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第3章:狂った時間と狂わせる科学

38 終わらない夏祭り②

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 上に放り投げた手榴弾は空中で爆発し、花火のように咲いて散った。

「来たぜ……人に紛れて隠れていた狂人がよ」

 夏祭り会場から、酔っ払いのような人達が数名、ふらふらと外に出てきた。

「片付けて、要救助者を探して、夢の主に会ってから帰るよ」

 拳銃から散弾銃に変わってもらい、ポンプアクションをして弾を装填した。

「上に投げるんだったら花火がいいよね! あたしはひたすらこれ作って打ち上げるわ」

 どういう仕組みかわからないが、夢羽はどんどん打ち上げ花火を作り出している。
 私は近づいてくる狂人を散弾銃で吹き飛ばす。

「よいペースだ。これなら、すぐに片付くな」
「待って、それ何か起こるフラグじゃ……うっ!」

 そう言った瞬間、強烈な車酔いのような感覚に陥り、地面に膝をついた。
 すると、

「……なんだ!? この気持ち悪いのは……ん? お嬢! 周りにいた狂人がいなくなってるぜ!」

 私は酔いが治まったので立ち上がり、周囲を確認した。

「え? ……また戻ってる?」
「そうみたいね……」

 私達はまた、平和に見える夏祭り会場の入り口に立っていた。

「おーい! タツロウさん! ちょっと作戦会議!」
「む? ……そうだな!」

 いつの間にか出店の方に行っていたタツロウが、焼き鳥の入った紙コップを2つ持ってこっちに来た。

「いいはずー! あたしの分は?」
「ほれ! 焼き鳥だがいいか?」
「ありがとー!」

 夢羽はタツロウから焼き鳥の入った紙コップを1つ受け取り、食べ始める。

「作戦会議!」
「すまんすまん、つい美味しくてな」
「ごめんごめん、あれ使ったらお腹が空くのよ……」

 あれが何なのか知らないが、話を進めよう……。

「えっと、ここは夏祭りです」
「おう、知ってるぞ」
「楽しんでいいと思います」
「おう……俺、怒られてる?」

 タツロウが一歩後退あとずさりする。

「いや怒ってないよ。ちょっと思ったんだけど、あの狂人って前にも見た事があるって言ったよね」
「言ってたっけ? ゲームの星だっけか?」
「そのゲームの星にいた狂人と似ていたんだよね」

 あのふらふら動くのと、すぐに襲ってこないで囲んで逃げ場を無くしてから一気に襲ってくるところとか。

「要するに、この終わらない夏祭りと狂人は別物ってことかしら?」

 夢羽は焼き鳥1本食べ終え、聞いてきた。

「そうそう、それ! 『終わらない』と『夏祭り』と『狂人』は別。3つの要因が混じり合って今回の事が起きている。前にタツロウさんが火炙りの刑にされた時、戻ったって言ってたよね?」
「そうだな。あれはすごく熱かったな……うん? なんで熱かったって感覚覚えているんだ?」

 タツロウは首を傾げる。

「それは実際に起きた事だけど、無かった事にされた。今回もそう。まあ仮説だけどね」
「は? 誰が? 何のために?」
「それを調べるのが、今回の私達の任務」
「それはひとまず置いといて。しょっちゅうループしても、朝になったら夢が終わるよな。待っててもいいんじゃないか?」

 タツロウは焼き鳥を1本、一気に口の中に入れる。

「いや、やめた方がいいよ。今、夢の星に行ってきたら結構な日数が経っていた、っていう報告が相次いでいるよね」
「ああ、そうだな。それがどうした?」
「仮説だけど、何かしらの要因がこの世界の時間を操っているかもしれない」
「じゃあなんだ。朝を待っても全然朝にならないって事か?」
「うん。んで、夢の外に出たら数日後の世界にされるという浦島太郎状態。仮説だけどね」

 近くの店員さんが飲み物を差し出してきたのでそれを頂き、一気に飲み干す。

「じゃあ、狂人はどうなの?」
「誰かがこの星に持ち込んだのかも。でもまだこれも、仮説の域を出ていない。だから、それもこれから調べる」

 今度は焼きそばを貰ったので、それを一口食べた。
 てか、この星の住民は親切な人ばっかだな。

「残ったのは『夏祭り』か……」
「それは普通に、夢の主の深層の夢だろうね」
「そうか……もしかして、夢の主って夏祭りをずっと楽しみたいって思ってないか?」
「そんな事はないと思う……。ずっとではなく、ただ楽しみたいのに、何かしらの要因で楽しめてないのかも」
「狂人に邪魔されたり、夏祭り会場の外で銃撃戦が始まったりってことか?」
「たぶんね。それで、時よ戻れって思ってるのかも」
「ぐあー! 狂人は静かに倒さないといけない。夢の主に夏祭りを楽しんでもらう……めんどくせえ!」

 タツロウは頭を掻きむしる。

「めんどくさいって言わない。とりあえず、夢の主の所に行くよ」
「りょーかい」

 作戦会議を終え、私達は何度目かの夏祭りの会場へと入って行った。
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