上 下
7 / 76

第7話 冒険者ギルドでの定番のイベント

しおりを挟む
「さて、どの依頼を請けてみようか?」

 冒険者ギルドに到着し、依頼の掲示板を見ている。

「できればモンスター討伐の依頼がいいんだけど、どれが大丈夫かわからないしな……」

 いくら武器を手に入れたとはいえ、不安は残る。引き当てた依頼のモンスターが手に負えなければ詰んでしまう。順調な滑り出しにこそ罠が潜んでいるもの。

 ここで異世界を舐めて物語序盤で死んでしまうかませになってしまっては意味がない。せめてリスクを減らす方法は……。

「おい、そこの新人」

 そんな風に悩んでいると後ろから声を掛けられた。
 振り向いてみると、そこに五人の男女が立っている。

「俺たち今から狩りにでるんだが、今日の依頼が決まってないならついてこないか?」

 先頭に立つ男が笑みを浮かべ右手を前に出す。

「狩りっていうと?」

「特定の依頼を請けずに、モンスターが多く生息する場所まで向かって見つけたモンスターを討伐し、肉や素材を得るんだ。店を構えている人間に伝手があるなら、大抵のものは買い取ってもらえるからな」

 今朝のバザーのように、折り合いさえつけば取引は成立する。それが可能なのは身分証明書を兼ねたカードの存在だろう。
 どこでも即取引できて便利なので、現実世界の電子決済みたいだと思った。

 とはいえ、モンスターの素材を何でも買い取ってくれるような太いパイプを持つ冒険者は中々いない。
 だからこそ、こうしてギルドに足を運び依頼を請けるわけだし……。

「俺もついていっていいんですか?」

 あまりにも美味しい話なので続きを聞く。

 様々なモンスターと対峙できるので、こちらとしては願ったりかなったりの提案なのだが、新人とわかっていて声を掛ける意味が解らない。

 最近流行の、いびるふりをして新人に声を掛け、手厚くサポートしてくれる善人なのかもしれない?

「構わないぜ、ただし、狩った獲物は倒したやつのもの。馬車が一杯になるまで狩るが、手が空いてるやつは解体係をしてもらうって条件だな」

 大量に狩るつもりらしく、馬車まで用意しているようだ。それだけに手間をかけてモンスターを狩りに街の外に出向くというのが窺える。

 他の冒険者もニヤニヤと笑っている。どうやら、俺に倒させるつもりで声を掛けたわけではなく、倒した後の処理をさせるのが目的か。

「それって、俺が倒したら俺の取り分で、他の人が解体してくれるってことですか?」

 だが、逆に言えば俺が倒せるなら美味しい。俺は念のため確認してみることにした。

「ぷっ、見たところ剣一本な上、冒険者ランキングにも名前も載っていなさそうなのに。大きなこと言うわね」

 冒険者の女性が口元に手を当てるとそう言った。

「冒険者ランキングとは?」

「街で登録している冒険者の毎月の貢献度に応じて五十位までを貼りだすのよ。うちのリーダーが四十九位なんだから」

「なるほど、ありがとございます」

 射幸心を煽り、依頼を積極的に請けさせるためのギルド側の策か。言われたリーダーとやらは胸を反らせてまんざらでもない表情を浮かべている。

「言っとくけど、駆け出しの新人なんて街近郊の雑魚モンスター数匹倒しただけで疲労で戦えなくなるんだからね」

 諭すような言葉を他の女性冒険者が言うのだが……。

「俺たちも登録したてのころはこんな感じだったよな」

 もう一人の男冒険者が腕を組み首を縦に振るとウンウンと頷いた。

「まあ、今日行くのは俺たちでもそこそこきついモンスターが湧く場所だからな。解体を覚えるだけでも今後に生かせるだろうし、良い経験させてやるよ」

 下働きの誘いとしてはやや強引だが、得るものがないわけでもない。断って無難な依頼を請けることもできるが、この世界の冒険者の実力を見るチャンスでもある。

「それじゃあ、勉強させてもらうことにしますよ」

 俺は彼らに同行させてもらうことにした。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

【物真似(モノマネ)】の力を嫉妬され仲間を外された俺が一人旅を始めたら……頼られるし、可愛い女の子たちとも仲良くなれて前より幸せなんですが?

シトラス=ライス
ファンタジー
銀髪の冒険者アルビスの持つ「物真似士(ものまねし)」という能力はとても優秀な能力だ。直前に他人が発動させた行動や技をそっくりそのまま真似て放つことができる……しかし先行して行動することが出来ず、誰かの後追いばかりになってしまうのが唯一の欠点だった。それでも優秀な能力であることは変わりがない。そんな能力を持つアルビスへリーダーで同郷出身のノワルは、パーティーからの離脱を宣告してくる。ノワル達は後追い行動ばかりで、更に自然とではあるが、トドメなどの美味しいところを全て持っていってしまうアルビスに不満を抱いていたからだった。 半ば強引にパーティーから外されてしまったアルビス。一人にされこの先どうしようとか途方に暮れる。 しかし自分の授かった能力を、世のため人のために使いたいという意志が変わることは無かったのだ。 こうして彼は広大なる大陸へ新たな一歩を踏み出してゆく――アルビス、16歳の決断だった。 それから2年後……東の山の都で、“なんでもできる凄い奴”と皆に引っ張りだこな、冒険者アルビスの姿があった。

処理中です...