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第一章 ギルベルト・ライズナー
第四話 チーム
しおりを挟む二人は一度、職場へ戻った。夏川と若狭はギルベルトからエンジニアとしてやるべきことの指導を受けていた。ミーティング室から出てきた二人は使命感に溢れており、ギルベルトのカリスマ性にあてられたのだと航は思った。夏川にミーティング内容を聞くと、航には理解不能な言葉が並んでいたが、夏川が噛み砕いてくれる。
「サイトの見やすさはもちろんだけど、有料だからこそ機能を充実させるんだ。画像へのリアクション機能や、有料のメール機能・通話機能の充実。もちろん犯罪めいたものは通報可能。今までは本気でパートナーを探す人とただの猥褻目的の人が入り混じってたから。一つのサイト内でそれをどうにか二分化させることを目標にするみたい。なるべく健全なパートナー探しを重点においてね」
つまり男女のお見合いサイトのようなものを目指すそうだ。
「でも、そうなると、成人カテゴリーがだいぶ不人気になりそうだよね」
夏川の疑問の解決は航が握っている。ギルベルトは抜かりない。エンジニアたちには健全なサイト運営を徹底させ、航を欲まみれの男たちを誘い込むカモにしているのだ。
現に――
――ブブブ
航のリュックの中でタブレットが震える。ネットにきちんとつながっているため、いつでもサイトからのメッセージを受信していた。あの画像を投稿してすぐ、有料のメール機能を使って、複数の男性からメールを通知で受け取っていた。
確認しようとタブレットに触れる。だが、ミーティング室から出てきたギルベルトにその手を取られた。そして空になったミーティング室に連れ込まれる。
「今は、ログインをしないように」
「どうしてですか?」
「本当に「海」という男がいると思わせるためにも、生活リズムを徹底してくれ。平日昼は仕事でいない。夜になると現れる見られたい欲求不満な男を演じるのだ」
「しかし、さっき写真を投稿していますよ」
「欲求不満の限界で、我慢できずに会社でサイトに登録した、ということで話を合わせておいてくれ。確か日記の機能があっただろ?」
ギルベルトは、「海」をとことん欲求不満にするための土台を完璧に考えていた。
「分かりました」
「ちなみにどれくらい通知が来ている?」
「10通ほど」
「……まあ、まだそんなものか」
ギルベルトの視線は先を見ている。だが、ゴールにつながる道が航には全く見えない。
しかし、退社前に行われた本日二度目のミーティングでギルベルトの細かい構想が共有された。
「僕らはチームだ。エンジニアを入れ替える気も毛頭ない。このメンバーでやっていく」
つい最近、フリーランスのエンジニアにしていく方針がとられようとしたことを皆知っている。
「そんな非効率的なことはしない。ここできちんと共有し、分からないことは聞きあう。チームワークを大切にしてほしい。あと、残業は禁止」
他部署がうらやむホワイト上司。有能と言われるが故、どんな無理難題を押し付けられるかと思えば、整った体制に若狭と夏川は早々に退勤した。
だが、陰で無理難題を押し付けられた航は、とんぼりとんぼり帰路に就いた。会社前のロビーで「君の家がどこか分かっているね?」と念を押されたあとに。
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