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第二章 マーベリックの女
第六話 重なる香り
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オリバーは「洗濯するから出すものを出せ」と吐き捨てた。
ジョシュアはスーツのジャケットをソファーに投げたあと、セーターとシャツを一気に脱ぐ。
「ほらよ」
宙を舞う衣類はオリバーに触れるとバチッと音を鳴らした。
静電気に顔を顰めるが、オリバーは口を固く閉じた。
開けばこの香りを問い詰めてしまうからだ。同居しているといえども相手は成人男性だ。縛る方がおかしい。この苛立ちは自身の想いからなるのもで理にかなっていない。
手洗いがいいだろうかとタグを確認していると、後ろから手が伸びてきた。
「クリーニングに出してくる」
ジョシュアがセーターをひったくった。
今日は土曜日。しかしまだ開店の時間には早すぎる。
「私が出しておく」
「俺が出すからオリバーは寝てろ」
「いや、私が……ッ」
ジョシュアの優しさが痛い。
再び走った静電気にオリバーは顔を顰め、その隙にジョシュアはリビングへ行ってしまう。
(要といたのは事実……その場に女もいただけか? しかし……)
リビングへ向かうジョシュアの背中にはしっかり赤い印がついていた。服を脱がねば到底つかぬ背骨の真ん中。
(見るんじゃなかった……)
オリバーは柔軟剤を適量以上注ぎ、セーター以外の衣類を回す。ボタンを押す指に鈍痛が走った。
リビングへ戻ると、ジョシュアはセーターを意味もなく撫でていた。
「寝ないのか?」
尚も催促してくる。
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃないだろ。俺も一緒に寝てやるから」
女のあとをつけるジョシュアを抱きしめるなど、胸が引き裂かれる。しかし、ジョシュアは「寝ないか?」と振り向きながらもう一度聞く。まだ淫らな夜が続いているのか、その瞳は濡れていた。
「結構だ。セーターも返せ」
冷たく言い放つ。
「俺が出す。オリバーに貰った大切なものだから。それとも寝たあとに一緒に行くか?」
最後の言葉はどう考えても卑怯だった。寝られる上に一緒に出かけることも出来る。オリバーの心は意図も簡単に揺らいでしまう。
(これが何十年も我慢し続けた心の代償なのかもしれない)
「先にシャワーを浴びろ」
言葉の裏の本心も知らず、快諾されたと心を弾ませたジョシュアは浮き足立ってシャワールームへと向かった。
(可愛い……本当に困ったやつだ)
一緒に寝られる安心感だけを求められていると分かっていても嬉しくて仕方がなかった。
そしてシャワーで全ての匂いを落としたジョシュアと日が昇り始めたのにベッドへ潜り込む。
同じソープの香りで、昨夜に関する妄想を必死にオリバーは消した。
ようやくまた一緒のベッドで眠りにつく二人。喧嘩でこうなれば、ちょっとしたことでまた元に戻る。その裏の葛藤や淡い気持ちなどお互い分からず、同じ香りを重ねて夢の世界へと落ちていった。
ジョシュアはスーツのジャケットをソファーに投げたあと、セーターとシャツを一気に脱ぐ。
「ほらよ」
宙を舞う衣類はオリバーに触れるとバチッと音を鳴らした。
静電気に顔を顰めるが、オリバーは口を固く閉じた。
開けばこの香りを問い詰めてしまうからだ。同居しているといえども相手は成人男性だ。縛る方がおかしい。この苛立ちは自身の想いからなるのもで理にかなっていない。
手洗いがいいだろうかとタグを確認していると、後ろから手が伸びてきた。
「クリーニングに出してくる」
ジョシュアがセーターをひったくった。
今日は土曜日。しかしまだ開店の時間には早すぎる。
「私が出しておく」
「俺が出すからオリバーは寝てろ」
「いや、私が……ッ」
ジョシュアの優しさが痛い。
再び走った静電気にオリバーは顔を顰め、その隙にジョシュアはリビングへ行ってしまう。
(要といたのは事実……その場に女もいただけか? しかし……)
リビングへ向かうジョシュアの背中にはしっかり赤い印がついていた。服を脱がねば到底つかぬ背骨の真ん中。
(見るんじゃなかった……)
オリバーは柔軟剤を適量以上注ぎ、セーター以外の衣類を回す。ボタンを押す指に鈍痛が走った。
リビングへ戻ると、ジョシュアはセーターを意味もなく撫でていた。
「寝ないのか?」
尚も催促してくる。
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃないだろ。俺も一緒に寝てやるから」
女のあとをつけるジョシュアを抱きしめるなど、胸が引き裂かれる。しかし、ジョシュアは「寝ないか?」と振り向きながらもう一度聞く。まだ淫らな夜が続いているのか、その瞳は濡れていた。
「結構だ。セーターも返せ」
冷たく言い放つ。
「俺が出す。オリバーに貰った大切なものだから。それとも寝たあとに一緒に行くか?」
最後の言葉はどう考えても卑怯だった。寝られる上に一緒に出かけることも出来る。オリバーの心は意図も簡単に揺らいでしまう。
(これが何十年も我慢し続けた心の代償なのかもしれない)
「先にシャワーを浴びろ」
言葉の裏の本心も知らず、快諾されたと心を弾ませたジョシュアは浮き足立ってシャワールームへと向かった。
(可愛い……本当に困ったやつだ)
一緒に寝られる安心感だけを求められていると分かっていても嬉しくて仕方がなかった。
そしてシャワーで全ての匂いを落としたジョシュアと日が昇り始めたのにベッドへ潜り込む。
同じソープの香りで、昨夜に関する妄想を必死にオリバーは消した。
ようやくまた一緒のベッドで眠りにつく二人。喧嘩でこうなれば、ちょっとしたことでまた元に戻る。その裏の葛藤や淡い気持ちなどお互い分からず、同じ香りを重ねて夢の世界へと落ちていった。
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