2 / 76
第2話 即追放されてしまった
しおりを挟む
「どうして、こうなった?」
俺は公園のベンチに背をもたれると空を仰ぎ、やるせない思いで溜息を吐いた。
「あいつら、厄介払いしやがって」
現在、俺は召喚の儀を終えて神殿から追い出されたばかりだ。
「誰が『外れ異世界人! コモンかよ!』だっての!」
それというのも、俺の作り出した【エリクサー】が偽物だと判断されたからにほかならない。
「どう見てもただならぬ効果がありそうなんだけどな……」
ほんの数秒で作り出した瓶の中に入っている虹色の液体は、現実世界で見たことのない神々しさを放っている。
魔法の世界に慣れていない俺ですらその凄みを感じ取れるくらいなのだから、この世界の住人にそれがわからないとも思えない。
俺は瓶に口をつけると虹色の液体を喉に流し込んだ。
「う、美味いじゃないか!?」
飲めば清涼感に溢れていて身体中に活力がいきわたるような感覚に陥った。これがエリクサーの効果なのかはわからないが、思考がクリアになり先程まで悩みで感じていた疲労がましになったような気がする。
怪我や病気をしたわけではないので確証を得られないが、少なくとも頭の中に流れてきたこの能力の説明がまったくの嘘ということはないはず。
「……だというのに」
俺の能力を明かした後、老神官が怪我や病気に苦しむ何人かにエリクサーを飲ませてみたところ、まったく効果がなかった。
それどころか、能力を疑われてしまい、魔導具で測定をしたところ『こちらの世界の一般人並みの潜在能力です』と、凡人の烙印を押されてしまった。
老神官たちが集まり何やら険しい表情で協議を行い、結果として俺の追放が決まってしまった。
最初に話しかけてきた老神官から「これは手切れ金ということで」と一枚のカードが差し出され、利用手順を説明すると厄介払いとばかりに神殿から追い出された。
金色の、金属でできた紋章が彫られたカードを天にかざす。
このカードは身分証明書にもなっていて、かざせば金貨10枚(現実世界で100万円分)の買い物が各店でできるのだという。
「とりあえず当面の生活費はあるわけだし、異世界を見て回るとするか」
放置していた空の瓶が消滅するのを視界の片隅に収めると、俺は突然始まった異世界生活にわくわくするのだった。
「まずはここだろうな?」
神殿を追い出されて、俺が最初に訪れたのは冒険者ギルドだ。
異世界に転移した物語を読めば、まずお約束とばかりに冒険者ギルドが出てくる。
古びた扉を手で押し開け中に入ると、柄の悪い連中と目が合った。
建物に入ると、アルコールやら肉の焼ける臭いやらが漂ってくる。
周囲を見て、受付と思われるカウンターに容姿の整った女性を発見すると、そこが目的の場所と見当をつけずかずかと進んだ。
「本日はどういった御用でしょうか?」
営業スマイルを向けてくる受付嬢に俺は目的を告げる。
「依頼を請けたいんだけど、どうすればいい?」
「それでは、登録を行いますので質問にお答えください」
受付嬢は用紙を取り出すと、俺のプロフィールの作成を始めた。
「熱海 湊、年齢は十七歳。出身は日本」
「……なるほど、異世界人の方ですね?」
異世界人だということで目を合わせ探るような様子を見せるが、それ以上特に何かいうことはない。
召喚した神殿の人間も、見物に集まっていた観衆も異世界人というものをある程度認識しているからだろう。
「早速、何か仕事を請けたいんだけど、お勧めはある?」
まず自分に何ができるか把握しておかなければならない。俺でもこなせそうな依頼がないか聞いてみるのだが……。
「うーん、今のところ簡単な依頼はありませんね。常時募集しているハーブやゴブリンの討伐依頼くらいでしょうか?」
「それって、ゴブリンを討伐して部位を持って来れば平気?」
この世界に転移する際に俺が得た知識と間違いないか念のため確認すると、受付嬢は頷いた。
「えっと、見たところ随分と身軽な格好の様ですが武器も防具もお持ちではないですか?」
「あー、どうしようか……?」
この世界での俺の身体能力はあくまで一般人並みと結果が出ている。ここで武器防具を揃えてしまってから、自分が冒険者に向いていなかった場合、装備を売り払ってしまえば損をしてしまう。
「もしよろしければ、預り金を頂ければ装備をレンタルすることもできますよ?」
「あっ、じゃあそれでお願いします」
こちらが悩んでいると、受付嬢が提案してくれたので提案を受け入れた。
倉庫のような場所に案内される。
倉庫内には使い古しの皮鎧やグローブ、それに少し欠けていたりさびが発生している剣が立てかけてあった。
俺はその中から、比較的損傷が少ない物を選び身に着ける。
「うわ、似合ってないな?」
留め具が甘いからか動くとどこかが身体に障る。
「返却の際はまた声を掛けてください」
そう言って、受付嬢はそそくさと出て行き自分の仕事へと戻ってしまった。
「まっ、とりあえず試しに戦ってみるか」
俺はそんな彼女を見送ると、冒険者ギルドを出て街の外へと繰り出すのだった。
