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08.ジークと薬
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リュシーは急くようにジークの身体を抱き上げた。
触れた先から、何とも形容しがたい空気が纏わり付いてくる。
きわめて甘く、強制的に官能を擽るようなそれは、元々影響を受けにくいはずのリュシーにまでも強引に火をつけようとする。
(うっとうしい……)
煽られたって、リュシーは達けないのに――現状のままでは。
「間に合わなかったら、じゃ、ねぇよっ……」
リュシーはじわじわと体温を上げるジークを抱えたまま、リビングを飛び出すと、
「こんなの、どうせ想定内だろ……!」
吐き捨てながら廊下を突っ切り、次いでアトリエの扉を蹴り開けた。
リュシーはそこから更にひとつ扉を抜けて、ジークを奥の部屋のベッドに下ろす。
それからすぐにアトリエに戻り、今度は作業台の上へと視線を走らせた。
間もなく目に止めたのは、今朝方ジークが気にしていた、不思議な色合いの液体が入った瓶だ。焦れたようにそれを手に取り、急いで奥の部屋へと向かう。
「!」
けれども、そこでリュシーは足を止める。
とっさに口元を覆ったのは、先とは比べものにならないほどに濃くなった香りが、部屋中を満たしていたからで、
「リュシー、さん……」
そしてベッドに寝ていたはずのジークが、いつの間にか身を起こし、艶然と微笑んでいたからだった。
「っ……」
薄く開いた唇の隙間で、誘うように覗いた舌がゆっくりと動いている。
さっきとはまるで別人だ。リュシーは奥歯を噛みしめ、その現実味のない空間へとどうにか踏み出した。
「もう少しくらい大人しく寝てろよ……!」
口元を覆う手を外し、ジークの胸元に手を伸ばす。そのまま突き飛ばすようにして後ろに押し倒すと、抑えつけるように自重を載せた。
そうしながら、片手で瓶の蓋を開けようとする――が、うまくいかない。
もたついているうちに、ジークの手が伸びてくる。リュシーの服へと指がかかり、きっちりと詰めていた襟を開かれる。
あらわになった鎖骨を撫でる手つきが、否応なしに情欲を擽ってくる――。
「さ、触んな……っ」
その気もないのに背筋が泡立つ。リュシーは「くそ……っ」と悪態をつきながら、ジークを抑えていた手を戻し、瓶の蓋を急いで開けた。
ちらとジークの口元を見る。僅かに逡巡し、舌打ちを漏らす。
それから意を決したように、リュシーは手の中の瓶を自分の口元に寄せ、その液体を口に含んだ。
「ん、んぅっ……!」
他方の手が瓶の蓋を投げ捨てる。その手で、再びジークの胸倉を掴む。引き寄せながら唇を重ねて、口内の液体を一気に流し込んだ。
「……っ」
ジークがそれを嚥下したのを確認してから、リュシーは一度唇を離し、続けて残りの液体を呷る。
空になった瓶を傍らに投げ置き、ジークの両手首を掴むと、組み敷くようにしてシーツの上へと縫い止めた。
触れた先から、何とも形容しがたい空気が纏わり付いてくる。
きわめて甘く、強制的に官能を擽るようなそれは、元々影響を受けにくいはずのリュシーにまでも強引に火をつけようとする。
(うっとうしい……)
煽られたって、リュシーは達けないのに――現状のままでは。
「間に合わなかったら、じゃ、ねぇよっ……」
リュシーはじわじわと体温を上げるジークを抱えたまま、リビングを飛び出すと、
「こんなの、どうせ想定内だろ……!」
吐き捨てながら廊下を突っ切り、次いでアトリエの扉を蹴り開けた。
リュシーはそこから更にひとつ扉を抜けて、ジークを奥の部屋のベッドに下ろす。
それからすぐにアトリエに戻り、今度は作業台の上へと視線を走らせた。
間もなく目に止めたのは、今朝方ジークが気にしていた、不思議な色合いの液体が入った瓶だ。焦れたようにそれを手に取り、急いで奥の部屋へと向かう。
「!」
けれども、そこでリュシーは足を止める。
とっさに口元を覆ったのは、先とは比べものにならないほどに濃くなった香りが、部屋中を満たしていたからで、
「リュシー、さん……」
そしてベッドに寝ていたはずのジークが、いつの間にか身を起こし、艶然と微笑んでいたからだった。
「っ……」
薄く開いた唇の隙間で、誘うように覗いた舌がゆっくりと動いている。
さっきとはまるで別人だ。リュシーは奥歯を噛みしめ、その現実味のない空間へとどうにか踏み出した。
「もう少しくらい大人しく寝てろよ……!」
口元を覆う手を外し、ジークの胸元に手を伸ばす。そのまま突き飛ばすようにして後ろに押し倒すと、抑えつけるように自重を載せた。
そうしながら、片手で瓶の蓋を開けようとする――が、うまくいかない。
もたついているうちに、ジークの手が伸びてくる。リュシーの服へと指がかかり、きっちりと詰めていた襟を開かれる。
あらわになった鎖骨を撫でる手つきが、否応なしに情欲を擽ってくる――。
「さ、触んな……っ」
その気もないのに背筋が泡立つ。リュシーは「くそ……っ」と悪態をつきながら、ジークを抑えていた手を戻し、瓶の蓋を急いで開けた。
ちらとジークの口元を見る。僅かに逡巡し、舌打ちを漏らす。
それから意を決したように、リュシーは手の中の瓶を自分の口元に寄せ、その液体を口に含んだ。
「ん、んぅっ……!」
他方の手が瓶の蓋を投げ捨てる。その手で、再びジークの胸倉を掴む。引き寄せながら唇を重ねて、口内の液体を一気に流し込んだ。
「……っ」
ジークがそれを嚥下したのを確認してから、リュシーは一度唇を離し、続けて残りの液体を呷る。
空になった瓶を傍らに投げ置き、ジークの両手首を掴むと、組み敷くようにしてシーツの上へと縫い止めた。
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