人形は瞼をとじて夢を見る

秋赤音

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混沌な日常

私だけの月

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二人で星を見ていると体が冷えていることに気がつく。
何でもないような顔のルナは、
私の体温に思うところがあるのか、すぐに転移した。

「雷。まだ寂しい?」

「いいえ。ルナがいるから、寂しくない」

私の返事に不服らしいルナは、何かを考えている。
星を見て過去を思い出し、
感傷に傾いてたのかもしれない。
訂正しようとするが、無理だった。

「過去はどうにもできないけれど、
今は、これからは変えられる」

そう、私をベッドへ押し倒すルナは言った。

「それで、どうして、こうなるんです?」

「お父様がくれた本に…これです」

どこからか現れた本は、
性の指南書に似ているようで違う内容の御伽噺。
しかも、子作りの方向性が強い。
最後まで読むと、文字が浮かんできた。

アルヴァの後継者、いえ。孫はまだですか

その言葉はご神託かもしれない。
ルナにも何か残されていたのならば。

「ルナ。最後のページには何が書いてありましたか?」

「え?言わないと…いけない?」

急に恥ずかしそうに頬を染めるルナ。
そんなに動揺するような何かなんだろうか。

「無理強いはしないが…教えてくれると助かる」

「お父様がね、
『意中の男性が落ち込んでいたらこのように。きっと元気になりますよ』と…。
雷もそうなの?」

不安そうに聞いてくるルナは、本を真似るように私の肌を撫でている。
惚れている相手に触れられて気を悪くする者は、あまりいないだろう。
確かに元気にはなる。色々と。
傍にいられるだけでも幸せなのに、
好きな相手に煽られれば欲が出る。
生前には考えたこともある。
以前は一人で慰めていた熱に、今、ルナの指が触れている。
見た目に強い刺激に射精してしまいそうだ。

「間違いでは、ない」

「ぁ…本当、嬉しい。ええと…次は」

硬さの増した自身をみて口元をほころばせる。
そして、ルナは自ら秘部へ手を伸ばす。

「雷。見て?本当に濡れている」

音を立てて見せつけてくる秘部はわずかに濡れていた。
早くいれたい衝動を抑えて、体を起こす。

「触れてもいいか?」

「雷なら、何をしてもいいわ」

私の手をとったルナは、私の指先を秘部へ受け入れた。
するりと入った指から伝わるのはナカの熱さと締めつけ。
そのまま何度かイかせると、
我慢できなくなったルナに再び押し倒されて自身がナカに包まれる。

「ルナ。避妊は…」

「ひにん?性行為というのは、本来、こう…でしょう?」

わざと水音をさせながら腰を揺らすルナは、
私の上で見せつけるように結合部からわざと音をたてる。
何かを破ったような感覚と、
わずかだが苦しそうに寄せられた眉に焦る。

「それれ、そうだが。
初めて、ならゆっくりのほうがいいのでは?」

「そういうものなの?
本には、初めてでも痛くないと…」

何かに耐えるような唸りが雑じる声は、戸惑いが見える。
本は、おそらく物語の都合で何かが歪められている部分もあるだろう。
場合によります、確率だと…なんて、
曖昧なもののおかげで間違いではないと成り立っているような描写。
鵜呑みにするには危うい何かだ。
男性向けか、それよりも過激な気すらしてくる内容を思い出し、
真似られる可能性に一喜一憂した。

「あの本は、あくまで物語だ。
子を宿すためでないなら、防ぐ道具もある。
本の全てを鵜呑みにしないでほしい。
私は、こうして触れ合えるだけで十分に心は満たされている」

「そう、なのね。
私は、どうしたらいい?」

「傍にいてくれるだけでいい。
肉体的な快楽を否定はしないが、今は」

上半身を起こして戸惑うルナを抱きしめる。
ルナという存在に、
背に添えられたルナの手から伝わる温かさに心安らぐ。

「…緊張している?」

「それなりに…ルナだから、な」

この器にも走る心拍はあるらしい。
心地よさそうに聞いているルナは、私を見上げて微笑んだ。

「私も…同じね」

照れたような笑みを浮かべるルナの頬へ口づける。
離れたあと、ルナは嬉しそうに目を細める。
じっと見つめていると、ふいに唇が重ねられた。
ルナの舌がさらに深いものを求め、応じれば優しく絡み合う。
心地よいそれと同時に締まるナカに包まれ、思わず出しそうになる。
寸前で堪えるが、それに気づいたのか、ルナの目は微笑む。
わざと促すような腰つきと貪るような口づけに耐えられなかった自身は、
欲をナカへ吐き出した。
全てを逃さないような強い締めつけは、さらに欲しがるように止まらない。
甘い誘惑に、しっかりと自身は反応する。

「ル、ナ…っ、だめ、だ…っ」

「いい、から…ぁ、このまま…雷を慰め、させて…?」

快楽に溺れ始めたような熱く蕩ける眼差しに射抜かれ、
理性は眠る。
思っていても出ないようにしていた欲望が溢れてくる。

「無理しないで、ほしい」

「慣れてきたから、平気よ」

微笑むルナから与えられた口づけを始まりに、私は快楽へ堕ちる。
体勢を変えながら欲望を何度か吐き出すと、
組み敷いたルナは瞼を閉じた。
規則的な寝息が聞こえ始めたのを確認すると、落ち着いた自身を抜いた。
起こさないようにルナの身を清めると、毛布をかける。
手早く汗を流し寝室へ戻ると、身を起こして私を探している目と合った。

「雷」

「ルナ。起こしたか?」

「いいえ。気配が遠くなったから」

傍へ行くとベッドへ引かれ、抱きしめられる。
そして、そのまま横になったルナ。

「今度は一緒に連れて行ってね」

「わかった」

返事に安堵したのか、再び眠り始める。
身動きをとることを諦め、目を閉じた。
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