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お二人にはバレていた

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「妻は本当に用意周到に準備していましたよ。一番手こずったのが国民相手だったね。
ローゼが女王になるのを楽しみにしていた人が多かったから」

「どうやったのですか?」

 お二人の話に、我もエドも身を乗り出す。

「ローゼは特別宰相という地位を作ってね、弟君おとうとぎみに完璧に引き継いだ。
暇を見つけては、僕と一緒に国内を回り、挨拶がてら、土地に合うと思われる作物を配ってあるいた。
ヤアが領地になって、時々いらっしゃるというのも、良かったらしい。
 僕が公爵家を継ぐまでは、二人でヤアをまとめあげなければならなかったからね」

「ヤアは元々、祖母の領地でした。王太后になって余生を楽しんでいたのです。
祖母は最初から私の味方で、背中を押してくれました。『後悔しないようになさい』と」

「後悔はないのですか?」

「全然ないと言えば嘘になりますわ。悩みもしましたし……。
 殿下なら解っていただけるでしょう? 次の王が国を捨てる苦しみを」

 我の愚問に、マダムは真摯に答えてくれた。
 国のために生きる定めを負った者は、国が自分自身の一部になる。
 それを捨てる怖さは並大抵ではない。それをやってのけたのか……。

 唇を噛み、体に力が入る我に、マダムが微笑み、さらに甘い微笑みを博士に向けた。

「でも、常に彼が寄り添ってくれました。オフィキス公爵夫人として礼儀を欠いても、スピース国が捨てきれないときも。
そして、周りに少しずつ味方を増やしてくれました」

 「ありがとう、ヴィー」そう告げて、マダムは博士の頬に軽くキスをする。

「君が僕を必要としてくれたからだよ」

 博士がマダムの手をとり、キスを落とす。

 ロランダは、ここに来る度、このようなご夫婦の姿を見ているのか……。
 自慢の祖父母だと言うはずだ。……が、自分とクプスの間をどう思っているんだ?

 グシャグシャする頭の中を落ち着けるために、我は足元に目を落とした。

「だから、今度は私の番。私はロランダを応援しています」

 え? マダム?

 驚いて頭を上げた我に、マダムは悠然と微笑む。

「賭けをしているのでしょう? ロランダと」

「……はい」

「オフィキス家の者は静観すると家庭内協定を結びました。ロランダの思うようにさせると」

「ロランダが勝ったら、ヤアは任せる、負けたら学園卒業と同時にロランダは皇宮へ行くことになっています」

 ロランダは、それを了解しているらしい。
 お二人ともそれ以上は語らない。なんとも居心地のいい空気を作られることか……。



 翌朝、エドとヤアの公爵家を辞す。

「「オットー、エド、会えて嬉しかった」」

 熱烈なハグで送ってくれたお二人を後にして。




++++++++
いつもご高覧いただきありがとうございます。
短く纏めるつもりが、オットー殿下がなかなか動いてくれず、苦戦しております。
一日お休みさせてください。
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