30 / 63
30. レオ
しおりを挟む
10月10日、午後21時。私はウィルの家で仕事を済ませた後、いつものようにXビルの階段を上り、2階の会場に到着していた。
NATESは相変わらず超満員で、部屋は祭りのように賑わっていた。
「やあ、エマ」レオが顔を出し、席から挨拶する。
「一昨日ぶりですね」私はレオのもとへ歩み寄り、隣の席に座った。
「メンバーが増えたようですが」
「テーブルの数を増やしたんだ」レオが机に手を置きながら、私に言う。
「君の言う通り、最近はメンバーが急増していてね。部屋がずいぶん狭く感じられるよ」
レオは部屋をぐるりと見渡しながら、短く笑った。
「そろそろ拠点も増やした方がいいだろうな」
「拠点?」
「ああ。ここだけじゃあ、明らかにスペースが足りないだろう?だから、別のビルも借りる必要がある」
レオが机の上の書類をかき集め、一枚一枚に目を通しながら言った。
「まあ、ここが栄えるのは良いことなんだがな」
司会進行係の一人が、「時間です」と合図をする。
レオが椅子に座り直し、背筋をまっすぐに伸ばす。
「今日は議論係なんですか?」
「そうだな。俺のお気に入りのポジションだ」
レオは自信ありげに答える。
私は彼が机の上で手を組み、相手の話にじっと耳を澄ましている様子を眺めていた。
議論は着々と進んだ。
レオはいたって冷静に相手の意見を分析し、的確な反論を述べていた。
時間はあっという間に過ぎ去り、気がつけば23時を回っていた。
議論終了後、人々が帰る支度をしている中、レオが私に申し訳なさそうに話した。
「そういえば、JACKについて君に謝らなくちゃならないな。一昨日は、うちのゴスが強引なことをして悪かったよ」
「構いません」私はレオを見返しながら、答える。
「討論には様々な形があることを知れましたから」
「JACKは過激だっただろう」レオが苦笑する。
「俺は武力で訴えるのは苦手だね。問題解決をするなら、やっぱり話し合いが一番だ」
「話し合いが一番ですか」私は昨日のウィルの話を思い出しながら、その言葉を繰り返す。
「痛い目に遭うのは事実だからな」レオは物憂げな表情をし、その場で腕を組む。
「JACKは、ゴスとあなたの口論から着想を得たものだと聞きましたよ」
「ゴスから聞いたのかい」レオは表情を少し崩し、短く笑う。
「ゴスと俺は、なかなか噛み合わなくてね。
あいつは喧嘩っ早いんだが、俺はそうじゃなかったもんだから、ずいぶん揉めたよ」
「今でもそうさ」レオはいかにもその通りというように、深く頷いてみせた。
「だけど、あいつには感謝もしているんだ。俺を助けてくれたのはあいつだからな」
「ゴスがあなたを?」私は確かめるように、レオをじっと見つめる。
レオは長く息を吐いた後、ゆっくりと話を始めた。
「俺が路地裏で上司に一発食らっている時に、あいつが上司を止めてくれたんだ」
NATESは相変わらず超満員で、部屋は祭りのように賑わっていた。
「やあ、エマ」レオが顔を出し、席から挨拶する。
「一昨日ぶりですね」私はレオのもとへ歩み寄り、隣の席に座った。
「メンバーが増えたようですが」
「テーブルの数を増やしたんだ」レオが机に手を置きながら、私に言う。
「君の言う通り、最近はメンバーが急増していてね。部屋がずいぶん狭く感じられるよ」
レオは部屋をぐるりと見渡しながら、短く笑った。
「そろそろ拠点も増やした方がいいだろうな」
「拠点?」
「ああ。ここだけじゃあ、明らかにスペースが足りないだろう?だから、別のビルも借りる必要がある」
レオが机の上の書類をかき集め、一枚一枚に目を通しながら言った。
「まあ、ここが栄えるのは良いことなんだがな」
司会進行係の一人が、「時間です」と合図をする。
レオが椅子に座り直し、背筋をまっすぐに伸ばす。
「今日は議論係なんですか?」
「そうだな。俺のお気に入りのポジションだ」
レオは自信ありげに答える。
私は彼が机の上で手を組み、相手の話にじっと耳を澄ましている様子を眺めていた。
議論は着々と進んだ。
レオはいたって冷静に相手の意見を分析し、的確な反論を述べていた。
時間はあっという間に過ぎ去り、気がつけば23時を回っていた。
議論終了後、人々が帰る支度をしている中、レオが私に申し訳なさそうに話した。
「そういえば、JACKについて君に謝らなくちゃならないな。一昨日は、うちのゴスが強引なことをして悪かったよ」
「構いません」私はレオを見返しながら、答える。
「討論には様々な形があることを知れましたから」
「JACKは過激だっただろう」レオが苦笑する。
「俺は武力で訴えるのは苦手だね。問題解決をするなら、やっぱり話し合いが一番だ」
「話し合いが一番ですか」私は昨日のウィルの話を思い出しながら、その言葉を繰り返す。
「痛い目に遭うのは事実だからな」レオは物憂げな表情をし、その場で腕を組む。
「JACKは、ゴスとあなたの口論から着想を得たものだと聞きましたよ」
「ゴスから聞いたのかい」レオは表情を少し崩し、短く笑う。
「ゴスと俺は、なかなか噛み合わなくてね。
あいつは喧嘩っ早いんだが、俺はそうじゃなかったもんだから、ずいぶん揉めたよ」
「今でもそうさ」レオはいかにもその通りというように、深く頷いてみせた。
「だけど、あいつには感謝もしているんだ。俺を助けてくれたのはあいつだからな」
「ゴスがあなたを?」私は確かめるように、レオをじっと見つめる。
レオは長く息を吐いた後、ゆっくりと話を始めた。
「俺が路地裏で上司に一発食らっている時に、あいつが上司を止めてくれたんだ」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【新作】読切超短編集 1分で読める!!!
Grisly
現代文学
⭐︎登録お願いします。
1分で読める!読切超短編小説
新作短編小説は全てこちらに投稿。
⭐︎登録忘れずに!コメントお待ちしております。
季節の織り糸
春秋花壇
現代文学
季節の織り糸
季節の織り糸
さわさわ、風が草原を撫で
ぽつぽつ、雨が地を染める
ひらひら、木の葉が舞い落ちて
ざわざわ、森が秋を囁く
ぱちぱち、焚火が燃える音
とくとく、湯が温かさを誘う
さらさら、川が冬の息吹を運び
きらきら、星が夜空に瞬く
ふわふわ、春の息吹が包み込み
ぴちぴち、草の芽が顔を出す
ぽかぽか、陽が心を溶かし
ゆらゆら、花が夢を揺らす
はらはら、夏の夜の蝉の声
ちりちり、砂浜が光を浴び
さらさら、波が優しく寄せて
とんとん、足音が新たな一歩を刻む
季節の織り糸は、ささやかに、
そして確かに、わたしを包み込む
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる