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美穂の章
4、古書店
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近づくと、木の引き戸が残る昔風のたたずまいの古書店だった。
(おー、昔ながらの古本屋さん!)
そっと店内に入ると、喧噪が吸い取られるように静けさが包み混む。
どことなく埃っぽいような香りが懐かしさを感じさせ、心が落ち着いていった。
重厚な本棚が並ぶこの場所は、時間がゆっくりと流れているようで、人が追われることのない空間だった。
(うわぁ…よりどりみどり…)
木の本棚に分けられた本は多種多様で、見たこともないような本もある。
美術館の展示を見るように、私はゆっくりと背表紙を鑑賞していった。
(「思考の地平線:意識と現実の交錯」、「切なる誓い、時の果てに」、「古びた愛の手紙」…面白いなぁ…)
本たちの名前は興味深く、顔がにやけているのが、自分でもわかってしまう。
(ん…?『運命の書き換え方』?哲学書が混ざってる?)
一番端の膝より低い位置の棚にふと目がとまる。恋愛小説の中に混ざっていた哲学書のようなタイトルが気になって手に取り、目を通し始めた。
(え、なにこれ…)
立ち読みで軽く流そうを思っていたのに、ページをめくる手が止まらない。
愛と苦悩に満ちた登場人物がドラマでも観ているように、頭の中で生き生きと動く。
こんなに情熱的な恋愛小説を読んだのは久々で、この小説の世界にぐいぐいと引き込まれる感じが心地よかった。
(こんな恋愛ができたら、毎日が楽しいよね…)
少しの苦笑を漏らしながらも、目は文字から離れない。先が気になりすぎて、どんどん読み進めていた手がぴたりと止まった。
(え、…うそ…)
あっという間に読み進めた『運命の書き換え方』だったが、最後の1枚は最終章とタイトルがあるだけであとは白紙。
(なに?落丁?)
ページが落ちてるのかと思って、ページをめくるが、「最終章」と書かれた裏側の最後には「完」と印刷されている。
(落丁じゃない? 続きは? 結末はどうなるの? どうなったの? なんでこんなところで終わるの? そもそもなんでこんな本が出てるのよ!!)
一瞬のうちに読者から編集者の目に戻ってしまった。なぜか、悲しみと怒りが湧いてくる。
(宮元恵…こんなに面白い小説を書く人を知らなかったなんて…)
結局、その物語の面白さにはあらがえなかった。『運命の書き換え方』を持って、会計場所へ行く。
痩せ気味のおじいさんが、本を手に取りつつ、ぼそりとつぶやいた。
「おかしな本だよね。これ。でも、面白いでしょ?」
「ええ」
「なんか、つい読んじゃうんだよねぇ…」
「おじさんも?」
「はは、ジジイだけどね」
思ったより人懐っこい笑顔で店主が笑う。
「もし、またこの作家の本が入ったら取っておいてくださいますか?」
「そうだね。俺が読んだ後に取り置きしておくよ」
軽口をたたく店主から本を受け取り、軽く挨拶をして店を出る。久しぶりに他人のことを深く知りたいと思う自分に驚きながらも心が湧きたった。
「宮元恵…か…」
(おー、昔ながらの古本屋さん!)
そっと店内に入ると、喧噪が吸い取られるように静けさが包み混む。
どことなく埃っぽいような香りが懐かしさを感じさせ、心が落ち着いていった。
重厚な本棚が並ぶこの場所は、時間がゆっくりと流れているようで、人が追われることのない空間だった。
(うわぁ…よりどりみどり…)
木の本棚に分けられた本は多種多様で、見たこともないような本もある。
美術館の展示を見るように、私はゆっくりと背表紙を鑑賞していった。
(「思考の地平線:意識と現実の交錯」、「切なる誓い、時の果てに」、「古びた愛の手紙」…面白いなぁ…)
本たちの名前は興味深く、顔がにやけているのが、自分でもわかってしまう。
(ん…?『運命の書き換え方』?哲学書が混ざってる?)
一番端の膝より低い位置の棚にふと目がとまる。恋愛小説の中に混ざっていた哲学書のようなタイトルが気になって手に取り、目を通し始めた。
(え、なにこれ…)
立ち読みで軽く流そうを思っていたのに、ページをめくる手が止まらない。
愛と苦悩に満ちた登場人物がドラマでも観ているように、頭の中で生き生きと動く。
こんなに情熱的な恋愛小説を読んだのは久々で、この小説の世界にぐいぐいと引き込まれる感じが心地よかった。
(こんな恋愛ができたら、毎日が楽しいよね…)
少しの苦笑を漏らしながらも、目は文字から離れない。先が気になりすぎて、どんどん読み進めていた手がぴたりと止まった。
(え、…うそ…)
あっという間に読み進めた『運命の書き換え方』だったが、最後の1枚は最終章とタイトルがあるだけであとは白紙。
(なに?落丁?)
ページが落ちてるのかと思って、ページをめくるが、「最終章」と書かれた裏側の最後には「完」と印刷されている。
(落丁じゃない? 続きは? 結末はどうなるの? どうなったの? なんでこんなところで終わるの? そもそもなんでこんな本が出てるのよ!!)
一瞬のうちに読者から編集者の目に戻ってしまった。なぜか、悲しみと怒りが湧いてくる。
(宮元恵…こんなに面白い小説を書く人を知らなかったなんて…)
結局、その物語の面白さにはあらがえなかった。『運命の書き換え方』を持って、会計場所へ行く。
痩せ気味のおじいさんが、本を手に取りつつ、ぼそりとつぶやいた。
「おかしな本だよね。これ。でも、面白いでしょ?」
「ええ」
「なんか、つい読んじゃうんだよねぇ…」
「おじさんも?」
「はは、ジジイだけどね」
思ったより人懐っこい笑顔で店主が笑う。
「もし、またこの作家の本が入ったら取っておいてくださいますか?」
「そうだね。俺が読んだ後に取り置きしておくよ」
軽口をたたく店主から本を受け取り、軽く挨拶をして店を出る。久しぶりに他人のことを深く知りたいと思う自分に驚きながらも心が湧きたった。
「宮元恵…か…」
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