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第8話 狩りに出た
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「はぁはぁはぁ、割と体力があるのね」
水筒に口をつけながら、俺は呼びかけに答えた。
「そうなんですか?」
全員が息を切らせながら休憩をしている姿が見えた。
あれから俺たちは狩り場まで移動してきた。
馬車にはそれぞれの装備が積んであるので、御者をする人間以外は徒歩だったのだが、まさか十時間も歩くとは思っていなかった。
「普通の新人ならここまで歩かされたら泣きをいれるのに、どんな体力バカなのよ」
泣きを入れ恨めしそうに見てくる女性冒険者。普通なら彼女の言う通り泣きを入れる羽目になったのだろうが、俺には秘策がある。
「身のこなしは素人同然だが、案外見込みがあるのかもしれないな」
自分の水筒に注いでいるのはエリクサーなので、水分補給をするふりをして体力を回復させることができる。
「それで狩場まではあとどのくらいなんですか?」
まさか、日を跨ぐことになるとは思っていなかった。あとどれだけかかるのか俺が確認すると、リーダーが答えた。
「今日はここで野宿して、明日の早朝に数時間移動したところが目的地だ。近くに森があるし、川もある。様々なモンスターが生息しているから得物探しには困らないぞ」
街郊外の雑魚モンスターと違い、それなりに手強いモンスターが湧くのだという。
本日も移動中に何匹かモンスターが湧いたのだが、彼らは「時間がもったいない」とばかりに蹴散らしていた。
そんな彼らがいうそこそこ苦戦するモンスターなら気を引き締めてかからないとならないだろう。
「今日は飯を食ったらすぐに寝るんだな。明日は一日解体作業になるんだからな」
「生憎、体力には自信があるので平気です」
リーダーからの忠告に、俺は言葉を返すのだった。
「ここが目的の草原だ。駆け出しなんかじゃ到底倒せないモンスターが随時わくから、後衛を護りながら戦うぞ」
リーダーの声に全員の表情が引き締まる。
「お前たち二人は矢と短剣でサポート。一人は後ろで倒したモンスターを解体して馬車に積み込んでくれ。もうつめこめないか撤退のタイミングになったら離脱する」
リーダーの指示に対し、
「俺は?」
今の指示ではどこに立ち位置を置けばよいのかわからない。
「あー、んじゃ。最初は俺と並んで戦ってみるか?」
先日の件を冗談で流そうとしていたようだ。俺はうなずくと剣を抜き彼の隣に立つ。
「いいか、強引に突っ込むのだけは絶対するなよ? 助けられなくなるからな」
「わかりました」
他の人間からも視線を受ける。あれは「余計な仕事を増やすなよ?」と言っているような顔だ。
「きたわよっ!」
そうこうしている間に、モンスターが湧き出した。
街近郊では小型のモンスターが目立ったのに、ここでは中型の……それなりに大きい犬程度のモンスターがちらほらといる。
「この狩が成功したら酒場で宴会だ! お前ら気合入れて行けよ」
「「「「おおっ!」」」」
そのようなフラグを立てながら、全員が武器を手にモンスターとの戦いに身を投じた。
「はっ!」
「やっ!」
「えいっ!」
「ふっ!」
先頭で敵を押さえつけるのがリーダーともう一人の男冒険者で、後衛から矢をいるのが二人の女性冒険者。
連携がとれていて、前衛が受け止め、距離をとったところで後衛の矢が突き刺さる。モンスターは二人の攻撃を同時に注意しなければならないので、怪我を負わされ倒れて行った。
「回収頼んだ!」
モンスターが絶命すると、後方に控えていた最後の一人が駆けつけ解体を始める。
リーダーたちは後方の人間が戦闘に巻き込まれないように移動する。
「やるなぁ」
こればかりは素直に感心するしかない。
彼らは役割分担をすると次々にモンスターを倒していたからだ。
「おい、新人。後少しでこっちも倒せる。そうしたら、俺たちと場所を交代して解体をしろ」
自身も戦闘をしていると、そんな言葉が投げかけられた。
「それは、どうで、しょうか、ねっ!」
目の前の巨大な狼モンスターに剣を叩きつけ傷をつける。
『ギャインッ!』
毛が金属のように固く、なかなかダメージが通らない。
「そいつぁ、シルバーウルフ。金属並みに硬い毛で護られているから、駆け出しの生半可な武器や攻撃は通用しねえ。俺たち並みの速度や矢がないと倒せないぞ」
「まっ、時間稼ぎできてる時点で十分合格なんだけどね」
そのような言葉を言われるのだが……。
「このまま代わったらついてきた意味がないんだよな」
俺は水筒を口に含み体力を回復すると、
「そろそろ秘密兵器を使うとするか」
剣を握り締めると、身体中から急激に力が抜け始めた。
「くっ、何度やっても慣れない」
思わず意識が持っていかれそうになるが、なんとか耐える。
俺の身体がわずかに傾いたのをチャンスと思ったのか、シルバーウルフが突進してきた。
『ガルルルルルルッル!』
「おいばか、避けろ!」
「矢が間に合わないっ!」
上段から襲い掛かり、俺に牙を突き立てようとするシルバーウルフを、
