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ついかっとなってしまった貴族を、ちょうどいい下僕にしたらしい
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悲鳴を上げる貴族らしい男と、そのそばでこちら……リセを見て従者らしき男が震えている。
貴族らしいと思ったのは服装がやけに綺麗で高級な飾りをつけていて装備も新品のようだったからだ。
つまり、場違い感が凄い。
普段ダンジョンなどに潜る冒険者に見られるような泥臭さはまるでない。
リセやクレアもお姫様ではあるが、普通の一般人のふりをするためだろうが、既製品などを着て目立たないようにしている。
だが、彼にはそれが無い。
自分が誰かを鼓舞するかのような服装をしている。
そして態度や先ほどの会話からもそれが分かる。
さらに付け加えるならかかわりあいたくない人種ではあるのだが、そんな人物がリセを見て悲鳴を上げている。
なので当然俺は、
「リセ、何かやったのか?」
「さあ。私は無実の罪で糾弾された、繊細で可哀想で可憐な悪役令嬢なので」
と微笑みながらリセは答えた。
この口調からすると絶対に何かやったよなと思ってクレアの方を見ると、知らないらしく首を振っている。
するとそこで貴族らしい人物が、
「嘘をつけ! このか弱い美少女の皮をかぶったゴリラが!」
と叫んでいる。
どうやらこの世界にゴリラがいるようだ、ではなくて、どういう事だろう? 確かに以前よりも握力などが出たらしいとは聞いたが……と思っているとリセが、
「そんな風に言われては私、傷ついてしまいます。酷いですわ」
「嘘つけ! そんな繊細な令嬢が俺の頭を掴んで宙に持ち上げるか!?」
「「「ぶふっ」」」
俺とクレア、マナが思わず噴き出した。
身長は俺やリセと同じくらいだが、そんなリセに頭を掴まれて持ち上げられたらしい。
凄い光景だと俺は思いながらリセに、
「何でそんな事をしたんだ?」
「ついかっとなって」
「そうか~」
どうやらつい頭に来てやってしまったらしい。
しかしその行動
「少年誌に出てくる名前も覚えてもらえ無さそうなモブ悪役がやりそうだが、は! だから悪役令嬢なのか?」
「違うわよ。繊細で可憐なポンコツ天然ボケドジっ娘が、いわれのない罪を糾弾されて免罪を吹っ掛けられて悪者にされるから、【悪役】令嬢なのよ。本物の悪ではないから、悪役。……でもそうなった場合のよくある展開は【復讐】だと思わない?」
そこでリセがそう言いながら、にた~、と笑った。
あまりにも邪悪で楽しそうな微笑みに俺が引いていると、それは目の前にいる貴族も同じだったようで、
「な、なんだ、俺は悪くないぞ」
「嘘ね。何もせずに、不利になった相手に正しいか正しくないかも判断できない頭の癖に、偉そうに私が【悪い】と説教かまして……ふふ、【恨まれない】と本気で思っているの?」
やけに優しい声音で囁くように、楽しそうに告げるリセ。
貴族はガタガタ震えている。
従者の人もガタガタ震えている。
そこでリセがさらに笑みを深めて、
「でも私は心が広いから許してあげてもいいわよ。ある条件が飲めるなら」
「ほ、本当か!」
「ええ。今国や貴族の方で何が起こっているのか情報を集めて、私たちに報告して欲しいの」
「そ、それでいいなら」
「でも他の人に話してはダメ。私に話している、と他の人に伝えても駄目。そして定期的にこの町に来ること。私が聞いた事全てに応える事」
「う、うう、分かった」
そう答えながらさっとその貴族は顔を背ける。
表情からすればそれを守る気はなさそうだ。だが、
「貴方が分かったといったから決まりね。もっとも断っても強制したけれど」
「お、俺に守る義理なんて……何でステータスが出ているんだ?」
そこでその貴族ラバート・ディレントのステータスに幾つもの条件が付加される。
それらはリセが言ったものだ。
その貴族、ラバートは、
「い、いったいお前は【誰】なんだ?」
「私? 私は聖女のクレアを守りたいと願ったリセに呼ばれた異世界人よ。因みに今回の件は魔王が関わっているから、上手く立ち回ってね」
「え?」
「ついでだからそっちの従者君にもいくつか制限つけさせてもらいますね」
ラバートの言葉を無視して従者のサイという人物に何かを書き込んでいく。
そしてそれらを終えてから、
「これで良し。お前はこれから私の【下僕】よ」
「よ、よくない、いったいどういう事なんだ!」
「うるさいわね」
そう言ってリセが何かをしようとした所でクレアが飛び出し、
「今は何も聞かず、私のお手伝いだと思って受け入れていただけませんか?」
「クレア様……」
「必ずすべてをお話しできる時が来るかと思います。その時まで私のお手伝いをしていただけませんか?」
クレアがそうお願いすると、ラバートはそれ以上何も言えなくなったらしく、頷いた。
心なしか顔が赤いような気がする。
やっぱり聖女となると心酔する貴族がいたりするんだろうかと俺は思ったりした。
そして二人が去った後リセに、
「助かったわ」
「ええ、私も情報が欲しいし、ね。それでイベント関係は大丈夫なの?」
「あの二人から次に情報をもらう、その約束を取り付けるだけのイベントだからね。こちらのほしい情報もついでに流してもらおうと思っただけ。さて、これでイベントはおしまい。後は変えるだけかしら」
要はすんだとリセが言うのを聞きながら俺は、
「さっきの魔王の配下の奴が入り口辺りと町の中の転移場所に奇襲を仕掛ける奴らを配備したって言ってただろう? そいつらを倒さないといけない。どれくらいの人数がいるだろうな……その敵の人数」
「行ってみてクレアの魔法に引っ掛かればそれが全てでしょう?」
と答えるリセに、敵も攻撃するために魔法を使うのだから感じ取れるかと俺は納得したのだった。
貴族らしいと思ったのは服装がやけに綺麗で高級な飾りをつけていて装備も新品のようだったからだ。
つまり、場違い感が凄い。
普段ダンジョンなどに潜る冒険者に見られるような泥臭さはまるでない。
リセやクレアもお姫様ではあるが、普通の一般人のふりをするためだろうが、既製品などを着て目立たないようにしている。
だが、彼にはそれが無い。
自分が誰かを鼓舞するかのような服装をしている。
そして態度や先ほどの会話からもそれが分かる。
さらに付け加えるならかかわりあいたくない人種ではあるのだが、そんな人物がリセを見て悲鳴を上げている。
なので当然俺は、
「リセ、何かやったのか?」
「さあ。私は無実の罪で糾弾された、繊細で可哀想で可憐な悪役令嬢なので」
と微笑みながらリセは答えた。
この口調からすると絶対に何かやったよなと思ってクレアの方を見ると、知らないらしく首を振っている。
するとそこで貴族らしい人物が、
「嘘をつけ! このか弱い美少女の皮をかぶったゴリラが!」
と叫んでいる。
どうやらこの世界にゴリラがいるようだ、ではなくて、どういう事だろう? 確かに以前よりも握力などが出たらしいとは聞いたが……と思っているとリセが、
「そんな風に言われては私、傷ついてしまいます。酷いですわ」
「嘘つけ! そんな繊細な令嬢が俺の頭を掴んで宙に持ち上げるか!?」
「「「ぶふっ」」」
俺とクレア、マナが思わず噴き出した。
身長は俺やリセと同じくらいだが、そんなリセに頭を掴まれて持ち上げられたらしい。
凄い光景だと俺は思いながらリセに、
「何でそんな事をしたんだ?」
「ついかっとなって」
「そうか~」
どうやらつい頭に来てやってしまったらしい。
しかしその行動
