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しおりを挟むノエルが手を引かれやってきた神殿にはディサイヴから遥々嫁いで来た花嫁と竜王を祝おうとすでに多くのディオーン国民が集まっていた。
「花嫁のご到着です」
ウェズがそう声を掛けると神殿の前の人だかりがサッと二手に分かれ、神殿の中へと続く道ができる。
道の先、神殿の奥に待っているのは六人の竜王たち。
「さぁ、ノエル様。参りましょう」
その声にノエルは小さく頷くと、真っ直ぐとその道を進んでいく。
そうすると両側から見守っている国民たちは口々に「あの方が花嫁様?」「お顔は見れないけれど、とても美しい方に違いない」と言い期待の視線をノエルに向けている。
神殿の奥へと歩みを進め、あと数歩で竜王たちの前に着くというところで今までノエルをエスコートをしていたウェズは足を止め、小さく「ここからはお一人で、」と森に入る際に執事が言った言葉と同じ事をノエルに囁く。
(一体、俺の人生ってなんなんだろう、)
一歩一歩ゆっくりと進みながら俺はこれまでの人生をふと振り返ってみた。
望まれない出生、向けられるのは見下したような視線、幽閉されていたと思えば今度は竜王へ嫁げなどと。
俺が一体何をしたというのか。
初めこそ、この理不尽な扱いは己のせいなのだと思っていた。
でも母が死に、成長するにつれて後ろめたい気持ちは怒りへ、募る怒りはやがて恨みへと変わっていった。
父である国王へ、あの国へ、いつか復讐をするためだけに生きてきた俺は結局、道具のようにディオーンに送られた。
(きっと竜王たちも俺を道具としてしか見ていないはず…それなら俺もお前たちを使わせてもらう…)
もはやその気持ちだけが俺の生きる意味となっていた。
そんな事を思っているうちにあっという間に竜王たちの目前へと到着した。
「では、これより婚儀を開始する」
目前へとやってきたノエルを見つめたネスは声高にそう言い、ノエルのヴェールを上げた。
今までヴェールで顔を覆われていたノエルは少しの眩しさに目を細める。
そんなノエルを見ながら微笑んだラッシュは祭壇に置いてあったワインをグラスへと注いでいく。
花嫁、とは言われたものの婚儀の作法など何も知らないノエルは竜王たちのその姿をただただ眺めるしか出来なかったが、次の瞬間目を見張る事になる。
(血…?)
ワイングラスに注がれたワインに竜王たちはそれぞれの血を一滴ずつ垂らしていく。
「では、ノエルこれを」
「…」
竜王たちの血が混ぜられたワインを差し出されノエルは一瞬躊躇するが、意を決して受け取ったワインを呷る。
「…っ!?」
その瞬間ドクンと心臓が跳ね、一気に体温が上昇する。
(何…これ…?)
初めて口にするアルコールのせいだろうかと思うも何故だか竜王たちの血が何か作用しているのでは、とノエルは感じ取っていた。
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