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境界に溺れる魚
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するりするりと魚が泳ぐ。
捕らえんとする網の真横をすり抜けて、上がる吐息に拍車を掛けて。
「美しい、美しい」
囚わぬ魚を称賛し、網はまだまだ追いかける。
追いかけることこそ本懐とばかりに、ただただひたすら追い回す。
魚は息も絶え絶えに、それでもするりするりと泳いで逃げた。
くるりくるりと回って逃げた。
「美しい、美しい」
終わりは果てなく、限りを見せず。
されど止まらぬ息の根は、ひとときの気まぐれが与える安らぎ故に。
白波が強く押し寄せてきて、魚は網から遠ざかる。
あとに残るは荒波ばかり。
ゆらゆら揺れる水中で、魚は一筋の銀を引いた。
私は魚。
溺れる魚。
呼吸を奪う境界で、海も知らずに泳ぐ魚。
美しいとささやく網は、時折私を優しく撫でる。
こちらへおいでと優しく撫でる。
けれど私は恐ろしい。
追いかけてくるその網は、私の呼吸を奪い去る。
美しい、美しいとささやきながら。
控えているのはガラス鉢。
狭くて苦しい金魚鉢。
私は魚。
境界に捧げられた、海を知らない魚。
網から逃れ、溺れ続ける魚。
戻れもせず、進めもしない。
進めもせず、終われもしない。
どれだけ泳いでも。
どれだけ逃げ回っても。
どれだけ呼吸を奪われても。
息の根だけは、奪われない。
捕らえんとする網の真横をすり抜けて、上がる吐息に拍車を掛けて。
「美しい、美しい」
囚わぬ魚を称賛し、網はまだまだ追いかける。
追いかけることこそ本懐とばかりに、ただただひたすら追い回す。
魚は息も絶え絶えに、それでもするりするりと泳いで逃げた。
くるりくるりと回って逃げた。
「美しい、美しい」
終わりは果てなく、限りを見せず。
されど止まらぬ息の根は、ひとときの気まぐれが与える安らぎ故に。
白波が強く押し寄せてきて、魚は網から遠ざかる。
あとに残るは荒波ばかり。
ゆらゆら揺れる水中で、魚は一筋の銀を引いた。
私は魚。
溺れる魚。
呼吸を奪う境界で、海も知らずに泳ぐ魚。
美しいとささやく網は、時折私を優しく撫でる。
こちらへおいでと優しく撫でる。
けれど私は恐ろしい。
追いかけてくるその網は、私の呼吸を奪い去る。
美しい、美しいとささやきながら。
控えているのはガラス鉢。
狭くて苦しい金魚鉢。
私は魚。
境界に捧げられた、海を知らない魚。
網から逃れ、溺れ続ける魚。
戻れもせず、進めもしない。
進めもせず、終われもしない。
どれだけ泳いでも。
どれだけ逃げ回っても。
どれだけ呼吸を奪われても。
息の根だけは、奪われない。
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