「せいっ!」
「「なっ!?」」
俺は剣を全力で叩きつけ真っ二つにした。
水筒に口をつけながら、俺は呼びかけに答えた。
「そうなんですか?」
全員が息を切らせながら休憩をしている姿が見えた。
あれから俺たちは狩り場まで移動してきた。
馬車にはそれぞれの装備が積んであるので、御者をする人間以外は徒歩だったのだが、まさか十時間も歩くとは思っていなかった。
「普通の新人ならここまで歩かされたら泣きをいれるのに、どんな体力バカなのよ」
泣きを入れ恨めしそうに見てくる女性冒険者。普通なら彼女の言う通り泣きを入れる羽目になったのだろうが、俺には秘策がある。
「身のこなしは素人同然だが、案外見込みがあるのかもしれないな」
自分の水筒に注いでいるのはエリクサーなので、水分補給をするふりをして体力を回復させることができる。
「それで狩場まではあとどのくらいなんですか?」
まさか、日を跨ぐことになるとは思っていなかった。あとどれだけかかるのか俺が確認すると、リーダーが答えた。
「今日はここで野宿して、明日の早朝に数時間移動したところが目的地だ。近くに森があるし、川もある。様々なモンスターが生息しているから得物探しには困らないぞ」
街郊外の雑魚モンスターと違い、それなりに手強いモンスターが湧くのだという。
本日も移動中に何匹かモンスターが湧いたのだが、彼らは「時間がもったいない」とばかりに蹴散らしていた。
そんな彼らがいうそこそこ苦戦するモンスターなら気を引き締めてかからないとならないだろう。
「今日は飯を食ったらすぐに寝るんだな。明日は一日解体作業になるんだからな」
「生憎、体力には自信があるので平気です」
リーダーからの忠告に、俺は言葉を返すのだった。
「ここが目的の草原だ。駆け出しなんかじゃ到底倒せないモンスターが随時わくから、後衛を護りながら戦うぞ」
リーダーの声に全員の表情が引き締まる。
「お前たち二人は矢と短剣でサポート。一人は後ろで倒したモンスターを解体して馬車に積み込んでくれ。もうつめこめないか撤退のタイミングになったら離脱する」
リーダーの指示に対し、
「俺は?」
今の指示ではどこに立ち位置を置けばよいのかわからない。
「あー、んじゃ。最初は俺と並んで戦ってみるか?」
先日の件を冗談で流そうとしていたようだ。俺はうなずくと剣を抜き彼の隣に立つ。
「いいか、強引に突っ込むのだけは絶対するなよ? 助けられなくなるからな」
「わかりました」
他の人間からも視線を受ける。あれは「余計な仕事を増やすなよ?」と言っているような顔だ。
「きたわよっ!」
そうこうしている間に、モンスターが湧き出した。
街近郊では小型のモンスターが目立ったのに、ここでは中型の……それなりに大きい犬程度のモンスターがちらほらといる。
「この狩が成功したら酒場で宴会だ! お前ら気合入れて行けよ」
「「「「おおっ!」」」」
そのようなフラグを立てながら、全員が武器を手にモンスターとの戦いに身を投じた。
「はっ!」
「やっ!」
「えいっ!」
「ふっ!」
先頭で敵を押さえつけるのがリーダーともう一人の男冒険者で、後衛から矢をいるのが二人の女性冒険者。
連携がとれていて、前衛が受け止め、距離をとったところで後衛の矢が突き刺さる。モンスターは二人の攻撃を同時に注意しなければならないので、怪我を負わされ倒れて行った。
「回収頼んだ!」
モンスターが絶命すると、後方に控えていた最後の一人が駆けつけ解体を始める。
リーダーたちは後方の人間が戦闘に巻き込まれないように移動する。
「やるなぁ」
こればかりは素直に感心するしかない。
彼らは役割分担をすると次々にモンスターを倒していたからだ。
「おい、新人。後少しでこっちも倒せる。そうしたら、俺たちと場所を交代して解体をしろ」
自身も戦闘をしていると、そんな言葉が投げかけられた。
「それは、どうで、しょうか、ねっ!」
目の前の巨大な狼モンスターに剣を叩きつけ傷をつける。
『ギャインッ!』
毛が金属のように固く、なかなかダメージが通らない。
「そいつぁ、シルバーウルフ。金属並みに硬い毛で護られているから、駆け出しの生半可な武器や攻撃は通用しねえ。俺たち並みの速度や矢がないと倒せないぞ」
「まっ、時間稼ぎできてる時点で十分合格なんだけどね」
そのような言葉を言われるのだが……。
「このまま代わったらついてきた意味がないんだよな」
俺は水筒を口に含み体力を回復すると、
「そろそろ秘密兵器を使うとするか」
剣を握り締めると、身体中から急激に力が抜け始めた。
「くっ、何度やっても慣れない」
思わず意識が持っていかれそうになるが、なんとか耐える。
俺の身体がわずかに傾いたのをチャンスと思ったのか、シルバーウルフが突進してきた。
『ガルルルルルルッル!』
「おいばか、避けろ!」
「矢が間に合わないっ!」
上段から襲い掛かり、俺に牙を突き立てようとするシルバーウルフを、
「せいっ!」
「「なっ!?」」
俺は剣を全力で叩きつけ真っ二つにした。
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