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失う乙女は花と咲く
4.変わる関係性
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私の上司は、普段は穏やかだがリィトが関わると怖い。
ヘィルは上司で幼なじみ。
いつからかリィトに夢中になっていた。
そして、子供でもできることでずっと、一緒に見守ってきた。
そして、学舎で遠くから見ていたヘィルが、
ついにリィトの隣に並んだ。
ゆっくりと変わっていくヘィルとリィト。
何があっても、必ず傍にいると、
改めて心に決めた。
「ラン。最近、私、おかしい。
喉が渇く。原因、わかる?」
放課後。クレープを食べに行った後、
私の部屋で聞いてほしいことがあると言うリィト。
その真剣な声は、私に聞いてくる。
他人とは違う態度に甘えられていると思っている。
頼ってもらえるのは嬉しい。
が、おそらく、これはヘィル案件だと思う。
が、そうは言えない。
あくまで、自発的にリィトがヘィルに相談するようにしなければ…。
「最近、変わったことはある?」
「あ…る、かもしれない」
考えを巡らせた様子のリィトは、何か思い至ったらしい。
詳しくは言えないようだが。
「だったら、その変わったことに関わる人なら分かるかも?
少なくとも、原因に近づけそうかも」
「確かに…ありがとう。
ランも、困ったことがあれば聞く。
友達、だから」
柔らかな声と、少し、ほんの少しだが笑った気がしたリィト。
作られた表情ではない気がしたそれに、
固い表情にも変化が現れている確信をもつ。
私は、リィトの心が安らげる場所になりたいと、
さらに強く思った。
「うん!友達だもの。
これからも困ったことがあれば話し合おうね」
「うん」
話し疲れたのか、眠そうにするリィト。
部屋まで送ると、扉の前にはリンとヘィルがいた。
「リン。ヘィル」
声をかけるのと同時に、ヘィルの足音が近づいてくる。
「ラン。リィト、眠そうだな」
「俺が預かる」
隣で声がしたと思ったら、すでにリィトはヘィルの腕の中。
限界だったのか、リィトは眠り始めていた。
元々、あまり活動的出はなかったか、
ヘィルが来てからは少し元気そうだった気がする。
実際、放課後、リィトと一緒にいる時間が増えた。
「二人とも、俺の部屋へ来てください」
リィトを抱き上げると、ヘィルは部屋へ転移魔法で移動した。
「ヘィル。魔力が…やはり?」
「その通り。
純血を守れば、家の方は問題ないそうだから」
ヘィルは、リィトを大切そうにゆっくりとベッドへ寝かせて毛布をかけた。
傍は離れないらしく、ベッドに腰かけるヘィル。
ふいに見えた二人の首筋には、
真新しい噛み痕がある。
「人間として育てられた悪魔、だったの?
さっき、リィトが困った様子だったから」
「本人は魔力が少し多いだけ、だと思っていた」
表面にいるヘィルは静かにうなずいて、苦く笑ってそう言った。
隣にいるリンは、顔を青くした。
「これが、少し?親は、何考えているんだ」
リンがそう思う理由も分かる。
無防備なリィトからは、惜しむことなく滲む膨大な魔力。
おそらく、これが本来の姿だろう。
食事する様子を思い出す。
飢えを満たすことで、やっと体が正常に機能したようにも思う。
「そういう家系らしい。
