上 下
21 / 97
第四章 佐久間仁と禁煙の甘い夏

第二話 イライラする仁さん

しおりを挟む
 口調は強いくせに目を潤ませ、薄く開いた仁の唇に、要はようやく唇を重ねることが出来た。唾液で湿っている口内に舌を侵入させれば、やはり煙草の味が少しだけ残っていた。残りを全て絡めとるように歯茎や歯をなぞるように舌をせわしなく動かす。

「激しい……んっ、はぁ、はぁ、息できない」
「これがお望みなのでは?」
「……っ……まだ全然なんだけど」
「嘘つかないでくださいよ……仁さんのここ、すごいですよ。それとも、もっとして欲しいって事ですか?」

わざとらしく年下ぶり、年上の彼を煽る。膨らんだ下半身に人差し指を当て、形を確かめるように滑らせる。身震いし始めた仁に満足そうな笑みを浮かべ、キスを再び落とす。

「かな……め……しつこい」
「いいだろ」

キッと要を睨む。いつもよりも弱弱しいが、まだ余裕があることは伺える。

「言い直して」
「はいはい、仰せのままに……いいでしょ、仁さん」

それに満足して気を緩ませたところで、一気にベルトを外し、下着ごとズボンを剥ぎ取る。

「ちょっ! あっ……んっ」

膨張したそれが、勢いをつけて外へ出てくる。それを手で包み込み、上に一度大きく扱きあげればそこから全身を快楽が貫く。

「んんっ……はっ……」

唇を噛み締めて我慢する仁。指を離せば名残惜しそうな顔で、その様子を見つめている。
そして、その顔のまま強請るように見上げてくる。

(やべっ)

今すぐにでも抱きたい衝動を抑えてソファーに座らせ、そしてまだ欲を出しきれていないそれに顔を近づける。
ここまで近くで見るのは初めてだった。欲のバロメーターは主の反抗心とは反対に赤く腫れている。
どんな味がして、どんな舌触りで、仁がどんな反応を見せるのか? 好奇心を高鳴らせ要はチロリと湿った舌を出す。

「まって……そこ綺麗じゃないから……」
「へえ……気遣ってくれてるんですか?」
「ち、ちが……」
「気持ちよくなりたいんでしょ? だったら……」

大きく口を開けると、上から生唾を飲む音がする。しかし、仁の期待に反して、先端だけを咥える意地悪をする。悔しそうな顔を背けた仁が可愛くて、ゆっくりと奥に飲み込む。ジュルッと音をたてて一度吸い上げ、湿った先端を舌先で優しく押す。

「んっ、あっ」

先走りと声が溢れ、要も興奮してくる。

「んっ……んふっ」

目を瞑り、仁の声を頼りに気持ちの良い所を探していく。

裏筋を舐め上げる。

「はっ、あぁん」

先端を咥え、喉の奥まで飲みこむ。

「んんんんッ」
「けほっ」

これは要がつらい。涙目になり、その滴を仁が掬ってくれる。

「優しいですね」
「別に」

やはり仁は仁だ。要は再び湧いた悪戯心を舌先に集め、性器の先端をグリグリと刺激する。

「ぁぁあん! ……あっ、それ、だ、だめぇッ!」

どうやら一番気持ちいいらしい。ご丁寧に穴までひくつきだしている。

「ふっ……ああっ……」

唾液でぬらした指をまだ硬い秘部に押し当てる。

「欲しいですか?」

と、聞けば

「したいようにすればいいじゃん」

と偉そうな返事が返ってくる。

「了解です」

要は隣に座り、ニコリと笑顔を向けた。状況が掴めない仁は火照ったままの顔を要に向けるしか出来ない。

「……」

何も言わない、指も入れない要。
勃起した性器も冷え始め、キスすらしない、見つめられるだけの状況に仁の溢れかけた欲が震える。

「要……」

その声にな余裕が無い。

「何ですか?」

笑顔を崩さない要にプライドと羞恥心と欲が葛藤する。

「……して」
「……」
「して!」
「したいようにしていいって言ったの仁さんじゃないですか。今は仁さんの顔を見つめる時間なんです」
「そんなの……いらない、から……」
「から?」
「早く、続きして!」
「……」

強気の仁に、根気で対応する要。
段々顔を赤くして、腰をうねらせる仁に「欲しいですか?」と追い打ちをかける。

「……うん」
「どうしようかな」

仁を膝の上に乗せ綺麗な白い臀部を撫でる。背中に走った快楽にビクンと背筋を伸ばした仁。空いた隙間から指を秘部に忍ばせるが触れはしない。
の耳元で 

「もう一回お願いしてください」

と最後の追い打ち。
仁の理性が限界を超える。

「要、お願い! 挿れ……あああっ!」

ソファーに押し倒し、勢いよく足を開脚させ、その間に潜り込む。秘部に舌を這わせながら、唾液で湿らせ、人差し指を押し込む。

「ひうっ、あっ!」

迷うことなく、気持ちのいい場所まで肉壁を押し開きながら進み、快楽に堕とす。
待ち望んだ刺激を与えられた仁は、開脚した足から力が抜け、要に支えてもらいながら、ひたすら喘ぐことしかできない。

