NATE

九時木

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36. ザイオン

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 ザイオン。NATESのウェブサイトに載っていた、講演者の一人。
 私はその人をじっと見ながら、黙々とタイピングしている様子を観察する。

 日曜日のカフェにふと現れた、謎の人物。
 彼は何者なのだろうか?私はダンに視線を移し、彼にこう尋ねた。


 「以前、あなたとザイオンさんは、バーでゴスとレオに出会ったと聞きましたが……お二人は友人なのですか?」

 「古くからのな」ダンが私の言葉に付け足す。

 「ザイオンは、コミカレ以来のダチだ」

 「コミュニティ・カレッジですか」

 「そう。俺たちは食堂で初めて会った。
 俺がウェブサイトを作っている時に、こいつはパソコンを改造していたんだ」

 「公然とドライバーでパーツを分解してな」ダンがマグカップを軽く揺らし、コーヒーを混ぜる。

 「ちなみに、俺はコンピュータサイエンス、ザイオンはコンピュータエンジニアリングを専攻していた。
 簡単に言えば、俺はソフト、こいつはハードが専門だ」

 ダンの興味深い説明に、私は少し前のめりになって話を聞く。
 ダンはパソコン画面を眺めながら、話を続けた。
 
 「俺はその時ソフトウェアの開発をしていたんだが、ノートパソコンがあまりにも古くてさ。
 容量が足りなくなっちまって、ラグりまくりで、まるで使い物にならなかったんだ。

 そんな時に、ザイオンが俺のパソコンを改造してくれたんだ。
 こいつは俺のパソコンをバラして、メモリを交換した。そしたら、一気にスペックが上がっちまった」

 「ザイオンの技術には目を見張るものがあるぜ」ダンはザイオンに目配せし、にやりと笑う。

 ザイオンは相変わらず口を閉ざしたまま、機械的にタイピングを続けている。

 「気にしなくていい。静かなたちなんだ」

 ダンはそう言うと、コーヒーを一気に飲み干し、目をパッチリと開けた。


 「ところで、エマはNATESのメンバー数を知っているか?」

 一呼吸置いた後、ダンが画面を操作しながら私に尋ねる。
 私が首を横に振ると、彼はNATESのホームページ上位を見せてくれた。

 「450人。結構な数ですね」

 私はサイトに表示されたカウントに目を見開く。
 ダンが足を組みながら、画面をスクロールする。

 「メンバーは、俺やゴスが直々に選んでいるんだが、なんせウェブサイトからも登録ができるもんだからな。

 SNSなんかで、噂で勝手に広まっちまっているんだろう。おかげで、ここ最近メンバーが急増しているんだ」

 「レオは、『拠点を増やさなければならない』と言っていましたよ」私は思い出した言葉をダンに伝える。

 「拠点はもう決まっているさ。TビルとZビルが契約済だ」

 「行動が早いですね」私は驚きをあらわにする。
 ダンは画面のカウント数がまた一つ増えるのを眺めながら、いたずらっぽく笑った。

 「こういうのは、数が増えれば増えるほど楽しくなるもんだからな」
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