「少年誌に出てくる名前も覚えてもらえ無さそうなモブ悪役がやりそうだが、は! だから悪役令嬢なのか?」
「違うわよ。繊細で可憐なポンコツ天然ボケドジっ娘が、いわれのない罪を糾弾されて免罪を吹っ掛けられて悪者にされるから、【悪役】令嬢なのよ。本物の悪ではないから、悪役。……でもそうなった場合のよくある展開は【復讐】だと思わない?」
そこでリセがそう言いながら、にた~、と笑った。
あまりにも邪悪で楽しそうな微笑みに俺が引いていると、それは目の前にいる貴族も同じだったようで、
「な、なんだ、俺は悪くないぞ」
「嘘ね。何もせずに、不利になった相手に正しいか正しくないかも判断できない頭の癖に、偉そうに私が【悪い】と説教かまして……ふふ、【恨まれない】と本気で思っているの?」
やけに優しい声音で囁くように、楽しそうに告げるリセ。
貴族はガタガタ震えている。
従者の人もガタガタ震えている。
そこでリセがさらに笑みを深めて、
「でも私は心が広いから許してあげてもいいわよ。ある条件が飲めるなら」
「ほ、本当か!」
「ええ。今国や貴族の方で何が起こっているのか情報を集めて、私たちに報告して欲しいの」
「そ、それでいいなら」
「でも他の人に話してはダメ。私に話している、と他の人に伝えても駄目。そして定期的にこの町に来ること。私が聞いた事全てに応える事」
「う、うう、分かった」
そう答えながらさっとその貴族は顔を背ける。
表情からすればそれを守る気はなさそうだ。だが、
「貴方が分かったといったから決まりね。もっとも断っても強制したけれど」
「お、俺に守る義理なんて……何でステータスが出ているんだ?」
そこでその貴族ラバート・ディレントのステータスに幾つもの条件が付加される。
それらはリセが言ったものだ。
その貴族、ラバートは、
「い、いったいお前は【誰】なんだ?」
「私? 私は聖女のクレアを守りたいと願ったリセに呼ばれた異世界人よ。因みに今回の件は魔王が関わっているから、上手く立ち回ってね」
「え?」
「ついでだからそっちの従者君にもいくつか制限つけさせてもらいますね」
ラバートの言葉を無視して従者のサイという人物に何かを書き込んでいく。
そしてそれらを終えてから、
「これで良し。お前はこれから私の【下僕】よ」
「よ、よくない、いったいどういう事なんだ!」
「うるさいわね」
そう言ってリセが何かをしようとした所でクレアが飛び出し、
「今は何も聞かず、私のお手伝いだと思って受け入れていただけませんか?」
「クレア様……」
「必ずすべてをお話しできる時が来るかと思います。その時まで私のお手伝いをしていただけませんか?」
クレアがそうお願いすると、ラバートはそれ以上何も言えなくなったらしく、頷いた。
心なしか顔が赤いような気がする。
やっぱり聖女となると心酔する貴族がいたりするんだろうかと俺は思ったりした。
そして二人が去った後リセに、
「助かったわ」
「ええ、私も情報が欲しいし、ね。それでイベント関係は大丈夫なの?」
「あの二人から次に情報をもらう、その約束を取り付けるだけのイベントだからね。こちらのほしい情報もついでに流してもらおうと思っただけ。さて、これでイベントはおしまい。後は変えるだけかしら」
要はすんだとリセが言うのを聞きながら俺は、
「さっきの魔王の配下の奴が入り口辺りと町の中の転移場所に奇襲を仕掛ける奴らを配備したって言ってただろう? そいつらを倒さないといけない。どれくらいの人数がいるだろうな……その敵の人数」
「行ってみてクレアの魔法に引っ掛かればそれが全てでしょう?」
と答えるリセに、敵も攻撃するために魔法を使うのだから感じ取れるかと俺は納得したのだった。
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