始まりの先祖が子供へ元悪魔だと伝えなかった結果が、これです」
「そんな…今までは、これをどうしていたのか不思議です。
でも、ヘィルは心当たりがあるんですね」
「婚約者だから、それなりに。
身辺を探っていたのが相手に伝わって、
それからはリィトの母親から聞いていました」
これが、少年探偵をやめた理由だろう。
遊ぶ時間も使っていたくらい必死だったから、
急にやめた当時は違和感があった。
「そうでしたか。
俺たちはこれから、どうすればいいですか?」
「今まで通りに…
あと、リィトは二人と友人関係を築きたいようですね。
でも、無理強いはしません」
「わかりました。
俺も、リィトと友人になりたいと思っていました。
一方的だと考えていたので…嬉しいです」
リンはそう、嬉しそうに笑った。
ヘィルは驚いている。
「ヘィル。私もです。
むしろ、私たちだから、友達になれると思っています」
私の言葉に、ヘィルは息を殺して喉で笑う。
「あー…驚いた。予想外だけど、俺は嬉しい。
これからも頼む」
「「はい」」
「ん…ラン?いるの?」
寝ぼけた声のリィトは、視線をさ迷わせている。
私は、すぐに駆け寄った。
「リィト。起きた?」
「ラン。お腹すいた。ヘィルの部屋、なんで?」
何かを思案する様子のリィトの手を握ったDは、
優しい笑みを浮かべている。
「リィト。よければ、四人で夕食にしますか?」
「ヘィル。いいの?」
私に気遣うような視線を向けたリィト。
おそらく、"恋人同士は二人きりで食事をする"
ということを知っているから。
「いいんです。ね、二人とも?」
「「はい」」
すると、リィトは何か思いついたらしい。
ゆっくりと、起きるとヘィルをじっと見つめている。
私は離れようとするが、
リィトが私の手を掴む。
そして、じっと見る。
「私、ランに食事を作る。
お話聞いてくれたお礼する。
ヘィル、いい?」
「では、俺も一緒に。
従者を労うのは上司の仕事です。
ラン、いいですね?」
「はい。ありがとうございます」
安心したようにリィトは私の手を離す。
リンの隣に戻ると、
ヘィルは私たちから隠すようにリィトへさらに近づく。
「お仕事?なら、私も仕事。
監視してもらっているから」
「監視のお礼な…俺の従者だと分かって安心したか?」
「うん。二人は、私に優しい。
ずっと、お礼がしたかった」
「気にしていたのか。
だったら、誰からの監視か名乗らせるんだったな。
実家のと判断つかなかったんだろう」
「うん。お父さん、従者にお礼したら怒る」
目の前で、遠慮なくリィトの頬に口づけるヘィル。
それを恥ずかしそうに受け入れるリィト。
見つめ合う二人は、とても幸せそうだ。
そして、
それが普通だと錯覚するくらい自然にリィトを抱き上げたヘィル。
リィトは抗うが、譲らない気配のヘィルに諦めたらしい。
首に腕を回した。
「何を作る?」
「冷蔵庫にあるもので」
「お酒はいるか?」
「今日は、いらない」
「そうか」
私たちのよこを通り台所へ入ると、
いつの間にか置いてある椅子へリィトをゆっくりおろす。
美味しそうな香りが漂い、手際のいい音が止むと、
リィトが本を読む私たちを呼びに来た。
「食事の時間、です」
「「はい」」
「ラン、リン。いつも、ありがとう」
リィトは儚い笑みを浮かべて、そう言った。
「リィト。私こそ、ありがとうだよ。
これからも一緒にいようね!
ご飯の美味しいお店行こう?」
「俺も。
ランと一緒に、これからは遠慮なく食事にも誘うからな」
「その食事、俺も誘ってもらえるんですよね?」
驚いている雰囲気のリィトを背中から包むヘィル。
その笑みは、少しだけ怖い。
「「はい。当然です」」
迷わず了承の返事をすると、
リィトは何かを思い出したらしい。
そして、なぜか私を見ている。
「ダブルデート?」
「うん?そうだね。リィト、初めて?」
「うん。楽しみにしてる」
デート、と言う言葉に機嫌をよくしたらしいヘィル。
リィトの髪を撫でると、
そのままリィトの手をひいて香りのする方へ連れていった。
出された食事はとても美味しかった。
そして、平日の夕食は一緒に食べることになり、
リィトは楽しそうな様子だった。
それに満足そうなヘィルは、
片付けをしているリィトに見えないよう、
何かが入っている封筒をリンに渡した。
ヘィルの部屋を出て、リンの部屋に移動すると、
ソファーに座り、封筒の中身を見る。
日付指定の高級な昼食の食事券には、宿と足湯券もついていた。
「足湯?」
「ゆっくりしてこい、ってことだと思う」
それだけではないと、なんとなく確信があった。
"にぎやかなデート"ではない感じに、何かある気がする。
「ラン。さっき、ダブルデート、って言っただろう」
ため息をつくリンは、
呆れた顔をしながらも、どこか楽しそう。
その様子に、安心する。
思惑があるとはいえ、
リンと一緒にいられる時間が公認で増えることに、
内心で嬉しく思っているから。
「それもあるけど…私たちがデートをする姿を見せて、
リィトに学ばせたい可能性は?」
「あ?あー…うん。あるかも」
リンがそう言った瞬間、私の視界が回り、思わず目を閉じる。
そして、目をあけると見えるのは、
天井とリンの情欲と戸惑いがみえる顔。
「リン?」
「雰囲気って、出ると思う」
「うん」
当たり前のことを言うリンを見ていると、
首筋を甘く噛まれた。
血が滲んでいる気がする。
離れようとするリンの頭を固定して、そのまま吸うように促す。
「上司公認かも、って思ったら」
「私も……っっ」
同じだよ、と言おうとしたが無理だった。
牙が肌に食い入る感覚と共に感じる魔力で体が熱い。
私も我慢をやめ、リンの肌へ牙を立てた。
血を吸い、吸われ、
心地よい温度に包まれているとリンが動いた。
「お手本、見せないと…ね?」
互いの魔力をまといながら一緒にいるのも、
お手本になるのだろうか。
そう言いながら、布越しに下肢へ押しつけられる昂ぶり。
ナカはすでに受け入れる用意ができているのが、感覚で分かる。
言葉にするのももどかしく、目の前にある肌へ口づけた。
「お手本になる?」
「なる。
たった一人だけを愛するのが普通だと、
行動で示せるだろう?」
リンは目の前で服を脱いだ。
体つきに見惚れていると、
いつの間にか私の服も脱がされていた。
「過保護なくらいの愛情も?」
「そうだ。
今から見慣れておいた方がいいと、思う」
少しだけ苦い表情を浮かべたリン。
おそらく、同性だから知る何かを知っているのだろう。
愛も束縛も深くなることは予想できるが、
私にはそれ以上想像もできない。
「そうね」
「だろう。俺も、同じだが…な」
「え?どういう…っ、こと…っっ、な、ぁ…ぁんっ」
浅いところをゆっくりと擦られ、もどかしさに思わず腰が動いた。
すると、少しずつ深くなっていく律動に体の芯が震えた。
「こう、いう…こと……っ」
「あっ、ああっ、んっ、…っぁ、わかんな…ぁっ、いって…っるの、待って…っ」
入り進んできたと思ったら、
奥を激しく揺さぶる律動で、あっという間に意識が霞む。
次々に波が押し寄せてくるような快楽に、眩暈がした。
「ラン。俺だけを、見て。俺だけを感じて」
「ん、んっ、リン、だけだから、ぁ…っ、あっ、また、イ、く…っっ」
「俺、も…っ、…ぁ…っ、は…っ、…っ」
注がれる熱を受け入れると、
感覚が過敏になっているナカはまたイった。
疼きがとまらない体は、さらに続きを求めている。
「リン、きもち、い…もっと…っ」
「俺も、まだ、ランがほしい」
「んっ、あげる、リンにあげる、から…ぁっ、ん、は…っ、あ、あっ」
うつ伏せにされ、腰にリンの手が添えられた。
再び入ってきたリンの昂りはさらに熱を増していて、
さっきよりも深く私を貫く。
そして、背中に覆いかぶさり、私の首筋へ口づけた後、
リンの牙が一瞬肌にあたった。
「ラン…愛している」
「リン?…ぁ、今、吸われたらぁ…っ、だ、め…っ」
「後で、俺のもあげるからな」
「や、め…っ、おかしくな、ぁ、あああっ」
血を吸われた瞬間、あまりの気持ちよさに意識が途切れた。
霞んだ思考が戻って初めに見たのは、
繋がったまま見下ろす、
肩に深い噛み痕がある上機嫌なリンだった。
ヘィルは上司で幼なじみ。
いつからかリィトに夢中になっていた。
そして、子供でもできることでずっと、一緒に見守ってきた。
そして、学舎で遠くから見ていたヘィルが、
ついにリィトの隣に並んだ。
ゆっくりと変わっていくヘィルとリィト。
何があっても、必ず傍にいると、
改めて心に決めた。
「ラン。最近、私、おかしい。
喉が渇く。原因、わかる?」
放課後。クレープを食べに行った後、
私の部屋で聞いてほしいことがあると言うリィト。
その真剣な声は、私に聞いてくる。
他人とは違う態度に甘えられていると思っている。
頼ってもらえるのは嬉しい。
が、おそらく、これはヘィル案件だと思う。
が、そうは言えない。
あくまで、自発的にリィトがヘィルに相談するようにしなければ…。
「最近、変わったことはある?」
「あ…る、かもしれない」
考えを巡らせた様子のリィトは、何か思い至ったらしい。
詳しくは言えないようだが。
「だったら、その変わったことに関わる人なら分かるかも?
