上 下
45 / 45
第3章:狂った時間と狂わせる科学

45 洋館からの脱出②

しおりを挟む
 タツロウは液体の入った瓶とライターを持ち、骸骨顔を睨みつける。
 骸骨顔もまた、液体の入った瓶を両手に持ち、タツロウと同じ姿勢で立った。

「そこまで真似するか。上等だぜ!」

 タツロウは瓶の先端の布に火を点け、それを骸骨顔の前に投げつける。
 骸骨顔もタツロウが投げた場所に瓶を投げた。

「ん? なんだ?」

 火の点いた瓶は床に落ちて割れた。
 だが、骸骨顔が投げた瓶の液体のせいか、火がすぐに消火されてしまった。
 顔が見えないからわからないが、身体の動きが笑っている時の動きをしている。

「水か? できればこれは使いたくなかったがー」

 タツロウはカバンの中から、似たような液体の入った瓶を取り出した。
 そして、蓋を開けて布を差し込み、再び蓋を閉めた。

「おっと! そりゃ、待つわけないよ!」

 骸骨顔は大きな鎌を振り回しながらタツロウに迫る。
 タツロウは銃で応戦する。
 ロビー側の扉に近かった立ち位置が、どんどん後ろに下がって真ん中辺りを超えてしまった。

「おら! これでも喰らいやがれ!」

 布に火を点け、それを壁に投げつけた。
 投げた瓶が割れ、小さな爆発が起きて一気に燃えた。
 骸骨顔が瓶を投げ入れると、更に火の勢いが増した。
 骸骨顔は近づこうとするが、勢いよく燃えている炎に近づけないでいる。

「ははは! これはガソリンだぜ」

 タツロウは再び投げるために火を点けようとした。

「タツロウさん! 奥に道ができました!」
「でかした! ほれ、これもおまけだ」

 タツロウは火を点けた瓶を放り投げる。
 落ちた瓶は割れ、更に燃え盛る炎により骸骨顔の進行方向がさえぎられる。
 タツロウは骸骨顔に背を向け、扉の中へと入った。
 部屋の中は今まで行った3つの部屋と同じ家具配置で、唯一違うのが奥の隠し通路だけだ。

「出口かどうか知らんが、もう道はここしかないしな。行くか」
「……はい」

 サトウは不安そうな顔をしている。

「大丈夫だ。あいつは足止めをしたから追ってこないし、お前さんはちゃんと郵便局に帰してやる」
「はい……ありがとうございます」

 タツロウは、隠し通路に入る。
 その後ろからサトウがついてくる形になった。
 入ってすぐハシゴがあり、そこをゆっくりと下りる。

 ハシゴで地下に下りるとまた通路になっており、ジメジメした感じで湿気が多く、少し暗くてよく見えない。

「ひ!」
「壁はあまり触りたくないな。ヌルヌルしてやがるぜ」

 サトウは壁に触れるたびに小さな悲鳴をあげている。
 その通路を抜けると、広い洞窟に出た。

「はー、これはすげーな!」
「綺麗ですねー! あのキラキラしているのは何ですか?」

 サトウは壁や天井でキラキラと光る何かを指す。

「なんだろうな? 現世には無いタイプの鉱石かもしれんな」

 タツロウは、その鉱石をよく見るためにライターを点けようとする。
 しかし、風があるのかなかなか点かないので、手で囲う。
 ようやく点いた火を鉱石に近づけて、じっくりと見た。
 すると、

「あちあちあち! うわ、やべぇ! 火を近づけたらすぐ熱くなったわ」
「そんな石があるんですね! 持って帰りますか?」

 サトウは、まだ火を近づけていない鉱石を集めてきた。

「何かに使えるかもしれないし、取っておくか」

 タツロウはキラキラ石を、少しだけカバンの中に入れる。
 サトウも、取ってきた残り全てを自身のカバンの中に入れた。

「それにしても、どこまで続いているんだろうな。もしかしたら、お嬢のいる所まで繋がっていたりしてな」

 そう言い、タツロウは奥へと進む。

「お子さんがいるんですか?」
「ん? いや、この世界にはいないな。ちゃんとまだ生きている」
「そうだったんですね……私も同じです」

 サトウがそう言うと、シーンと静まり返った。

「この話題はおしまい! 湿っぽい話はなしだ!」

 タツロウは両手をブンブンと振る。

「そうですね! 未練を解消して、次の人生へ! ですね。というか、タツロウさんがこの話題を振ったんですよ?」

 サトウは両手を上げてバンザイのポーズをした後、ちょっと怒った表情でタツロウを見る。

「うん? 話題を振った? 俺は子どもの事は話してないぜ」
「でもさっき、『お嬢』って言ってましたよ?」
「ああ! お嬢はお嬢だ。俺の子じゃねぇ」

 タツロウがそう言うと、サトウは一瞬首を傾げたが、すぐに戻り首を横に振った。

「それ答えになっていません」
「ああ、すまん。お嬢は、俺が加入している組織の隊長だ」
「そうだったんですね! その隊長さんもこの星にいるんですか?」
「ああ、いるぜ。凄腕の救助隊員だ」

 タツロウは上に続いているハシゴを見つけたので、それを上っていく。
 そして、マンホールに当たったので、それを押して開いた。

「お? どうやら俺の予想は当たってたみたいだぜ」

 下にいるサトウに声をかける。

「ここ登ったらいいのですか?」
「ああ。ってやばい!」

 タツロウはそう言い、マンホールを外側に倒して開けっ放しにし、ハシゴを滑り下りた。
 そして銃を取り出し、サトウをかばいながら奥の方に発砲する。

 ゆっくりとタツロウ達の所に近づいてくる。
 黒装束の骸骨顔だ。

 顔や身体に銃弾を受けているはずだが、弾かれている感じがして全く通用していない。

「ちっ、やばいな。先に上がってくれ」
「わ、わかりました!」

 サトウはハシゴを登り始める。
 骸骨顔はサトウを見て何かを取り出そうとしている。

「てめぇの相手は俺だよ、骸骨顔!」

 タツロウは骸骨顔が取り出した物を撃ち落とす。
 骸骨顔は再びタツロウの方を向き、鎌を振り回し始めた。

「そうだ。その調子で登っていけ!」
「はい!」

 タツロウは、サトウに気が向かないように骸骨顔に威嚇射撃をする。

「登りました!」
「りょーかい!」

 開けっ放しのマンホールから顔を出すサトウ。
 タツロウは上を見ず合図した。

「タツロウさーん。これ使って!」

 次に風羽が開けっ放しのマンホールから顔を出し、棒のような物を落としてきた。

「あ! お嬢! 助かる!」

 タツロウは風羽から受け取る。

「なんだこれ?」
「折って!」

 そして、受け取ったプラスチックの棒を折った。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

処理中です...