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13日の金曜日
続2
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「アンタ、マジ最低……」
いまだアルコールの抜けきらない俺は――いや、まぁ原因はそれだけじゃないけど――依然として頭も足取りもふらふらだった。
それでも、一度と言わず体内《なか》に注がれた熱は嫌でもこぼれ出てくるし、結果、身体を拭くだけではどうにもならないと思った俺は、不本意ながらも逸樹さんに支えられつつ、共に浴室へと向かったのだった。
「どうせ掃除するのは俺だ」
「そういう問題じゃねぇ……」
唯一残っていたドロドロのパーカーを脱がされつつ、せめてもと悪態をつく。
身を押されるようにしてドアを潜《くぐ》ると、浴室内はほどよく空調が効いていた。
俺は促されるまま、姿見の前に置かれた真っ白なバスチェアへと腰を下ろす。
「洗ってやるから許せよ」
「だからそういう問題じゃねぇって……」
言いたいのはモラルの問題だ。
だけど多分、逸樹さんはそれと分かっていて取り合う気はないのだろう。
「まぁたまにはいいだろ、背中くらい」
ややして背後に立った逸樹さんも、気がつけば全裸になっている。
今更それを恥ずかしいとかは思わないけど……だからって面と向かってまじまじと見られるほど開き直れているわけでもない。
実際、明るいところでそういうことをするのはやっぱ苦手だし……。
(さっきは先に電気消しててほんと良かった……)
でなきゃ、逸樹さんは俺が頼んだところで聞いてはくれなかっただろう。
きっと時間がもったいないとか適当なことを言って、リモコンを探そうともしてくれなかったはずだ。
あの時の逸樹さんは、それくらい不穏な空気を纏っていた。
(はぁ、もう……)
思い返すと、自然とため息が出る。
「背中……背中ね」
焦点のぼやけた視線を鏡に向けたまま、皮肉めいた言い方で呟くと、不意に耳元に吐息がかかる。
「なんだ。背中と言わず、中のも掻き出して欲しいのか?」
「ち……違うっ、それはいい!」
俺は弾かれたように視軸を合わせ、鏡越しにふるふると首を横に振った。
「詫びじゃねぇけど、せっかくだから今日は直人の好きな泡風呂にしてやるよ」
「え……」
そんな俺を宥めるように、逸樹さんはわずかに声を和らげる。
俺の反応にわずかに目を細めると、早速浴室内の棚からそれ用のジェルを取り出して、お湯の溜まりかけていた湯船に適量垂らした。
そこに勢いよくシャワーのお湯が当たるようにすると、みるみるきめの細かい泡が量産されていく。
それを努めて興味なさそうな顔で眺めながら、けれどもその実、俺の気分はちょっと上がっていたりする。
だって俺、実はこの泡風呂が大好きで――っていっても、逸樹さんが入らせてくれるまで、自分でやったことはなかったんだけど――逸樹さんちに泊まる時は、それを期待して来ていると言っても過言ではないくらいだった。
まぁ、現実問題、そうそう泡風呂するような機会には恵まれないんだけど。
なぜって……毎度毎度、俺にそれを楽しむような余力が残らないからだよ!
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