少なくとも、原因に近づけそうかも」
「確かに…ありがとう。
ランも、困ったことがあれば聞く。
友達、だから」
柔らかな声と、少し、ほんの少しだが笑った気がしたリィト。
作られた表情ではない気がしたそれに、
固い表情にも変化が現れている確信をもつ。
私は、リィトの心が安らげる場所になりたいと、
さらに強く思った。
「うん!友達だもの。
これからも困ったことがあれば話し合おうね」
「うん」
話し疲れたのか、眠そうにするリィト。
部屋まで送ると、扉の前にはリンとヘィルがいた。
「リン。ヘィル」
声をかけるのと同時に、ヘィルの足音が近づいてくる。
「ラン。リィト、眠そうだな」
「俺が預かる」
隣で声がしたと思ったら、すでにリィトはヘィルの腕の中。
限界だったのか、リィトは眠り始めていた。
元々、あまり活動的出はなかったか、
ヘィルが来てからは少し元気そうだった気がする。
実際、放課後、リィトと一緒にいる時間が増えた。
「二人とも、俺の部屋へ来てください」
リィトを抱き上げると、ヘィルは部屋へ転移魔法で移動した。
「ヘィル。魔力が…やはり?」
「その通り。
純血を守れば、家の方は問題ないそうだから」
ヘィルは、リィトを大切そうにゆっくりとベッドへ寝かせて毛布をかけた。
傍は離れないらしく、ベッドに腰かけるヘィル。
ふいに見えた二人の首筋には、
真新しい噛み痕がある。
「人間として育てられた悪魔、だったの?
さっき、リィトが困った様子だったから」
「本人は魔力が少し多いだけ、だと思っていた」
表面にいるヘィルは静かにうなずいて、苦く笑ってそう言った。
隣にいるリンは、顔を青くした。
「これが、少し?親は、何考えているんだ」
リンがそう思う理由も分かる。
無防備なリィトからは、惜しむことなく滲む膨大な魔力。
おそらく、これが本来の姿だろう。
食事する様子を思い出す。
飢えを満たすことで、やっと体が正常に機能したようにも思う。
「そういう家系らしい。
始まりの先祖が子供へ元悪魔だと伝えなかった結果が、これです」
「そんな…今までは、これをどうしていたのか不思議です。
でも、ヘィルは心当たりがあるんですね」
「婚約者だから、それなりに。
身辺を探っていたのが相手に伝わって、
それからはリィトの母親から聞いていました」
これが、少年探偵をやめた理由だろう。
遊ぶ時間も使っていたくらい必死だったから、
急にやめた当時は違和感があった。
「そうでしたか。
俺たちはこれから、どうすればいいですか?」
「今まで通りに…
あと、リィトは二人と友人関係を築きたいようですね。
でも、無理強いはしません」
「わかりました。
俺も、リィトと友人になりたいと思っていました。
一方的だと考えていたので…嬉しいです」
リンはそう、嬉しそうに笑った。
ヘィルは驚いている。
「ヘィル。私もです。
むしろ、私たちだから、友達になれると思っています」
私の言葉に、ヘィルは息を殺して喉で笑う。
「あー…驚いた。予想外だけど、俺は嬉しい。
これからも頼む」
「「はい」」
「ん…ラン?いるの?」
寝ぼけた声のリィトは、視線をさ迷わせている。
私は、すぐに駆け寄った。
「リィト。起きた?」
「ラン。お腹すいた。ヘィルの部屋、なんで?」
何かを思案する様子のリィトの手を握ったDは、
優しい笑みを浮かべている。
「リィト。よければ、四人で夕食にしますか?」
「ヘィル。いいの?」
私に気遣うような視線を向けたリィト。