「あぁ……ああッ……奥、奥まできてぇ、そこ……いいッ!」
「年上なのにこんなに喘いでいやらしいな。まだ指一本ですよ?」
「うるさい! あっ! やっ!」

口答えをする仁に快楽でお仕置きをすれば、身体を反り返らせる。

「仁さんの声の方が大きいよ」
「要、もっと! んっ、ああっ!」

溺れる声に部屋も、要の脳内も全てが埋め尽くされる。
要の理性も切れ、仁の喘ぎ声だけを聞くために指を蜜壷の中で激しく踊らせた。

「いいぞ。ほら! 仁!」
「んやっ、ああん……あっ、あんっ!!」
「気持ちいいか?」
「気持ちいい、要の……指、も、もっと……はっ、あんっ……コリコリしてぇ……ああっ!」

仁が急にガクンとなり、秘部のほうに生暖かい何かが伝って垂れてくる。見なくても分かる、きっと白くいやらしく光るそれ。

「たっぷり出ちまったな」
「はぁ……はぁ……」

やはり白濁色の液体が、性器を伝い、その下で穴をかき回した要の指の腹にねっとり絡み付いていた。それを吐き出した人物も、胸倉の服を握り締め荒い呼吸をしている。

「どう? イライラ忘れてた?」

と、引き抜きた指から引くいやらしい糸を見せつける。

「別に!」
「途中で仁って呼んでも何も言わなかったじゃん」
「気がついてたし!」
「はいはい」

年上とは思えない子どもの様な発言に可愛いと思ってしまう。だからこそ、仁さんなんて呼べないのだ。

「で、どうだった?」
「……」

何も言わない仁にどうしたものかと頭を掻こうとしたが、指には精液が着いたままだった。乾きだした指の精液を処理しようと立ち上がる。しかし、仁が立ち上がる要の腕を掴んだ。そして不満そうな顔を向ける。

「あんなに喘いでたのに気持ちよくなかったのか?」
「気持ちよくなかった」
「嘘つけ」
「それに……抜いただけじゃん」
「?」
「忘れるくらいって言ったのに」

目を丸くしてしまう要。しかし、そんな要などお構いなしに要の膨らんだ下半身を足先でつんつんしながら

「ちゃんと抱いて」

と可愛げないおねだりをする可愛い恋人に

「了解」

と、キスをして再び覆い被さる。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。 主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。

三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。 それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。 頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。 短編恋愛になってます。

死にかけ令嬢は二度と戻らない

水空 葵
恋愛
使用人未満の扱いに、日々の暴力。 食事すら満足に口に出来ない毎日を送っていた伯爵令嬢のエリシアは、ついに腕も動かせないほどに衰弱していた。 味方になっていた侍女は全員クビになり、すぐに助けてくれる人はいない状況。 それでもエリシアは諦めなくて、ついに助けを知らせる声が響いた。 けれど、虐めの発覚を恐れた義母によって川に捨てられ、意識を失ってしまうエリシア。 次に目を覚ました時、そこはふかふかのベッドの上で……。 一度は死にかけた令嬢が、家族との縁を切って幸せになるお話。 ※他サイト様でも連載しています

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く、が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

35歳からの楽しいホストクラブ

綺沙きさき(きさきさき)
BL
『35歳、職業ホスト。指名はまだ、ありません――』 35歳で会社を辞めさせられた青葉幸助は、学生時代の後輩の紹介でホストクラブで働くことになったが……――。 慣れないホスト業界や若者たちに戸惑いつつも、35歳のおじさんが新米ホストとして奮闘する物語。 ・売れっ子ホスト(22)×リストラされた元リーマン(35) ・のんびり平凡総受け ・攻めは俺様ホストやエリート親友、変人コック、オタク王子、溺愛兄など ※本編では性描写はありません。 (総受けのため、番外編のパラレル設定で性描写ありの小話をのせる予定です)

婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました

山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。  でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。  そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。  長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。 脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、 「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」 「なりすましヒロインの娘」 と同じ世界です。 このお話は小説家になろうにも投稿しています

不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに【魔法学園編 突入☆】

はぴねこ
BL
魔法学園編突入! 学園モノは読みたいけど、そこに辿り着くまでの長い話を読むのは大変という方は、魔法学園編の000話をお読みください。これまでのあらすじをまとめてあります。 美幼児&美幼児(ブロマンス期)からの美青年×美青年(BL期)への成長を辿る長編BLです。 金髪碧眼美幼児のリヒトの前世は、隠れゲイでBL好きのおじさんだった。 享年52歳までプレイしていた乙女ゲーム『星鏡のレイラ』の攻略対象であるリヒトに転生したため、彼は推しだった不憫な攻略対象:カルロを不運な運命から救い、幸せにすることに全振りする。 見た目は美しい王子のリヒトだが、中身は52歳で、両親も乳母も護衛騎士もみんな年下。 気軽に話せるのは年上の帝国の皇帝や魔塔主だけ。 幼い推しへの高まる父性でカルロを溺愛しつつ、頑張る若者たち(両親etc)を温かく見守りながら、リヒトはヒロインとカルロが結ばれるように奮闘する! リヒト… エトワール王国の第一王子。カルロへの父性が暴走気味。 カルロ… リヒトの従者。リヒトは神様で唯一の居場所。リヒトへの想いが暴走気味。 魔塔主… 一人で国を滅ぼせるほどの魔法が使える自由人。ある意味厄災。リヒトを研究対象としている。 オーロ皇帝… 大帝国の皇帝。エトワールの悍ましい慣習を嫌っていたが、リヒトの利発さに興味を持つ。 ナタリア… 乙女ゲーム『星鏡のレイラ』のヒロイン。オーロ皇帝の孫娘。カルロとは恋のライバル。

処理中です...