めるな」
少し苦々しい声を出すと、ロランダが我を見て微笑む。
「恐れながら皇太子殿下。殿下の婚約者がまだお決まりでないのは、周りの国情を睨んでいらっしゃるからでございましょう?
皇太子殿下のご結婚そのものが外交なのですから、皇太子妃となる方は外交に長けた方にというのは、皇帝陛下のみならず臣下一同の願いでは?」
「まぁ、そうだが」
「ならば、外交は皇太子妃にお任せし、クラウディア様は才能をいかして慈善事業の先頭に立っていただければよいではありませんか。慈善事業も皇家の大切な仕事」
「解っている」
そうだ。だからロランダ、我はそなたを離さぬ。
皇太子としても、男としても。
我は顔がニヤつきそうなのを堪えるため、大きな溜め息をついた。
ロランダがしまったと思ったのか、目を伏せたな。
「ロランダ」
「はい」
「そなたのその才が我は惜しい」
皆の前で宣言をしておく。
これは、我の嘘偽りない思いだ。
「もったいないお言葉でございます」
「そなたが男であれば、一も二もなく我の側近にするのだがな」
ロランダは、ただ頭を下げた。
「えぇい、我の敗けだ! そなたの希望通り、ヤアの地の経営に精を出せ。良い品ができれば、約束だ。買い取ってやる」
「ありがたきお言葉。ロランダ=オフィキス、全身全霊を持ってヤアの地を豊かにし、国のお役に立てるようにいたします」
「頼んだぞ」
「はい」
ロランダが心からの笑顔で返事をする。
そうだ。その笑顔を我は見ていたいのだ。
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

この魔法はいつか解ける
石原こま
恋愛
「魔法が解けたのですね。」
幼い頃、王太子に魅了魔法をかけてしまい婚約者に選ばれたリリアーナ。
ついに真実の愛により、王子にかけた魔法が解ける時が訪れて・・・。
虐げられて育った少女が、魅了魔法の力を借りて幸せになるまでの物語です。
※小説家になろうのサイトでも公開しています。
アルファポリスさんにもアカウント作成してみました。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

【完結】婚約解消を言い渡された天使は、売れ残り辺境伯を落としたい
ユユ
恋愛
ミルクティー色の柔らかな髪
琥珀の大きな瞳
少し小柄ながらスタイル抜群。
微笑むだけで令息が頬を染め
見つめるだけで殿方が手を差し伸べる
パーティーではダンスのお誘いで列を成す。
学園では令嬢から距離を置かれ
茶会では夫人や令嬢から嫌味を言われ
パーティーでは背後に気を付ける。
そんな日々は私には憂鬱だった。
だけど建国記念パーティーで
運命の出会いを果たす。
* 作り話です
* 完結しています
* 暇つぶしにどうぞ

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。

【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。
まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」
そう言われたので、その通りにしたまでですが何か?
自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。
☆★
感想を下さった方ありがとうございますm(__)m
とても、嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる