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やっと夜会が始まりましたわ
しおりを挟む「みな、長々と邪魔してすまなかった。聞いての通り、賭けは我の敗けだ」
嘆息混じりの短い声があちらこちらから上がります。
「しかし、そのお陰で、何年か先には国が豊かになっているかもしれぬ。そうなれば負けた金額などすぐに回収できよう。皆もそのときに遅れを取らぬよう、卒業後も励んでくれ」
うぉーという雄叫びと、拍手が沸き上がりました。
相変わらず見事におまとめになりますこと。
カリスマ性は、そろそろ皇帝陛下を追い抜くかもしれませんわ。
少し平凡でないと、女性は寄り付きにくいのですが。
麗々しい殿下の隣に、どのような方が立たれるか楽しみですわ。
皇太子殿下の合図で、楽団が優美な曲を演奏し始めます。
喉がカラカラですわ。
まずは飲み物を……。
「ローラ、改めて卒業おめでとう。お前はこれが好きだったろう?」
「お父様」
お父様が差し出したのは、フルーツがいくつも入ったノンアルコールのサングリア。
お父様のなかでは、私はまだまだ子どもね。
「ありがとうございます。お父様」
サングリアのグラスを受け取り、お父様の掲げたワイングラスに合わせて、少しグラスを挙げました。
サングリアのシュワッとした感じが、喉に染み渡ります。
「おいしい」
「ローラ、勝算はあるのかい? ヤアの地はだだっ広い草原が多いぞ?」
「存じておりますわ」
「レオでさえ、あの地には頭を悩ませておる」
「お兄様は頭が良すぎるのですわ」
サングリアをまた一口飲み、私は微笑みました。
レオポルド兄さまは、私の2つ上のお兄様。オフィキス公爵家の嫡男で、文武両道の自慢のお兄様。
既にお父様の右腕として、手腕を発揮しておられます。
ただ、ちょっと頭が固いのが難点。
「お前が男であれば、諸手を上げてヤアに遣わすものを」
「お父様、侮らないでくださいませ。女だから気づくこともあるのですわ」
「そうか。そうだな。儂の自慢の娘だ。信じるとしよう」
「失礼」
穏やかなお父様との話に割って入ってきたのは、赤いジャケットの方。
勲章って、重そうですわね。
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