俺は公園のベンチに背をもたれると空を仰ぎ、やるせない思いで溜息を吐いた。
「あいつら、厄介払いしやがって」
現在、俺は召喚の儀を終えて神殿から追い出されたばかりだ。
「誰が『外れ異世界人! コモンかよ!』だっての!」
それというのも、俺の作り出した【エリクサー】が偽物だと判断されたからにほかならない。
「どう見てもただならぬ効果がありそうなんだけどな……」
ほんの数秒で作り出した瓶の中に入っている虹色の液体は、現実世界で見たことのない神々しさを放っている。
魔法の世界に慣れていない俺ですらその凄みを感じ取れるくらいなのだから、この世界の住人にそれがわからないとも思えない。
俺は瓶に口をつけると虹色の液体を喉に流し込んだ。
「う、美味いじゃないか!?」
飲めば清涼感に溢れていて身体中に活力がいきわたるような感覚に陥った。これがエリクサーの効果なのかはわからないが、思考がクリアになり先程まで悩みで感じていた疲労がましになったような気がする。
怪我や病気をしたわけではないので確証を得られないが、少なくとも頭の中に流れてきたこの能力の説明がまったくの嘘ということはないはず。
「……だというのに」
俺の能力を明かした後、老神官が怪我や病気に苦しむ何人かにエリクサーを飲ませてみたところ、まったく効果がなかった。
それどころか、能力を疑われてしまい、魔導具で測定をしたところ『こちらの世界の一般人並みの潜在能力です』と、凡人の烙印を押されてしまった。
老神官たちが集まり何やら険しい表情で協議を行い、結果として俺の追放が決まってしまった。
最初に話しかけてきた老神官から「これは手切れ金ということで」と一枚のカードが差し出され、利用手順を説明すると厄介払いとばかりに神殿から追い出された。
金色の、金属でできた紋章が彫られたカードを天にかざす。
このカードは身分証明書にもなっていて、かざせば金貨10枚(現実世界で100万円分)の買い物が各店でできるのだという。
「とりあえず当面の生活費はあるわけだし、異世界を見て回るとするか」
放置していた空の瓶が消滅するのを視界の片隅に収めると、俺は突然始まった異世界生活にわくわくするのだった。
「まずはここだろうな?」
神殿を追い出されて、俺が最初に訪れたのは冒険者ギルドだ。
異世界に転移した物語を読めば、まずお約束とばかりに冒険者ギルドが出てくる。
古びた扉を手で押し開け中に入ると、柄の悪い連中と目が合った。
建物に入ると、アルコールやら肉の焼ける臭いやらが漂ってくる。
周囲を見て、受付と思われるカウンターに容姿の整った女性を発見すると、そこが目的の場所と見当をつけずかずかと進んだ。
「本日はどういった御用でしょうか?」
営業スマイルを向けてくる受付嬢に俺は目的を告げる。
「依頼を請けたいんだけど、どうすればいい?」
「それでは、登録を行いますので質問にお答えください」
受付嬢は用紙を取り出すと、俺のプロフィールの作成を始めた。
「熱海 湊、年齢は十七歳。出身は日本」
「……なるほど、異世界人の方ですね?」
異世界人だということで目を合わせ探るような様子を見せるが、それ以上特に何かいうことはない。
召喚した神殿の人間も、見物に集まっていた観衆も異世界人というものをある程度認識しているからだろう。
「早速、何か仕事を請けたいんだけど、お勧めはある?」
まず自分に何ができるか把握しておかなければならない。俺でもこなせそうな依頼がないか聞いてみるのだが……。
「うーん、今のところ簡単な依頼はありませんね。常時募集しているハーブやゴブリンの討伐依頼くらいでしょうか?」
「それって、ゴブリンを討伐して部位を持って来れば平気?」
この世界に転移する際に俺が得た知識と間違いないか念のため確認すると、受付嬢は頷いた。
「えっと、見たところ随分と身軽な格好の様ですが武器も防具もお持ちではないですか?」
「あー、どうしようか……?」
この世界での俺の身体能力はあくまで一般人並みと結果が出ている。ここで武器防具を揃えてしまってから、自分が冒険者に向いていなかった場合、装備を売り払ってしまえば損をしてしまう。
「もしよろしければ、預り金を頂ければ装備をレンタルすることもできますよ?」
「あっ、じゃあそれでお願いします」
こちらが悩んでいると、受付嬢が提案してくれたので提案を受け入れた。
倉庫のような場所に案内される。
倉庫内には使い古しの皮鎧やグローブ、それに少し欠けていたりさびが発生している剣が立てかけてあった。
俺はその中から、比較的損傷が少ない物を選び身に着ける。
「うわ、似合ってないな?」
留め具が甘いからか動くとどこかが身体に障る。
「返却の際はまた声を掛けてください」
そう言って、受付嬢はそそくさと出て行き自分の仕事へと戻ってしまった。
「まっ、とりあえず試しに戦ってみるか」
俺はそんな彼女を見送ると、冒険者ギルドを出て街の外へと繰り出すのだった。
48
お気に入りに追加
857
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる