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その2

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「下位でも討伐系のクエストなら、獲得ポイントは結構ありますよ?。例えば…」

お姉さんはクエストの書類を何枚か見繕って机に並べる。

だが、肝心の神官の少女の表情はなぜか厳しいままだった。


「出来れば討伐クエストは避けたいんですの。他に何かありませんの?」

少女なりに何か思うことがあるのだろう。

目の前に並べられたクエストの書類を見比べながらうんうん唸っている。


「あっ、例えばもう少し上の採集クエストなんかどうですの?。それならポイント多く貰えるのではありませんの?」

名案を思い付いたという満面の笑顔で言われると本当に辛いですが、でも受付として告げなきゃいけないのです。

「冒険者が無理しないよう、自分のランク以上のクエストは受けられないって話だろう?。少し前にランク2の採集クエストもやったし、受けれるのは受けてるぞ?」

(…ナイスお兄さん!。少女を悲しませるような、つらい宣告をしないですみました!)

「では、採集じゃなくてもいいので、受けれるような他のクエストとかってありませんの?」

少女は並べてある書類を見渡すがそんなものはなかった。

そもそもクエスト受注を管理してるは私なので、それは間違いないのです。



「す、すみませんっ!。クエスト依頼ってまだ大丈夫ですか!?」

突然入口の扉が勢いよく開き、男性の大きな声がした。

見てみると商人風の恰好をした30代くらいの男性がいて、かなり急いできたのか、軽く息を荒げている。


「はい、まだ大丈夫ですけど…あと半刻ほどで受付は締めますので、クエスト貼り出しは明日からになりますが大丈夫でしょうか?」

少女達に「ごめんね」と声をかけカウンターに戻ると、やってきたお客様の相手をすることにする。

「明日からですか…緊急ってことで今すぐ何とかなりませんか!?」

また無茶を…と思っても顔に出さないのは、流石プロの受付ですよね、私…と自画自賛。


「何か事情がありそうですね、とりあえずお話を伺いましょう。そちらの席にどうぞ」

とりあえず受付横の椅子を指さし座ってもらうことにする。

すいませんと席に着き少し落ち着いたらしい男性は、状況を話し出した。



「私、実は行商人をやっておりまして。明日からサンド=リヨン王国へ出発する予定だったのです。」

サンド=リヨンといえば、馬車で数日ほどかかる同盟三国の1つですね。

騎士文化を重視しており、三国で唯一騎馬団を保有している国だとか。


「それなりの距離ですからね、いつも護衛は懇意にしてあるパーティーにお願いしていたのですが、そのパーティーが飛竜討伐クエストを失敗したとかで、命からがら戻ってきたらしくですね」

差し出したコップの水を少し飲んで落ち着けると、更に話を続ける。

「幸い命に別状はないという事なのですが、さすがに護衛は無理という事で断りの話が入ってきたのがさっきでして、急いで代わりの護衛をしていただけるパーティーをお願いしたいのです」

あぁ、そういえばさっき、ランク4のパーティーのクエスト失敗の書類を処理しました…きっとあの人たちの事ですね。


「とりあえず、時間は短いですが出来る限りの対応はさせていただきます。ところで、クエスト依頼に際してなにか条件はございますか?」

愚痴を聞いてても仕方ないので、ここは敢えて事務的に話を進める。

目の前の男性もそうだったと姿勢を正し、こちらの問いに答えた。


「依頼内容はここからサンド=リヨンまでの荷馬車と私達商人の護衛。サンド=リヨンまでなので片道3日ってとこですかね」

ふんふん、たしかにそれくらいですね─────という事は報酬の相場は…と。

「あと、依頼する冒険者の条件はありますか?。職業やランク、人数等他なにかあれば伺いますが?」

目の前の男性は軽く頭をひねると、仕方なくというのがありありと分かる顔で答える。

「人数・職業は私達を守ってもらえさえすれば問いません。ランクは…出来れば元々のパーティーと同じ4と言いたいところですが、緊急なので不問という事で。明日の朝…最悪昼までにここを出発出来たらそれでいいです」



視界の端で神官の少女がこちらを見た気がした。

待ってる間にこちらの話を聞いていたらしい…個人情報とかあるので、本当はダメなんですからね?。


そんなことを考えてたら、向こうから少女が歩いてきた。

そして商人の男性横に立つと、右手の平を自分の胸に当て声をかけてくる。

「何やらお困りの様子ですね?。わたくしたちでも何かお力になれませんの?」



(…なんか心のどこかがざわざわします)

私の嫌な予感って無駄に的中率がいいんですよね。

 
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