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決戦

その14

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試合も無事終わり、大剣使いの男性が預けていた賞金の授与等は明日に城でという事になった。


黒衣の青年と神官の少女が闘技場の外に出る途中、こちらに向ってくる商人の2人、アドルとリオンに会う。

アドルの顔からはこれ以上にないほどに笑顔がこぼれていた。


「アドルさん、なにか良い事でもありましたの?」

「いやぁ、賭けは大盛況で、うちらも大儲けさ。この一週間頑張った甲斐があったってもんだな」

ワッハッハとアドルのご機嫌が止まらない。


「本当に面倒かけたな、礼を言う」

青年はアドルに礼を言われ、笑ってた顔をキュッと締めると、アドルとリオンは青年と少女に深々と頭を下げる。

「助けてもらった上に、こんなやりがいのある話に噛ませてもらって、こちらこそ感謝している。またサンド=リヨンに訪れる事があったら是非尋ねてくれ。歓迎するぞ」

頭を上げると、出てきた闘技場の方に体を向けた。

「あ、そうだ。もし今後闘技大会で賭けをやるなら、アドル商会が全力でサポートすると、国によろしく言っておいてくれ」

アドルはそう言うと、手を振りまた闘技場へと戻っていった。



教会に戻り日をまたぎ、前日に打ち合わせていた時間に、城前で大剣使いの男性と合流した。

3人が入り口で兵士に訪ねてきたことを伝えると、すんなりと応接室へと案内される。


応接室では数人の兵士を連れた大臣が、ニコニコとした顔で待っていた。

「ではこちらが、ダース殿よりお預かりしていた今大会の優勝賞金でございます」

枚数を確認した後、それを青年へと渡す。

「ダース殿、そしてシェイド殿。闘技大会ではお疲れ様でした。おかげで今大会は国としても収入を多く得る事が出来ました。ありがとうございます」

大臣が2人に一礼をして感謝を述べる。


少女は差し出された賞金を半分だけを用意していた袋に詰めると、それを男性へと渡す。

「…えっと、これはなんだ?」

男性は意味が分からないと、2人に顔を向ける。

「手持ちの全財産をスった馬鹿がいるそうなんでな。帰りの路銀にでもしろ」

青年が少しだけ嫌味を含んで言った。

「ちょっとシェイドさん!。いくら本当の事だって、言い方がアレですの!」

(…無自覚にグサグサ刺してくる、この少女も大概じゃないか?)

男性は苦笑いをしながら、そんな二人を見ている。


「ダースさんが賭けたお金は、既に分配されているので返すことは出来ませんの。そのかわり、この賞金の半分はお返ししますの。アドルさん達もと言ってましたの」

(…完全にとどめを刺しに来ているだろう、これ)

少女の言葉に、男性は小さくため息を漏らした。


「しかし、一回渡すと言ったものを、そうですかと受け取るのは…なぁ」

色々プライド的な話なのか、受け取りに男性はあまり乗り気ではない様に見える。

「では、これを依頼料という事でどうですの?」

少女の提案を、「依頼料?」と大臣も男性が疑問を浮かべる。


「えっと、やっぱり有名な冒険者が参加すると、盛り上がると思いますの。もし今後も参加してもらえるなら、今度の闘技大会もきっと盛り上がると思いますの」

少女がなんとか受け取ってもらう様説得する。

「なるほど、今後参加する出演料といったところか…」

男性はある程度は納得してる様子に見える。


「では受け取る代わりに、こちらからも1つ頼みがあるんだが、いいか?」

男性は青年、次に大臣にと顔を向ける。

「もし次もオレが優勝したなら、また戦ってもらえないか?」

「!?。それは、闘技大会の後に、また追加で試合を組むという事ですか?」

大臣が今回で味を占めたのか、乗り気で話を広げてくる。

「オレとしては、戦ってもらえるなら何でもいい。どうだろうか?」


男性が青年に尋ねてる姿を見ながら、少女が不思議そうな顔をする。

「賞金も出ないのに、そんなに戦いたいものなんですの?」


(…そっか。神官の嬢ちゃんには分らんか。ま、仕方ないよな)

男性は確かに、この戦いへの好奇心だけは、戦う本人以外には分からないだろうなと納得をした。


「強さに憧れるのは冒険者としては避けれないな、特に命の奪い合いでない闘技大会は実に楽しいものだ」

なるほどと頷きながら、少女はクルリと青年の方を向く。

「それでは、優勝者だけでなく、希望する方全員と戦うというのはどうですの?」

「…バカか。そんな事やれるか」

さすがに青年も少女の提案をバッサリ叩き切る。

むぅと頬を膨らませ少女が無言で抗議をするが、気に留める様子は青年になかった。


「では、ではせめて準決勝まで残った4人だけ。それも希望者だけという条件ではいかがでしょうか?」

ここで大臣が、なんとか成立させ様と案を入れてくる。

「もし受けてもらえるならば、もちろんシェイド殿には別に、国よりお礼をしたいと思いますが、これでいかがでしょうか?」

大臣と少女、それと男性が青年の返事を、興味深そうに待つ。



どこか諦めた様に、青年は大きく息を吐いた。

「…希望者最大4人、それだけでいいんだな?」

青年は仕方がないと言いながら、渋々了解をした。

少女達の顔がパアっと明るくなり、大臣はありがとうございますと言っている。

「それと、あの商人がまた賭けをやるなら噛ませろと言っていた。出来たらそれも考えてやってくれ」

大臣は思わぬ話に、それはもちろんと即答で返す。


話はまとまったなと、男性は半分になった袋の賞金を受け取ると、2人に深々と頭を下げる。

「本当に感謝する。実は帰るために何回かクエストしなきゃらんなと、本気で思ってたよ」


世界に名を馳せる龍討伐《ドラゴンスレイヤー》は、豪快にガッハッハと笑っていた。

 
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