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第3章 二日目、そして事件が起こる
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二人して白い襟付きシャツに長いズボンという最大限フォーマルな姿に着替え、約束の時間に階下のロビーへ降りたところで、僕たちの想定は大きく間違っていたことに気づく。
「三輪さんたちも来たな。では行こうか」
「遅くなってすみません。っていうか、皆さんすごい格好ですね」
海洋大のメンバーは全員、なんという名前なのだろうか、テレビで見たことのある船員さんや海軍の軍人さんが着るような、白い上下の制服を着用し制帽をかぶり、よく磨かれた黒靴を履いてロビーに整列していた。
「これはね、うちの大学の夏用の制服だよ」
水戸さんが、キリッとこちらを向き直り説明してくれる。ポニーテールだった黒髪も、今日はお団子に束ねられていて、昨夜とは違って非常に上品な印象だ。
「はあ、カッコ良いですね」
などと間抜けな感想しか出てこない自分が嫌になる。
「いちおう僕たちは海洋大学生だからね。海洋学部以外の学生も、短期間だけれど航海実習があるし、他にもいろいろと式典などがある。その時はこれを着るんだ」
藤田さんの解説になるほどと頷く。高遠さんの大きなカートの理由が、さらに理解できた。花輪の他に、制服一式と黒靴を入れていたのだろう。その彼女も皆と同じように白い制服に身を包み、パリッとした立ち姿は白鷺のようでとてもキレイだ。僕の視線を感じたのだろう、少し照れ臭そうに笑ってくれた。
しかしこの人たちと並ぶと、我々の最大限フォーマルな格好も、街の普段着と変わらない。まあそれも仕方がないことか。
「三輪さん、藤田くん、車が来ました」
飯畑さんが玄関のドアを開けながら、こちらに合図を寄越してくれた。少数勢力である我々のリーダー三輪さんへ、まず声をかけてくれるところに、彼女の細やかな気遣いが感じられる。どうやら彼女が、この水生研シュノーケル班のサブリーダーのようだが、キビキビした動きと、タイトに着こなした制服姿は、少し冷ややかにさえ見える彼女の美しさによく似合っていた。
「三輪さんたちも来たな。では行こうか」
「遅くなってすみません。っていうか、皆さんすごい格好ですね」
海洋大のメンバーは全員、なんという名前なのだろうか、テレビで見たことのある船員さんや海軍の軍人さんが着るような、白い上下の制服を着用し制帽をかぶり、よく磨かれた黒靴を履いてロビーに整列していた。
「これはね、うちの大学の夏用の制服だよ」
水戸さんが、キリッとこちらを向き直り説明してくれる。ポニーテールだった黒髪も、今日はお団子に束ねられていて、昨夜とは違って非常に上品な印象だ。
「はあ、カッコ良いですね」
などと間抜けな感想しか出てこない自分が嫌になる。
「いちおう僕たちは海洋大学生だからね。海洋学部以外の学生も、短期間だけれど航海実習があるし、他にもいろいろと式典などがある。その時はこれを着るんだ」
藤田さんの解説になるほどと頷く。高遠さんの大きなカートの理由が、さらに理解できた。花輪の他に、制服一式と黒靴を入れていたのだろう。その彼女も皆と同じように白い制服に身を包み、パリッとした立ち姿は白鷺のようでとてもキレイだ。僕の視線を感じたのだろう、少し照れ臭そうに笑ってくれた。
しかしこの人たちと並ぶと、我々の最大限フォーマルな格好も、街の普段着と変わらない。まあそれも仕方がないことか。
「三輪さん、藤田くん、車が来ました」
飯畑さんが玄関のドアを開けながら、こちらに合図を寄越してくれた。少数勢力である我々のリーダー三輪さんへ、まず声をかけてくれるところに、彼女の細やかな気遣いが感じられる。どうやら彼女が、この水生研シュノーケル班のサブリーダーのようだが、キビキビした動きと、タイトに着こなした制服姿は、少し冷ややかにさえ見える彼女の美しさによく似合っていた。
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