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第27話 ギャンブルシティ
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「ピートばかりずるいと思うの」
シーラはそう言うと、俺の手に持っている杯をじっとみた。
「駄目だ、お前は自分がどれだけ酒に弱いか知らないだろ?」
現在、俺たちはギャンブルシティの中で適当に目についた店に入って料理を注文している。
酒と女とギャンブルを前面に押し出しているだけあって、メニューに書かれている料理はどれも味付けが濃いものばかり。
酒と合わせれば美味しさが倍増するので、俺はエールを注文していた。
「くぅ……美味い」
はじける泡が喉を通る際に刺激し、舌には程よい苦みが残る。
注文していたカリカリのベーコンにチーズ焼き、胡椒をふんだんに使ったチキンなどを口にすると手が止まらない。
「ねね、ちょっとだけ、ちょっとだけならいいじゃない」
「うーん……でもなぁ」
先日、十層で紅茶にブランデーを淹れた際、シーラは酔っ払うと寝てしまった。
あの時は日中だったし、しばらく外で風にあたって過ごせば元にもどったのだが、この夜の街では油断できない。
「それに、ほら。ここの二階は宿泊できるみたいだし」
「おまえ、それ本気で言ってるのか?」
こういった飲み屋が宿も経営しているのは理由がある。酒を飲ませて足取りがおぼつかなくなった相手を宿に誘い一夜をともにするためだ。
俺はその説明を世間知らずなお姫様にしてやる。
「俺だから良いけど、他の男相手に言うなよ。絶対危険だから」
これから先、俺がいない場所でシーラが酒を飲んだ場合を考えて注意しておく。
「べ、別に誰にでもいうわけじゃないわよ。ピートなら信頼してるからだし」
ばつが悪そうな顔をする。俺は一度ためいきを吐くと、
「その果実酒は飲みやすくてそれほど酔わないらしいから、そこから選ぶといいぞ」
以前一緒に飲んだ女性冒険者が好んで飲むお酒を紹介してやる。
「うん、わかった!」
シーラは嬉しそうにメニューを眺めると果実酒を注文するのだった。
「さて、次はどこに行くとするか」
シーラの手を引きながら街を歩く。
軽い食事と軽いお酒を飲んだ俺たちだが、さすがにあの一軒に滞在しただけでは見て回った内に入らないだろう。
時間もようやく夜に突入したばかりということもあり、他を見てみることにした。
「えへへへへへ」
頬をほんのりと染めたシーラは上機嫌で笑っている。
何が楽しいのか、俺と繋がっている手をブラブラさせているのだが、放そうとすると力を強めて握り締めてくる。
お蔭でさきほどから繋いだままなのだが……。
「ピート、ふわふわして気持ちいいね」
別段、誰かに迷惑が掛かるわけではない。このくらいはかまわないだろう。
『お客さん、店が決まってないようだったらうちなんてどう? サービスしておくよ』
『あら、お兄さん男前ね。良かったらどうかしら?』
『へへへ、兄ちゃんいい女連れてるな。ちょっと面かせや』
歩いているだけで様々な人間に声を掛けられる。
最後になめた言葉を口にした男は誰にも気づかれないように魔法で昏倒させておいた。
しばらくの間、シーラと喧騒の中を歩いていたがいつまでもこのままというわけにもいかない。
俺がどうするか悩んでいるとシーラに急に腕を引っ張られた。
「ピート、ここ入ってみたい」
他の建物と違い圧倒的に大きな施設。様々な色の明かりが看板を照らし、来るもの拒まずといった様子の大きな扉。
「……まあ、こういうのも勉強の内か」
俺はシーラを伴うとカジノへと入っていった。
「むむむ……」
シーラが眉間に皺を寄せて悩んでいる。
手元にはチップが十枚あるのだが、元は百枚だったことから考えると随分と負けている状態だ。
「シーラ、あんまり突っ込みすぎるなよ?」
カジノに入ったところで、チップ交換所があった。
俺たちはべモンドから受け取った百万ベルの内十万ベルをチップへと交換した。
つまり、一枚千ベル。彼女は既に九万ベルを失った計算になる。
「ピートは次は赤が来ると思う? それとも黒?」
「ルーレットはどうやっても最終的に胴元が勝つようにできている。だから俺はやらない」
「なによ、男ならビシッと勝負するくらいしなさいよ」
偶然口にしたシーラの言葉に頬が緩む。過去に同じセリフを口にした女性冒険者がいた。
あの時と状況は違うが、彼女もここに来たら同じようにギャンブルに嵌るのではないだろうか?
そんなことを考えている間にもルーレットは回っていく。
「ああっ!」
シーラの悲痛な叫びが聞こえる。どうやら張った目と逆がでてしまったようだ。
「ううう、あと少しだったのに……」
世間知らずのお姫様にはいい勉強になっただろう。熱くなって負けを覚えれば今後は注意深くなる。
もとよりべモンドからもらった金なので懐は痛まないので良かったとも言える。
「シーラ、ちょっとだけ離れるから待っててくれ」
「あっ、うん。わかったわ」
チップ交換所の横に興味を引く場所があったので、俺はシーラを待たせるとそちらの用事を済ませることにした。
シーラはそう言うと、俺の手に持っている杯をじっとみた。
「駄目だ、お前は自分がどれだけ酒に弱いか知らないだろ?」
現在、俺たちはギャンブルシティの中で適当に目についた店に入って料理を注文している。
酒と女とギャンブルを前面に押し出しているだけあって、メニューに書かれている料理はどれも味付けが濃いものばかり。
酒と合わせれば美味しさが倍増するので、俺はエールを注文していた。
「くぅ……美味い」
はじける泡が喉を通る際に刺激し、舌には程よい苦みが残る。
注文していたカリカリのベーコンにチーズ焼き、胡椒をふんだんに使ったチキンなどを口にすると手が止まらない。
「ねね、ちょっとだけ、ちょっとだけならいいじゃない」
「うーん……でもなぁ」
先日、十層で紅茶にブランデーを淹れた際、シーラは酔っ払うと寝てしまった。
あの時は日中だったし、しばらく外で風にあたって過ごせば元にもどったのだが、この夜の街では油断できない。
「それに、ほら。ここの二階は宿泊できるみたいだし」
「おまえ、それ本気で言ってるのか?」
こういった飲み屋が宿も経営しているのは理由がある。酒を飲ませて足取りがおぼつかなくなった相手を宿に誘い一夜をともにするためだ。
俺はその説明を世間知らずなお姫様にしてやる。
「俺だから良いけど、他の男相手に言うなよ。絶対危険だから」
これから先、俺がいない場所でシーラが酒を飲んだ場合を考えて注意しておく。
「べ、別に誰にでもいうわけじゃないわよ。ピートなら信頼してるからだし」
ばつが悪そうな顔をする。俺は一度ためいきを吐くと、
「その果実酒は飲みやすくてそれほど酔わないらしいから、そこから選ぶといいぞ」
以前一緒に飲んだ女性冒険者が好んで飲むお酒を紹介してやる。
「うん、わかった!」
シーラは嬉しそうにメニューを眺めると果実酒を注文するのだった。
「さて、次はどこに行くとするか」
シーラの手を引きながら街を歩く。
軽い食事と軽いお酒を飲んだ俺たちだが、さすがにあの一軒に滞在しただけでは見て回った内に入らないだろう。
時間もようやく夜に突入したばかりということもあり、他を見てみることにした。
「えへへへへへ」
頬をほんのりと染めたシーラは上機嫌で笑っている。
何が楽しいのか、俺と繋がっている手をブラブラさせているのだが、放そうとすると力を強めて握り締めてくる。
お蔭でさきほどから繋いだままなのだが……。
「ピート、ふわふわして気持ちいいね」
別段、誰かに迷惑が掛かるわけではない。このくらいはかまわないだろう。
『お客さん、店が決まってないようだったらうちなんてどう? サービスしておくよ』
『あら、お兄さん男前ね。良かったらどうかしら?』
『へへへ、兄ちゃんいい女連れてるな。ちょっと面かせや』
歩いているだけで様々な人間に声を掛けられる。
最後になめた言葉を口にした男は誰にも気づかれないように魔法で昏倒させておいた。
しばらくの間、シーラと喧騒の中を歩いていたがいつまでもこのままというわけにもいかない。
俺がどうするか悩んでいるとシーラに急に腕を引っ張られた。
「ピート、ここ入ってみたい」
他の建物と違い圧倒的に大きな施設。様々な色の明かりが看板を照らし、来るもの拒まずといった様子の大きな扉。
「……まあ、こういうのも勉強の内か」
俺はシーラを伴うとカジノへと入っていった。
「むむむ……」
シーラが眉間に皺を寄せて悩んでいる。
手元にはチップが十枚あるのだが、元は百枚だったことから考えると随分と負けている状態だ。
「シーラ、あんまり突っ込みすぎるなよ?」
カジノに入ったところで、チップ交換所があった。
俺たちはべモンドから受け取った百万ベルの内十万ベルをチップへと交換した。
つまり、一枚千ベル。彼女は既に九万ベルを失った計算になる。
「ピートは次は赤が来ると思う? それとも黒?」
「ルーレットはどうやっても最終的に胴元が勝つようにできている。だから俺はやらない」
「なによ、男ならビシッと勝負するくらいしなさいよ」
偶然口にしたシーラの言葉に頬が緩む。過去に同じセリフを口にした女性冒険者がいた。
あの時と状況は違うが、彼女もここに来たら同じようにギャンブルに嵌るのではないだろうか?
そんなことを考えている間にもルーレットは回っていく。
「ああっ!」
シーラの悲痛な叫びが聞こえる。どうやら張った目と逆がでてしまったようだ。
「ううう、あと少しだったのに……」
世間知らずのお姫様にはいい勉強になっただろう。熱くなって負けを覚えれば今後は注意深くなる。
もとよりべモンドからもらった金なので懐は痛まないので良かったとも言える。
「シーラ、ちょっとだけ離れるから待っててくれ」
「あっ、うん。わかったわ」
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