おそらく、"恋人同士は二人きりで食事をする"
ということを知っているから。
「いいんです。ね、二人とも?」
「「はい」」
すると、リィトは何か思いついたらしい。
ゆっくりと、起きるとヘィルをじっと見つめている。
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リィトが私の手を掴む。
そして、じっと見る。
「私、ランに食事を作る。
お話聞いてくれたお礼する。
ヘィル、いい?」
「では、俺も一緒に。
従者を労うのは上司の仕事です。
ラン、いいですね?」
「はい。ありがとうございます」
安心したようにリィトは私の手を離す。
リンの隣に戻ると、
ヘィルは私たちから隠すようにリィトへさらに近づく。
「お仕事?なら、私も仕事。
監視してもらっているから」
「監視のお礼な…俺の従者だと分かって安心したか?」
「うん。二人は、私に優しい。
ずっと、お礼がしたかった」
「気にしていたのか。
だったら、誰からの監視か名乗らせるんだったな。
実家のと判断つかなかったんだろう」
「うん。お父さん、従者にお礼したら怒る」
目の前で、遠慮なくリィトの頬に口づけるヘィル。
それを恥ずかしそうに受け入れるリィト。
見つめ合う二人は、とても幸せそうだ。
そして、
それが普通だと錯覚するくらい自然にリィトを抱き上げたヘィル。
リィトは抗うが、譲らない気配のヘィルに諦めたらしい。
首に腕を回した。
「何を作る?」
「冷蔵庫にあるもので」
「お酒はいるか?」
「今日は、いらない」
「そうか」
私たちのよこを通り台所へ入ると、
いつの間にか置いてある椅子へリィトをゆっくりおろす。
美味しそうな香りが漂い、手際のいい音が止むと、
リィトが本を読む私たちを呼びに来た。
「食事の時間、です」
「「はい」」
「ラン、リン。いつも、ありがとう」
リィトは儚い笑みを浮かべて、そう言った。
「リィト。私こそ、ありがとうだよ。
これからも一緒にいようね!
ご飯の美味しいお店行こう?」
「俺も。
ランと一緒に、これからは遠慮なく食事にも誘うからな」
「その食事、俺も誘ってもらえるんですよね?」
驚いている雰囲気のリィトを背中から包むヘィル。
その笑みは、少しだけ怖い。
「「はい。当然です」」
迷わず了承の返事をすると、
リィトは何かを思い出したらしい。
そして、なぜか私を見ている。
「ダブルデート?」
「うん?そうだね。リィト、初めて?」
「うん。楽しみにしてる」
デート、と言う言葉に機嫌をよくしたらしいヘィル。
リィトの髪を撫でると、
そのままリィトの手をひいて香りのする方へ連れていった。
出された食事はとても美味しかった。
そして、平日の夕食は一緒に食べることになり、
リィトは楽しそうな様子だった。
それに満足そうなヘィルは、
片付けをしているリィトに見えないよう、
何かが入っている封筒をリンに渡した。
ヘィルの部屋を出て、リンの部屋に移動すると、
ソファーに座り、封筒の中身を見る。
日付指定の高級な昼食の食事券には、宿と足湯券もついていた。
「足湯?」
「ゆっくりしてこい、ってことだと思う」
それだけではないと、なんとなく確信があった。
"にぎやかなデート"ではない感じに、何かある気がする。
「ラン。さっき、ダブルデート、って言っただろう」
ため息をつくリンは、
呆れた顔をしながらも、どこか楽しそう。
その様子に、安心する。
思惑があるとはいえ、
リンと一緒にいられる時間が公認で増えることに、
内心で嬉しく思っているから。
「それもあるけど…私たちがデートをする姿を見せて、
リィトに学ばせたい可能性は?」
「あ?あー…うん。あるかも」
リンがそう言った瞬間、私の視界が回り、思わず目を閉じる。
そして、目をあけると見えるのは、
天井とリンの情欲と戸惑いがみえる顔。
「リン?」
「雰囲気って、出ると思う」
「うん」
当たり前のことを言うリンを見ていると、
首筋を甘く噛まれた。
血が滲んでいる気がする。
離れようとするリンの頭を固定して、そのまま吸うように促す。
「上司公認かも、って思ったら」
「私も……っっ」
同じだよ、と言おうとしたが無理だった。
牙が肌に食い入る感覚と共に感じる魔力で体が熱い。
私も我慢をやめ、リンの肌へ牙を立てた。
血を吸い、吸われ、
心地よい温度に包まれているとリンが動いた。
「お手本、見せないと…ね?」
互いの魔力をまといながら一緒にいるのも、
お手本になるのだろうか。
そう言いながら、布越しに下肢へ押しつけられる昂ぶり。
ナカはすでに受け入れる用意ができているのが、感覚で分かる。
言葉にするのももどかしく、目の前にある肌へ口づけた。
「お手本になる?」
「なる。
たった一人だけを愛するのが普通だと、
行動で示せるだろう?」
リンは目の前で服を脱いだ。
体つきに見惚れていると、
いつの間にか私の服も脱がされていた。
「過保護なくらいの愛情も?」
「そうだ。
今から見慣れておいた方がいいと、思う」
少しだけ苦い表情を浮かべたリン。
おそらく、同性だから知る何かを知っているのだろう。
愛も束縛も深くなることは予想できるが、
私にはそれ以上想像もできない。
「そうね」
「だろう。俺も、同じだが…な」
「え?どういう…っ、こと…っっ、な、ぁ…ぁんっ」
浅いところをゆっくりと擦られ、もどかしさに思わず腰が動いた。
すると、少しずつ深くなっていく律動に体の芯が震えた。
「こう、いう…こと……っ」
「あっ、ああっ、んっ、…っぁ、わかんな…ぁっ、いって…っるの、待って…っ」
入り進んできたと思ったら、
奥を激しく揺さぶる律動で、あっという間に意識が霞む。
次々に波が押し寄せてくるような快楽に、眩暈がした。
「ラン。俺だけを、見て。俺だけを感じて」
「ん、んっ、リン、だけだから、ぁ…っ、あっ、また、イ、く…っっ」
「俺、も…っ、…ぁ…っ、は…っ、…っ」
注がれる熱を受け入れると、
感覚が過敏になっているナカはまたイった。
疼きがとまらない体は、さらに続きを求めている。
「リン、きもち、い…もっと…っ」
「俺も、まだ、ランがほしい」
「んっ、あげる、リンにあげる、から…ぁっ、ん、は…っ、あ、あっ」
うつ伏せにされ、腰にリンの手が添えられた。
再び入ってきたリンの昂りはさらに熱を増していて、
さっきよりも深く私を貫く。
そして、背中に覆いかぶさり、私の首筋へ口づけた後、
リンの牙が一瞬肌にあたった。
「ラン…愛している」
「リン?…ぁ、今、吸われたらぁ…っ、だ、め…っ」
「後で、俺のもあげるからな」
「や、め…っ、おかしくな、ぁ、あああっ」
血を吸われた瞬間、あまりの気持ちよさに意識が途切れた。
霞んだ思考が戻って初めに見たのは、
繋がったまま見下ろす、
肩に深い噛み痕がある上機嫌なリンだった。
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